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逃げられないよ

「柿本君が慌てて走っていっちゃうから…頑張ってみたよ、足は昔から速い方だったし」


足の速いってのもそうだけど、持久力が凄いんだよ…

コイツの体力少し分けて欲しいぞ


「1人で帰りたいって言っただろ…その気持ちを尊重してくれたんじゃなかったのか…?」


「だってほっといたら火鞠ちゃんに食べられちゃうし!」


俺は小動物か!そんな食物連鎖はない!!

でも五次元に捕まったら…


「いや、本当にそんな気がしたから走って逃げてきたんだよ!!」


「私が柿本君をあの女から守るの!」


変な正義感発動するな!あの女呼ばわりかよ…勘違いキス魔のお前も同類の害悪じゃ!


収集つかなくなる前に昨日の誤解を解かなければ…

あまり言いたくないが、仕方あるまい


「それよりも…藤坪、昨日のキスの事なんだけど…」


「…また…したいって事かな…?私はもう、いつでも良いから…」


はい、出ました勘違い、ドラマではここで勘違いのまま終わるモヤモヤがあるが、俺はその轍は踏まない!


「…よーく聞いて欲しいんだ、あれな、シロ美ちゃんにキスして良いか?って言ったんだぞ、藤坪が勝手に勘違いして先走った結果そうなってしまったんだ…だから俺にその意思は全く無かった、完全な不意打ちだ」


…案の定鳩豆(鳩が豆鉄砲を云々)な顔をしている


「知ってるよ?私そんなに勘鈍くないよ?」


「は?」


知ってた?知ってたって言った?


俯いた藤坪は俺に目掛けておもむろに飛び込んできた


「あっ!うわっ!倒れっ…」


咄嗟に踏ん張りなんとか倒れずに済んだ…

俺の体幹が終わっているだけで、そもそも倒れるほどの事ではないらしい


柔らかい…藤坪の成分が全て香りとなって届いている感覚に襲われた

全く嫌な匂いではないが藤坪臭が強すぎる



「お願いします、友達のままでも、私物でも良いから私をそばに置いてください… 」


その言葉を咀嚼できるほど俺は利口ではないらしい


「いや…私物って…」


訳もわからずその肩を抱いてしまった


柔らかい


「…逃げたりして悪かったよ、でも俺、人を好きになるとか分からないんだ、今は、藤坪には藤坪の人生があるだろ?お互いにまだ高校一年だ、何があるか分からない、だから藤坪にはこの先ちゃんと相応しい人が…」


「また逃げてる!!!!」


「わっ!」


至近距離の大声で体が振動した


「私の人生とか、相応しい人とか!そんな勝手に決めつけて、逃げだよ!!!!振るならハッキリ言って!!変な同情なんて、要らない!!私が毎日どんな気持ちで柿本君を見てるか……!!友達のままでなんて、良い訳ないでしょ…!!」


悲痛な叫び、聞くだけで胸が締め付けられる


「……」


もはや何も言えない


「…覚えてないかもしれないけど中学の時、私がクラスの女子から顰蹙を買った時に他の男子も同調して態度を変えてきた、その時も柿本君だけは態度を変えずにいてくれた…」


ダメだ、本当に覚えてないわ

なんで藤坪は顰蹙を買ったんだ?


「本当に嬉しかったんだよ…だから私はこの先何があっても柿本君だけは裏切らない、そう決めたんだ…」


覚えてないし、なんだか全体的にフワフワした説明だけど…きっと当時の俺は喋れる数少ない藤坪をクラスの同調で消せるほど余裕がなかったんだろう


当時からモテてた記憶はあるから、顰蹙を買ったのは男がらみの事だったのかも…?

また何かしらで思い出すかも


というかいつまで抱きついてるつもりだ?

手を離して藤坪から離れようとするが、ガッシリとホールドされて、離れない


「…あの、藤坪?そろそろ離れてくれないか…?話も出来ないじゃないか…場所も場所だし…な?」


「………」


この体勢でだんまり決め込むとか、いくら俺が相手でも虫が良すぎないか?


授業でやった柔道の技を極めるか??成功した試しはないが、でも相手は女子だし…でも俺より強そうだし…



ヴィーービビビビビ……


バイクが近づいてくる


ヴィヴィービビビビビビ…!!!



なんだか派手なバイクだな…仮面のヒーローのバイクみたい…ってアレ?ウチの高校の女子制服を着てるぞ、バイク通学OKなんだな


って、この女デケエ!!


ヘルメットのせいで顔は見えないがこの身長、髪の長さ…まさか…


あ、停車した


こっちメチャクチャ見てる、そして藤坪は離れない


ヘルメット外さなくても分かる、五次元なんだろ?


バイクの運転手はヘルメットを外す、すると長い頭髪がフワッと宙に浮く


やっぱり…


「何してるのかな??2人とも」


一見にこやかだが目が完全に笑ってない


「あっ、いや、コレは…!」



「1人で帰ったんじゃないの?藤坪ちゃんと合流したんだね?なら初めからそう言ってくれたら良いのに…ねえ?そういう関係になってたんだ?なら全部茶番だったって事?」


「ちょっ、ちょっと待って、藤坪とはまだ何も始まってないんだ、本当なんだ、本当に俺は1人で帰ろうとしたんだけど途中で藤坪に見つかって、それで…」


「まるで浮気した人の言い訳みたいだね?」


このアマ…本当に…


「じゃ、じゃあ言わせてもらうけど、高校生がバイクなんで乗って良いのかよ!」


ヤベェ…なんか弱い言いがかりが出てきちゃった…


「バイクの免許は16歳から取れるんだよ、それにコレは原付だからすぐ取れるんだ」


なんだかよく分からない事を言っているが、原付ってなんだ!


「バ、バイク通学なんて許可されているのか!?みんな自転車じゃないのか!」


「ちゃんと許可取ってるから大丈夫だよ、色々制約はあるけどね、もう聞きたい事は済んだかな?こっちが質問しているんだけど?」


考えろ、考えろ反撃しろ、俺


あ!


「そもそもバイクで通学してるなら一緒に帰れなかっただろ!」


コレでどうだ?反論出来まい


「いや、バイクを駐輪所に置いていけば良いし…」


「クソッ!!!!!」


頭が悪いのが露見した!悔しい!


今までくっついていた藤坪がようやく離れ、五次元の方を向いた


一気に熱が解放される


「火鞠ちゃん、柿本君の事どう思っているの…?その前に私がいる事を忘れないでね…」


うーん…そもそも五次元さんにとって俺は対象外なのでは?俺が傷つく回答をされそうなので耳を塞ぎたい気持ちでいっぱいだ


「正直に言うと、私は藤坪ちゃんと柿本君の関係に嫉妬していたんだと思う、だから茶々入れたくなったんだろうね…どう思っている、か、なんて言うか、もっと知りたいって言うのが今の気持ちなのかな…勿論柿本君の事は好きだよ、可愛いし」


なんか思ってたんと全然違う、全ッッ然違う!!


「昨日も言ったけど、藤坪ちゃんが本気で柿本君の事を想っているなら友達として本気で応援したいとは思っているよ、でも私もやっぱり女なんだなって、欲が出ちゃったみたい」


「欲って、何?柿本君を取って食おうとする気…?」


そうはならんだろ、柿本君は食べ物じゃないんだぞ


「仮に取って食っても柿本君は誰のものでもないんでしょ?2人はまだ付き合ってないんだもんね?」


うんうん、キスはしたけど付き合ってはないぞ

…?なんかそれもそれで物凄く変な感じだけど…


「…私、付き合うなら柿本君みたいな人が良いな」


五次元??


なんかおかしな話になってないか?

あと口が裂けても言えないがどちらかと言えば五次元よりも二次元の方が…


「じゃあ火鞠ちゃんとはこのまま友達って訳にもいないみたいだね」


「…そうだね、ライバルって言った方が良いのかもね」


馬鹿馬鹿馬鹿!!馬鹿共が!

三角関係?そんなもん俺に持ってくるんじゃねえ!!


俺はただこのまま、ずっと自販機での休憩を楽しみに生きていたいんだ!


お前らがいると自販機よりもそっちに頭が行っちゃうだろ?俺だって男なんだ、いくら二次元の方が良いと言ってもこれだけ色々転がり込んでくればどんな固い意思だって簡単に砕けるって!

お前達は自分の身なりの綺麗さを自覚してそれに見合った行動すれば良いんだ!


決して口には出さないがそりゃ両方好きになっちゃうよ、動物として、そんなのダメだろ?ダメに決まってるだろ?

だからこれ以上俺に深入りしないでくれ…

収集がつかなくなるんだ


俺は息を深く吸い込んだ


「五次元、藤坪、聞いてくれ」

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