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藤坪の家へ


藤坪母からの急な呼び出しに答える形で藤坪家に2人で向かう事になったのだ



「こうやって2人で歩いてる目撃情報が既に多数だろうから言い逃れ出来ないぞ」


「言い逃れって、何?」


「じゃあ聞くが、俺と歩いている事について何か聞かれたらなんて答える?」


実際校舎を出るまで凄い男子達にチラチラ見られたぞ

あれは藤坪騎士団かな?話しかけられなくて良かったよ


「別に…一緒に帰ってるだけだけど…って答えるし」


今まで一緒に帰ったことなかったじゃん!発展したとか思われるじゃん!藤坪にはそういう想像力が圧倒的に足りない!コミュ障陰キャの気持ちも考えろよ!


「この前血相変えた坊主頭のデカい生徒が藤坪とはどういう関係なんだ、藤坪は付き合ってる人いるのか、とかメチャクチャ聞いてきたぞ」


あの坊主、同じクラスでもないけど、誰だったんだろうか


「ふうん、そうなんだ、でも私には何も言ってこないんだね、その人も柿本君も」


「坊主は知らないけど、少なくとも俺は藤坪が嫌な気持ちになるって分かってたから、一応黙っといたよ」


「鈍感なのに優しいね…あと柿本君って普通にコミュニケーション能力高いよね」


ニヤニヤとうすら笑いを浮かべる藤坪はまるで俺をバカにするかのようだ、コイツこんな表情も出来るんだ


「鈍感は余計だぞ…俺は間違いなくコミュ障だぞ」


「卑屈だからそう思い込んでいるだけじゃない?柿本君が自分自身を下げれば下がるほど私も惨めになってくるから…卑屈なのはやめてね」


「はい分かりました」


ぐうの音も出ない正論をぶつけられた俺は沈黙

でもコミュ障陰キャなんだけど…


話やすい!藤坪には抜群の安定感がある!

何となく思ったことをパッと言えるこの感じ、これが友達か!なんでもっと早く気がつかなかったんだろう…そりゃ藤坪も泣くわ。


でもイメージ的に女の兄弟って感じかなぁ、恋愛感情は湧いてこない、かな?藤坪は勿論女子なんだけど、そんなに異性の意識がないというか、なんだろうな


その反面、昨日の五次元さんはヤバかったね

正直好きになりそうだった、そりゃ、間接キス、ハグのダブルで来られたら誰だって落ちるだろうが!


だが俺は柿本、簡単に他人を信用しないし好きにもなったりはしない


五次元さんなら一生男に困らないだろう


「ねえ」


前を歩いていた藤坪が足を止めたのでぶつかりそうになった


危ないな、急に止まるなよと言いかけたが怖い顔でこちらを睨みつけている


なんか今日の奴は表情豊かだな、喜怒哀楽激しすぎ



「今、火鞠ちゃんの事考えてなかった?」


ここまで行くと全てが怖えよ…なんで分かるんだよ…


「火鞠ちゃんって本当可愛いよね、背も高くてモデルみたい、何でも出来るし…羨ましいよ…柿本君は私が今日の出来事で何考えてるか、分かる?」


藤坪の考えてる事?


「私、嫉妬深いんだなって思った、今まで火鞠ちゃんとは仲良くしてたけど今日ので結構モヤモヤしちゃってたんだ」


俺に聞いてきたよね??自分で答えるんだ?


「急に柿本君に話しかけてきたり、昨日だって私の知らない所で火鞠ちゃんと柿本君で何かしらの話をしたんだ?私が知らない事があるって考えただけで胸が苦しいんだ、結局柿本君が好きだって事バレちゃったし、なんか転がされている感じで…」


バレたって、自分で白状してたんじゃん


あと話の雲行きが物凄く怪しいぞ、台風でも来るのかな…


「昨日火鞠ちゃんと何かあった?付き合ってるとかないよね?どうなの?好きなの?」


怖っ…完全にメンタルが…

いやいや、間接キス、ハグからの好きになりかけたなんて口が裂けても言えないぞ、特に今の藤坪には…どうしよう、昨日のドキドキとは違う種類の…コレは動機だ…!

うーむ、この土壇場、どう発言しよう


「五次元さんとは昨日たまたま会ったんだ、それも下校途中で…大した話はしてないよ、昨日初めて喋ったし…それに五次元さんは俺なんか選ばないよ、チビだもん」


「あのさぁ、さっき卑屈なのはやめてって言ったんだけど…俺なんかとか言わないで欲しいんだけど、チビ?そんなの知らないし、私は柿本君がスライムだったとしても好きになってるし」



告白じゃん

スライムだったら好きにならないだろ、ていうかダメ出しするんだったら好きにならなきゃ良いじゃん

言ったら喧嘩になりそうだから言わないけど

俺はそう思います



コイツ付き合ったら束縛するタイプだな、絶対




そうこう言っている内に今度は本当に藤坪家に到着したようだ

確かに中学からも高校からも近いな


ほほぉ、一人っ子の家ってこんなデカいのか?典型的な良い家って感じ

でもなんか俺達ギスってないか?気まずくないのか?


「ここ?お家が新しいように見えるけど、先週建てたの?新築?」


「そんな訳ないでしょ…十何年も経ってるし、大体どこの家も同じような感じでしょ?さ、入って入って」


あ、意外とあっさりしているのね、引きずらないタイプなんだ、そこはやはり良い奴代表藤坪、流石だ


コイツん家金持ちなんだろうな、庶民には全く分からない感性がありそう


開かれた家の扉に戸惑いつつも足を踏み入れる、玄関のタイル一つ取ってもやはり一般より一つ抜きん出ている雰囲気を感じ取れる

建築とか素材なんて全く知らないけど

「お邪魔します…」

うわ、家の中白ッ!

あとスゲエ良い匂い、玄関に芳香剤でも置いてるのか?


「きゃー!零ちゃんおかえりー!この子が柿本君?可愛い〜ね〜!」


なんか藤坪を大人にしたような若い女性が玄関にいた


零ちゃんとか呼ばれてやんの


「零ちゃ…藤坪って一人っ子じゃなかった?お姉さんいたの?」


「違うよ!お母さんだよ」


「メチャクチャお若いですね!?本当ですか!!20代の女優かと思いましたよ!あ、私零華さんと1番仲が良いと言っても過言ではない代表、柿本戒司と申します、初めまして!以後お見知り置きを!」


「え〜?零ちゃん、この子超可愛いじゃん!挨拶も丁寧だし〜、こんにちは〜零華のママです〜もう、上がって上がってー!」


もうニヤニヤが止まりませんな


「…柿本君…物凄〜〜〜く喋るね…やっぱりコミュ力高いね、悪い意味で…ちょっとキモいよ…」


キモいとか言うな!だって藤坪ママメチャクチャ良いんだもん!

おーい、娘さんよ、すっごい軽蔑の眼差しで見てくるじゃん、何その目


藤坪家は壁の至る所になんだかよく分からない芸術的な絵なのか写真なのかが飾ってあるな


おや?奥から白い物体が近づいてきた、あれは猫か?俺の足に擦り寄ってきた

ニャンと鳴き、こちらを見つめてくる、更にまた往復し、擦り寄る


「お出迎えしてくれたの?柿本だよ〜いい子だね〜」


たまらず猫の頭と喉を撫でる

目をへの字にして喉をゴロゴロ鳴らしてる

バカみたいに可愛いな、手触りが良い


「柿本君って猫好き?」


「好き!!」


「ふ、ふーん、そうだったんだ、シロ美が懐くなんて珍しいな」


シロ美って言うのか、可愛い


「ほらほら、シロ美ちゃん、柿本君が先に進めないから、お部屋に戻るよ〜」


「ニャワーーン」


藤坪ママがシロ美ちゃんを抱き抱え、奥の方へ行ってしまった

シロ美ちゃんのなんと悲しい顔と声…


ママと一緒に奥へ行ってしまう


シロ美ちゃん、たまらんくらい可愛い猫ちゃんだ、チューしたい


「藤坪…あとでチューして良い?」


「へっ!?あっ…へっ!?」


言葉になってないぞ、どうしたんだ?


「いや、チューだって、流石にダメか?」


「いや、その、急にそんな…」


なんでそんなに慌ててるんだ?ダメなら全然良いんだけど


「…分かったよ、ちょっと図々しかったな」


猫チューしたかったな…

「むぶっ!」


可愛い猫、シロ美ちゃんに支配されつつある思考は突如として途切れてしまった

藤坪が俺の顔を強引に引き寄せ、彼女の湿った唇で乾いた唇を塞いだからだ

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