災害と再会
元々勉強などしない人種の俺だが、今回の自習は隣の藤坪と至近距離メッセージのやり取りで終わった
だってあまり喋ってると周りに色々と…今更か
昼休みの時間になった瞬間藤坪に腕を掴まれる
「おい、あんまり触んなよ」
「早く、部室行くよ!」
言葉と一緒にグイグイと引っ張られる
「分かったから、手を離しなさい」
部室へと向かう道中
「…そう言えば今日五次元と喋った?自分で言うのもなんだけど、奴は謝りに来ないのか?」
藤坪は上を向き少しだけ考えたような素振りをした
実際考えているのかもしれないが
「ううん、今日は一度も…火鞠ちゃんね、完全に柿本君の言う通りにしているんだよ」
俺の言う通り?つまり…
「…絶交を受け入れたって事?」
「そう、だね…うーん、一応火鞠ちゃんから言伝があるんだけど、聞いてくれる?」
「うん…一応…」
どことなく不穏な雰囲気はするものの、聞いてはみたかった
「えっと…私は柿本君の意思を尊重する、絶交って言われたらその通りにする、ごめん、短い間だったけど楽しかった、って…」
「そ、そうか…」
不思議と気持ちにまだモヤモヤが残る
「それでね、昨日あの後火鞠ちゃんとちょっと言い合いになっちゃった…ははっ」
言い合いだと?全然想像がつかない、五次元がガーガー言うのはわかるけど…まさか張り合ったのか?
「藤坪ちゃんはどうするの?」
「私は…友達でいさせてもらいたい」
「柿本君が絶交って言ったんだよ、男に二言はないでしょ?それとも、柿本君に恥をかかせる気?」
「ほら、でも言葉のアヤって言うのもあるでしょ…だから…」
「藤坪ちゃんって本当自己本位だよね、自分の恋愛感情最優先?柿本君の気持ちには従う気ないんだ?」
「そんな、自己本位だなんて言い方やめて欲しいな …私は…」
「じゃあ何?友達でいさせて欲しいってのも私欲じゃないの?凄い勝手な言い分だと思わない?本当に悪いと思ってんの?思ってないでしょ、結局自分さえ良ければいいんだもんね」
「……くせに…」
「は?」
「後からしゃしゃり出てきたくせに!!口出ししないでよ!私がどれほど柿本君の事思ってるか知らないでしょ!!私欲だなんて、好きになる事がそんなにいけないの!?」
「そんなに自分が可愛い?そもそも柿本君に全然相手にされてないじゃん」
「何それ?火鞠ちゃんに関係ないでしょ!!火鞠ちゃんだって全然でしょ」
「いーよ、私はもう友達でもなんでもないから、藤坪ちゃんみたいにネチっこく付き纏ったりしないから」
「ネチっこくって何?私だって頑張っているの!なんで色々言われなきゃいけないの!?」
「ネチっこいでしょ、媚び媚びでバカみたい、結果が伴ってなきゃ頑張ったって言えないよ?」
「…じゃあこの話は終わりだね、ついでに火鞠ちゃんともね」
「まあ、せいぜい叶わない恋を頑張ってくださいよ」
「うるさい!」
話を聞き終わった頃にはとっくに部室に到着していた
「…え?君らも絶交しちゃってるじゃん…」
「まあ、そうなるね…」
「いや、なんか…こっちもごめんと言わざるを得ないんだけど」
「ん?いいよ、煩わしかったから丁度いいよ」
見聞した結果他人の見てはいけない部分を色々見てしまった気がする、これは良いのか?
「じゃあ私寝るので」
創作部の教室(部室)に到着するや否や藤坪はブレザーを枕に、床に寝そべり始めた
ねえ、見えるから!見えちゃうから!
今日は床に頭付けたり横になったり、忙しいな
ここっていつ掃除してるんだろう、今日辺り床掃除しようかな…
めんどくせぇから良いや
なんか色々あったから食欲ないなぁ…
忘れがちだが文化祭まであと10日、展示の準備は着々と進んでいる
レイアウトは決まっているので前日に机を動かすくらいだな
当日は創作部に誰かしら居なければならないが、豊田先輩以外フリーなのが居ないのだ
森脇先輩は言うまでもなく、藤坪、五次元(在籍しているのか?)、俺はクラスの喫茶店で不在なのだ
ほとんど人が来る事はないから大丈夫だし、顧問もいるので問題はないらしい
文化祭自体あまり馴染みがないのだが、楽しいのか?
ていうか喫茶店のメイドの五次元、藤坪が敵対してるなら雰囲気ヤバくない?文化祭じゃなくてもヤバくない?災害じゃない?どうすんの?
部活は?退部?
普通に俺に原因があるので恐ろしい気分なんだが…
待てよ、思い返すと割とお互いを陥れるように取れる発言が多少なりともあったような…
元々相容れぬ存在だったのか…?
ダメだ!欠員はまずい!とにかく豊田先輩に相談だ
先輩からの返信はこうだ
「確かに柿本っていう支柱が居たからこその関係だったかもな、しかし、ここで欠員が出たか…まあ、それでも去年よか2人増えているから部活自体はどうにかなるだろう、私達が卒業するまでは…」
そうか、先輩達卒業するんだった、2年は不在、ダメだこりゃ
「先輩、1、2年に誰か入部してくれる知り合いいないんですか?」
「バカ乙!いればとっくに何とかしてるわ!もうほとんどお前が部長なんだからな、藤坪にでも頼めよ!」
藤坪が起きたらちょっと聞いてみよう、普通に消去法でコイツが副部長だもんな、人員確保は任せよう
…
うわ、藤坪の奴、完全に寝息立ててる、ちょっとトイレだけ済ませよう、忍び足、そして扉はゆっくりと開けないと…
よし、無事に部室から出られた、部室部室言ってるが教室だけど
「戒ちゃん?戒ちゃんだ!」
戒ちゃんだと…?
後方より聞き覚えのあるフレーズが
俺の名前をそう呼ぶ奴に心当たりがある、保育園、小学校、中学校が同じの所謂幼馴染、中学はクラスが被らず全く関わりは途絶えたのだが…
振り返ると手を振る地雷系ツインテールの女子生徒がいた
こんな人校内にいたんだなぁ
「……」
全然知らない人だった、かいちゃんなんて他にもいるもんね、俺じゃなかったみたいだ、すっっっごい恥ずかしい
俺はトイレへと向かおうとしたがいきなり誰かに肩を掴まれた
「ちょっと戒ちゃん!今こっち見たよね!」
え、やっぱ俺の事?
ちょっと待てよ、俺この人知らないんだけど…
「痛ッ」
俺の肩を掴む手に力が加わって思わず声が出てしまった
「…幼馴染を無視するとか、酷くない?」
幼馴染だと?
俺の幼馴染の名は本田歌恋
…だとしたら見た目が違いすぎる
「と、とりあえず手の力を抜こうか」
スウっと肩の痛みが軽くなった
ふう、これで一安心だ
「…で、幼馴染ってどういう事?俺の幼馴染は歌恋って奴だけど、君は…」
「それ私!何、顔も忘れちゃった訳!?」
「いやいや、違う人でしょ、全然見た目違うんだけど…」
「…じゃあ証拠があるよ」
そういうと地雷系はポケットから紙を取り出し、広げた、ほう、何をするというんだ?
「かれんちゃんへ、いっしょにあそんでたのしかったね、けっこんしようね、かいじよr」
「わぁ!わかった!わかったからやめろ!!」
「思い出した?」
俺は必死で何度も頷いた
「また思い出したかったら言って、また保育園の時のお手紙読み上げてあげる」
「もう、忘れないさ…あと、同じ高校だったんだな」
「はあ!?今更!?こっちはとっくに気づいてたのに!?」
いやいや、見た事ないから
仮に見かけても幼馴染だと気づかんし、気づいたとしても時効的なアレがあるからアクション起こさないし
「じゃ、俺トイレ行かなきゃだから、さよなら」
腕を掴まれた
ちょっ、本当我慢の限界なんだけど…
「…で?あの女達は何?戒ちゃんの彼女?」
地雷系改め歌恋は厳しい目つきでこちらを睨みつける
「…女!?彼女!?何のことだよ!トイレ行かせてや!」
漏れそうで多少苛立ちながら答える
「柿本と五次元だよ、戒ちゃん随分いいご身分だね?毎日楽しそ…幼馴染を忘れるくらいには充実してるね」
「うるせえ!!!!トイレ行かせろ!!!!!!!」
無理矢理引き剥がしトイレへダッシュする
危ない危ない、大洪水になるところだった
話す前にまずトイレだろ、ったく常識ない奴だな!




