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口付けescape


異世界に転生したのか…?

これは現実か…??


「これで…良いんでしょ…?」


いや、お前じゃなくてシロ美ちゃん!!!!!


などと言える余裕はない、超弩級の衝撃が駆け抜けたのだから


「…ありがとうございます…」


こうだ、テンパって感謝する始末だ


その後の記憶はとても曖昧だ


お茶とお菓子をいただき、色々家の中を案内してもらい、それから………

帰りは藤坪ママに自宅まで送り届けてもらった


藤坪とチューした!

常にその事実が思考を満たしている、駆け巡っている


帰りの車内には藤坪本人も同乗した、手を握られた気がした、何かを言っていた気がした


それらにどう答えたかは分からない


その日は寝付くまでにかなりの時間を要した


きっと俺は頭が完全にパンクしたのだろう




翌日いつものように自席に座る、もはや景色は白黒なのではないか、見えていないのではないかと思ったがどうやらキチンと見えているようだ


藤坪はいない

いや、それで良い、今はいなくても良い


空き時間だ、本でも読もう

何かをしていないと気が狂いそうだ、いや、狂っているのか


ただ小中高とホームルームまで読書する事が定められている為図書館から借りた本、または所持している本を仕方なく読むだけだ


俺が所持している本は大相撲名鑑

所謂お相撲さんの図鑑と言ったところだ

初めてノリで買った本である

割と相撲は好きだ


何度もパラパラと読んでいる為、お相撲さんの番付は全て覚えた

上から横綱、横綱は相撲を知らない人でも大体分かる1番高い地位だ、その次が大関、関脇、小結、ここまでが三役と言われる地位、次に前頭、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口となる


相撲の事考えてないとやってられないんだ!


周りの人間のスクールカーストに組み替えると

俺は序ノ口だとして…左隣の席の橋石は幕下で、


「おはよ、柿本君」


渦中にある藤坪に大相撲を遮られたようだ


「…うす」


昨日の今日でまともに会話出来るかい!目も尚更合わせられんわ


「なんか元気ないね、寝不足?」


お前のせいでこうなってるんだろーが!と一瞬考えが過ったが、100%藤坪が悪いわけではない、補足をしなかった俺が悪い

いや?にしてもお口とお口のくっつき合いしてくるか?普通?

しないよな?じゃあアイツが7割は悪い。


「私も寝不足気味で…ちょっと色々考えちゃってて…えへへ…」


ヘラヘラすな


今日こそは自販機休憩するんだ


ちゃんと1人になる時間が必要だ


今日は例え槍が降っても1人で帰るんだ


「柿本君、おはよ、今日もおばあちゃんの所に泊まるんだけど、自販機の所まで一緒に帰ろーよ」


「五次元テメェ!」


あ、ヤベェ咄嗟に出ちゃった


「うわあ…なんか私、怒らせちゃった?」


なんだよ、何ドン引きしてるんだよ、そしておはよう五次元さん


「…今日は行かれへん、1人で帰りたいんや」


「なんで関西弁?嫌だって言っても勝手に着いていくからね〜」


糞がッ!


「…柿本君が1人で帰りたいって言ってるんだから尊重してあげれば…?」


かなり低い声色で藤坪が助け舟を出してくれた


藤坪、なんかキレてる?


「藤坪ちゃん、なんかキレてる…?」


だよね、キレてるよね?


「キレてないよ、ただ柿本君の気持ちを尊重して欲しいだけだよ」


キレてるだろ、ただ俺の気持ちは尊重して欲しいのは激しく同意する


「そんなに心配なら藤坪ちゃんも一緒に着いてくれば良いのに…」


「私は、部活があるから…」


そういえば藤坪は何部なんだ?今更だけど…あとで聞いてみようか


「じゃ、そういう事だからよろしくね!」


「えっ…俺の意見は…」


行ってしまわれた、そうか、そういう女なんだな五次元さん、俺の中でかなーーりイメージ下がったぞ


呆れつつ藤坪の方をチラ見するとこの人、ボールペンか何かで机をガリガリガリガリと削っているではないか、恐る恐る本人の方をしっかり見ると何か呟いているようだ、すっごく怖いって


ガリガリガリガリガリ


「ちょっと!机削るのやめなって…怒られるぞ」


「…っ…て…」


「え?」


「私だって…帰りたいのに…部活…五次元…あのモデル…よりによって…柿本君…他の……」


ところどころ全然聞き取れないけど何となく言ってる事はわかったかも


ガリガリガリガリ


あーあ、もうどうしようもねえな、コレ


奴の人となりが分かった気がする

多分コレは想像じゃなくて結構確信に近いと思う


イメージは下がったぞ


ったく、全員クセが強すぎるんだ…


とにかく今日は逃げまくろう、先手を打って迅速に行動しよう


このまま奴らと関わってたらこっちの身がもたない、地雷なんて可愛いものじゃない、あれは核爆弾だ


よく聞き、よく周りを見た、五次元、藤坪の二大巨頭から逃げる為だ

藤坪から話しかけられても無難な言葉でかわし続けた





下校時間がこんなに待ち遠しいとは思わなかった


「じゃ、藤坪、また明日」


藤坪の返事も聞かずにおもむろに教室を出、下駄箱までノンストップで駆け抜けた


駆け抜けた、青春とはこういう事を言うのか…感慨深くなる


流石に俺が教室を出るのが早すぎたせいで他の生徒はほとんど見かけなかった



モタモタしていたら五次元や藤坪に捕まってしまう、紐靴にイライラしながらも再びスタートダッシュを決める


奴らが追ってくる確証はないが、何か見えない敵から逃げる感覚にゾクゾクしているのだ

これがスリルと言うやつか


あの自販機は危ないな、やむを得ないが別のルートで帰宅するか


これで2日連続でお預けだ、何も楽しくない…


しばらく走り続けたが元々運動不足なのもあってすぐに腹部が痛くなる


息が切れたようだ


「はぁ、はぁ、ここまで来れば…はぁ…」


後ろに警戒をしつつ、少しペースダウンをしよう


もう夏が近い、暑い時期が来る、というか既に少し暑い


この地域は標高が高いので気温は低めである、都心部と比べれば

だが都心部の気温などは知らん、暑いものは暑いのだ


しばし立ち止まり、周りの安全を確認しつつスマホを見る


「げっ」


メッセージがいっぱい届いている


(himari)から5件

(れいか)から2件


怖…

明らかな五次元と藤坪だ


無視無視、俺に出来る事なんて一つもない


なんか言いたいことがあるなら捕まえてみろってんだ!はっはっー!!!


心の中で余裕の勝利宣言だ!これが勝者の余裕だ


まだ息は苦しいがスマホをしまい、また小走りで先へと進む


校舎からはだいぶ離れただろう、もう後ろを気にすることもなく先に行ける


「あれ?」


前方50メートル先に誰かいる…女性か

同じ高校の制服だ…

遠目で見ても佇まいからしてモテそうな生徒だな


距離が近づけば近づくほど不安感が強くなってくる


こっち見てるな…


こっちに近づいてくる…


よく知っている人物だ


奴は…



「ふ、藤坪だぁーーー!!!!」



コイツ!!先回りしてやがった!

高校からここまでのルートは何通りもある訳だが、他のルートだと少し距離がある、多分


藤坪の奴、髪は多少乱れているがあまり息は切れていないようだ


「柿本君、今日も部活バックレちゃったよ…ちゃんと部長に説明したけどね」


嘘だろ…!?いくら俺の足がドン亀だとしても速すぎる…!バケモノか??

そうか、コイツ、バリバリの運動部だったか


「藤坪って…何部??」


「創作部だけど…」


「部活関係ねえじゃん!!」

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