謝罪、贖罪
教室中がざわめいた
勘弁してくれ…こっちを見るな
「…昨日言った通りだ、話しかけんなよ…」
「…良いから来て」
強引に手首を引っ張られる
それを無理矢理引き剥がす
「分かったよ、着いていくから引っ張んなよ」
一瞬の間があったが。藤坪の手から力が抜ける
階段を降りる、
「…五次元は?」
「いないよ、ここには私たちだけだよ」
藤坪はいきなりその場に正座した
「お前ッ…」
両手を手を着き、頭を下げ、床に着けた
「昨日は本当に、ごめんなさい…」
正座をした時点でなんとなく理解できた
土下座だ
「そんな事するな、オイ!やめろよ!」
こんな姿は1番似合わない
「ごめんなさい…」
「やめろって!!」
見ていられないため無理矢理体を起こした
「何してんだよお前…!」
俯いたままの藤坪は何も言わない
「普通に謝ったら良いだろ、何で土下座なんてするんだよ!」
「だって…許してくれないんでしょ…?…絶交、なんでしょ?」
土下座なんて、そんな嫌な謝罪などしなければ許さないつもりでいたのは事実だ
許す許さないと言うより、女子に土下座をされているという光景にもの凄く不快感を抱いている
一刻も早くやめて欲しかった
「…確かにムカついたけど、絶交は言い過ぎた、でも根も歯もない事言うのはダメだぞ」
「…ごめんなさい…私、本気で嫉妬してたんだ、豊田先輩の事、警戒してたから…」
「何で?」
警戒だと?確かに変な人ではあるが、危険度はそんなにない人だろう
「柿本君はどうか知らないけど、豊田先輩、絶対柿本君のこと好きだよ…」
この期に及んでまたそういうことを言い出すのか、と怒り交じりの物言いを付けようとした
「待って、怒んないで聞いて…ちゃんと根拠はあるから…でも、時間がないから教室戻ろっか」
あ、もう間も無く次の授業が始まってしまう
ふぅ、なんか重々しい空気が少しだけ楽になった
やはり普段話す人間と口を利かなくなるのは気が重い
それにしても豊田先輩が?根拠もあるって?どうせ藤坪の独断と偏見だろう、まあ意外と感情の読み取りに長けているから何とも言えないが…
しかし豊田先輩は誰かに興味を持つような人間じゃないだろう、人の目もマトモに見れない人だぞ
それ俺もか
あとは五次元
コイツの方が言い方キツいから腹が立った
そもそも住む世界が違うから、色々あったが分かり合えないとは常々思っていた
今の今まで全く話しかけて来ないしな
それもそのはず、俺など居なくても彼女の世界は回る
しかし、藤坪の奴、豊田先輩が俺を?根拠があるって?一体奴は何を感じたのだろうか…?
「……
って藤坪が言ってきたんです、やっぱりああいう女は何考えてるか分かんないですね、全然懲りてないっす」
よく校内でも先輩とメッセージのやり取りはしている
大半は雑談だろうか、さっきの事も雑談のネタの一つとして組み込んでみた
「柿本さあ、ワザとやってる??だとしたら君はひどい男だ」
ええ?何この返信、疑問が尽きないんだけど
「そういう話あったとしても普通本人に聞くかね?
だとしたら君は私の事どう思っているんだよ?」
なんか怒ってらっしゃる…?ちょっと無神経だったみたい…
どうって、ぶっちゃけ見た目は好みなんだけど、それ以外はぐちゃぐちゃでぇ…
「で?藤坪さんが言ってる根拠ってなんだ?」
いや、それまだ俺も聞いてないんだけど…
とりあえずこの話題は藤坪に聞くまで持ちこそう
俺は内心少し楽な気分だが、藤坪は元気がなかった
よくよく顔を見たら地雷メイクかってほどに目の下にクマがあった、あ、メイクしたのか
目も赤い、花粉かな
凝視していたせいで藤坪と目が合ってしまった
これはいかん
「…何?そんなに見つめたら食べちゃいたくなるよ」
「それはやめてくれ、なんか目元がいつもと違うから…」
藤坪は、はぁーーーと長く息を吐いた
「当たり前だよ…寝てないんだもん、あんな事あったら寝れないし、普通…昼休みは部室で寝ようかな…」
「お…おぉ…」
最近俺が昼休みを過ごしている場所も部室、じゃあ今日は別のところ行こう
「柿本君も一緒にいてね?」
「なんで!?」
「…まだ怒ってるの…?」
「違う違う!でも寝るなら勝手に寝れば良いじゃん」
再びはぁーーーーっと長いため息をついた
お前は風神の名に恥じないほどのため息だな(?)
「柿本君がいないと不安だから、良いでしょ、一緒にいて」
そっかそっか、じゃあ仕方ないな、とはならんだろ
「それとこれとは話が別だ、断る」
「どれとどれの話が別なの!?…良いもん、無理矢理連れて行くし」
なんだぁ?テメェ
「そんなことより豊田先輩の話してや、根拠がどうとか…」
「あのさあ、自習とは言っても今授業中だよ?今する話じゃないでしょ?」
「お前もベラベラ喋ってただろうが…」
「わかったよ、紙に書くからちょっと待っててね」
なんだよ、初めからそうすればよかったやん
まあ、聞いたとてどうせろくでもない言いがかりなんだろうけどな
豊田先輩があのままの人間だったらなぁ…メッセージの弁慶具合だけどうにかなればすごい良い人なのに…
彼女はこれからどうするんだろう?
…そんなの俺も同じか、俺が心配するなんておこがましい
スッ
藤坪がノートの切れ端を机の上に置いた
ここにその根拠とやらが描いてあるんだな?
「豊田先輩の消しゴムに柿本と文字が書いてある
部活中もかなり長い時間柿本君を注視している
先輩は私たちとはあまり喋らないしメッセージなんてほとんどやり取りしていない、柿本君だけ特別
柿本君へ好き好き♡ふじつぼより」
ほら見ろ、そんなに大した根拠じゃないじゃないか、あと最後の文章はなんだ??
「お前…コレいくらなんでも言いがかりじゃないのか?」
藤坪は大層怪訝そうな顔をした
「…じゃあもっと詳しい事はメッセージで送るから、待ってて…」
あまり乗り気じゃないが、少し待ってみようか
消しゴムの件はよく分からないんだよな、そもそもの話、なんで豊田先輩の消しゴムを見たんだ?
アレだろ?好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると成就するとかそういうまじないだろ?そもそも消しゴムのカバー外さないと見えないし、いつそんなの確認したんだ?
お、藤坪からメッセージが来たぞ
「消しゴムは正直どっちでも良いの、なんかの偶然かもしれないし、それよりも部活中の視線だよ、柿本君は気づいてないだろうけど、豊田先輩、異常な見方してるよ…
表情とか凄いよ?普段無表情なのに柿本君見てる時だけ口なんて半開きでメチャクチャうっとりしてるもん」
…これは言いがかりにしてもちょっと弱いなあ
「ちょっとエピソードが弱い、やり直し」
とだけ送っておいた
返信
「きぃーー!!
じゃあ今日私が合図したら先輩の方見てみてよ!本当なんだから!!!!!別にさ、好きになっちゃいけないとは言わないよ!でも私不利になっちゃうじゃん!」
「まあまあ、落ち着けって、それに不利ってどういう事?」
返信
「不利だよ、だって豊田先輩の方がおっぱい大きいじゃん!!!!言っとくけど、私だって大きい方だからね!先輩が牛みたいにデカ過ぎるだけだから!!」
コイツ本当に頭おかしいんじゃないのか?
「柿本君大きいおっぱい好きでしょ?
この前豊田先輩がブレザー脱いだ時
デッッ…
って言ってたの聞こえてたんだからね」
わー!わー!やめろやめろ!やめてくれ!!
込み上げる罪悪感で熱くなってくる
言っとくが俺はそういう目で部活の女達を見ていないからな、だって3次元より2次元の方が好きだもん




