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目覚めの時

(マルカ…)


深く眠りにつきすぎたかな?

俺は目を覚まし、屋根のない部屋から夜空を見上げる。


「マルカ。起こしてくれて良かったんだぞ。せっかくの休日なのに寝て終わってしまったじゃないか。」


どこに行ったんだ?


俺は隣りで寝ていたマルカを探しに部屋をでだ。

足元に散らかるレンガや柱をよけながら、店の裏口をあける。


黒焦げのカウンターの煤を指先でなぞり、店の側柱を手すり代わりに外へでた。


「マルカどこだよ?」


今日は酔っ払い達の痴話喧嘩もなく、生ぬるい風が身体に向かってくる。そして獣の鳴き声が遠くから聴こえた。


「初めて見たな。」


昼夜、灯りが絶えない街の象徴の銀山が真っ暗な闇の中に姿を隠していた。幼いころから、当たり前のように見ていた見慣れた光景。いざなくなると不思議と淋しくなる。


「商店街かな?」


そうだよな。夜は店…終わってるよな。

街一番の商店街。日中は沢山の人達で賑わっている。

地面が抉れ建物ひとつ見当たらない、この不気味な雰囲気な場所を「商店街」だと認識している俺は…


まだ少し、寝ぼけているのかもしれない。


「良い人達だったもんな。俺も本当に好きだった。」


マルカはまた、墓参りに行ったのだと俺は思い。緩やかな坂道を登り「支え岩」を目指した。


街を見渡せる丘に昔から存在する二枚の大きな岩。

しかし、俺の目の前に現れたのは砕け散った岩の瓦礫だった。


「妾に過ちがあったか?」


俺は知った上で、認めなかった。

石化が解け街に帰ってきた時に、変わり果てた街を見て

真実を受け入れなかった。


そして、丘の上で泣き喚い散らす俺の前に現れた女性に

腰の短剣を抜き襲いかかった。


「お前、ふざけるなよ。」


俺の短剣は、その女の腹部に突き刺さる。知らぬ顔の女に、怒りと憎しみを込め突き刺した。


なぜマルカを俺は刺したのか?


知らぬ女を刺したのに、なぜ俺の前に血を流したマルカがいるのか。


(お前は、この娘なら許すのであろう?)


お前の【精神体】は、この娘との【歩み】をずっと願っていたぞ。妾は退屈せんかった。お前の【精神体】との繋がりは非常に興味深く学ばせてもらった。


「だから、感謝を込めてお前の【欲】と【願望】を味あわせたのに、なぜ妾に刃を向けてしまう?」


俺のまえでマルカの姿をした女。


其奴は、銀龍の生まれ変わりだ。


俺は真実を受け入れず、銀龍は俺の精神体から思い出と理想を感じ取り、【お礼】のつもりで実態に近い幻を与えた。


マルカは…ダンさんもクレアさんも街の人も皆、15年前の龍の暴走で焼き払われて死んでしまったんだ。


「なぜ喜ばぬ?」


銀龍はマルカの姿で俺に寄り添う。彼女が差し伸べた手は温かく、彼女の笑顔は街を出た日の見送ってくれた笑顔と変わらない。15年も歳を重ねた彼女を見ることはできないのに、俺は自分の思い描いた女性をマルカだと思い。【真実】を【無】にしようと求めてしまった。


「妾は悪い事をしたのか?学んだつもりだったのだが、人間とは短命の癖に実に細かく難しく考える生き物じゃのう。」


俺は自分の胸に短剣の刃を向けた。こんな世界で生きている意味はない。


あの世があるなら…マルカを探しに行こう。


「無駄じゃ。そんな刃で何ができる」


短剣の刃は俺の胸に突き刺さらない。砕けた刃を見ながら俺は…銀龍に嘆願した。


「お願いだ。俺を殺してくれ。」


歪んだ学びか人知を超えた者の戯れか?銀龍は俺からの

愛情を受け取ったと語りだす。脱力感から項垂れる俺を抱きかかえる様に包み込む銀龍。


「お前が望むものは何だ?」


俺を包み込む銀龍が耳元で囁いた問いに


俺は、小さな声で答えた。


「勇者達を潰す」


と…



読んで頂きありがとうございます。

裏話編は今回で終了です。


次回からは

復讐編となります。


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