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疾風迅雷



豊田先輩はというとガタガタ震え始め、分かりやすく動揺している


五次元は腕を組み、まるで親の仇でも見るような目でこちらを睨みつけている


藤坪は乱れ髪で俯き、ぶつぶつと何かを呟いている


「言っておくけどな、勿論誤解だぞ、豊田先輩と友達になっただけだ」



「はあ?何で?元々仲良いでしょ?今更?」


「…どう聞いても告白みたいな言い回しだった…」


友達に苦労していないこの2人にどう説明したら良いか…そういうの、理解出来ないだろうな


いや、もう理解されなくても良いや、カチンと来た



「お前達には分からないかもしれないが、コミュ障同士が友達と認め合うのってスゲエ苦労するんだぞ…慎重に、慎重に行動しているんだ、それをプロポーズだの何だのって、そうやって茶化すからこっちサイドは自信無くすんだよ!!」


言いたい事は言った、もう勢いで帰ってやる


俺は机の上の紙をそのままに、カバンを掴んで席を立った


五次元、藤坪は俺を止めようとするが更にそれで怒りが爆発した


「どけよ!!もうお前らとは友達でも何でもねえよ!!2度と話しかけてくるなよ!分かったな!!」


2人の顔も見ず、無理矢理どかして俺は部室を出た



しばらく歩いたが心臓が激しく動いている



冷静さを取り戻すにはそんなに長い時間はかからなかった



「やっちゃったな…」


思いついた事をボツリ、と呟いた


自分からキレておいて、追いかけて来るのかな?連絡来るのかな?と思ってしまった


追いかけられても連絡来ても無視してやろうか、でも少しはこちらも謝罪した方がいいか

向こうから謝罪があるのか、それとも見限って2度と関わってこないのか、色々な思考が巡っていた


豊田先輩をあの中に取り残してしまった

今頃どうしているのだろうか、連絡、してみようかな…



「頭に血が登ってしまいました

今日はもう帰っています

先輩は大丈夫ですか?本当に申し訳ないです」



すぐに既読が付いた

ひとまず安心だ



「違う

私が変な言い方したのが悪いんだ、柿本は悪くない


あの2人も私に謝ってきた


私は大丈夫、私も今日はもう帰っている

帰ったら少し通話しないか?」


そうか、良かった



辺りを見ても五次元や藤坪はいない、連絡も来ない


終わったか、でも自分から関係を切ったんだ、仕方のない事だ


これで完全に学校には行きづらくなったな…


それに隣の席には藤坪がいる


影響力のある2人を突発的に切り離したんだ、何があってもそれは受け入れるしかあるまい


1人友達が出来たが2人失った


俺はこんな風に何人も減らしていくのか


怒りの感情を爆発させるのはあまり心地の良いものではない


明日登校するの嫌だな気まずいな、いっその事休んでしまおうか

でも100%こちらが悪い訳じゃないんだ

向こうが余計な事言ったからだ、うん、そうだ、俺は悪くない、向こうが謝罪して来るのが筋だろう


いくら思考を凝らしても気まずい気持ちは拭えないが





豊田先輩が家に着いたという事で通話を試みる


先輩は電話に出るなり


「すみませんでした…本当に…私の不手際で」


謝罪だった


どちらかと言えば先輩は被害者だ、本当に謝る必要などないのだ


「いや、違います本当に、俺が悪いんで!」


しばらく会話はどちらが悪い悪くないの平行線だった


「それでお2人とも、柿本さんに謝りたい、と」


胸に何かが湧き上がってきた

安心しているのか?俺は


それを認めまいとするアンビバレンスな感情が俺を饒舌にした


「別に謝ってもらわなくて良いですよ、あんな事言われて、こっちもムカついてるんで、しばらく反省してれば良いんじゃないんですか?別にもう友達でも何でもないんで、あんな奴ら知らないですよ」


「でも…」


「普段から扱いづらい連中だったんで、こっちとしてはむしろ清々していますよ」


違う

本心から出た言葉ではない

違う

豊田先輩にこんな事言う必要はないんだ

違う…


元々不相応な状況だったのだ、縁が切れるならそれはそれで良いじゃないか


俺は堂々としていれば良い、それだけのことじゃないか


藤坪も五次元も俺が居なくても何の支障もない、構わず生活すれば良いんだ


まだ高校生活は始まったばかりだ、早かれ遅かれこうなる運命だったんだ

清算出来た、良いことじゃないか




次の日、目が覚めてもモヤモヤした気持ちは消えなかった


奴らからの連絡は無し


五次元は元々早く登校するタイプではないので居ないのは当然、だがいつも登校が早めの藤坪は今日は席にいなかった

いつもだったら


「おはよ〜元気?」

などと声をかけて来る、しばらく他愛のない話をしている時に五次元が加わり…というのが流れだった


正直心臓はバクバクだ


休んでくれていれば、とすら思っていた


本を読もうとしてもどうしてもソワソワしてしまい手につかない

それよりも俺が平静を装おうとする不自然さをクラスの連中に変な風に思われないかと不安で仕方ない



「零華ちゃん?どうしたの?」


「藤坪ちゃん、目が真っ赤だよ!」



クラスの女子たちがざわめき出した

どうやら藤坪が来たようだ


俺はひたすらスマホの画面を凝視している

表示しているのは天気予報、もちろん何も頭には入っていない


横目で藤坪が座ったのが分かった

俺は知らん、ひたすらに天気予報の晴れマークを凝視する






1時間、2時間、ただただ長い時間が経ったが藤坪、普段通り登校してきたであろう五次元の動きはなかった

いや、動いてはいたが俺の方への動きはない



「柿本君…こんな事聞いちゃ悪いけど、あの2人となんかあった?」


藤坪、五次元が居ない間、俺が口を利く数少ないクラスメートの宮下が小声で話しかけてきた


「あの2人って?」


五次元藤坪の2人だろう、分かっていてもシラを切るのは本当に演技臭くて自分でも嫌になる


「五次元さんと藤坪さんじゃん、いつも話てるのに…今日はお互い無言じゃんね」


周りも不思議がるのは当然だろうな


「…さあ、機嫌でも悪いんじゃないの」


「どっちかっちゅーと柿本君の方が機嫌悪そうだけど…藤坪さんは寝不足だろうけどフラフラしてるし、五次元さんなんか普通そうに見えるけど、結構柿本君の方見てたでね、見過ぎってくらいだった」


お前も大概見てんじゃねえか


もうこの際言っちゃおうかな、一部始終


宮下くらいになら全部言っても許されるだろ、同性だし、宮下だし

コレは下に見ているとかではなく、信頼関係の話だ


俺は手短に説明を行った





「マジで!そんな事があったんだ、えー?確かに怒る事だけど…でも、絶交はやり過ぎじゃねえかな…?」


それは俺も思ってる事だけど…


「でもこの関係だってズルズル続けてても仕方なくない?アニメや漫画なら何とかなるけど、コレ現実だからね」


「そりゃそうだけど…アニメならとっくに手ェ出してるよね、美味しい立場だもん、でも第三者からしたら嬉しい悩みなんだよなぁ」


五次元、藤坪は人気だもんな


そう言えば宮下は入学早々、藤坪に告白した事あるんだったっけな、普通に断られたみたいだけど笑いながら話してたっけ、精神力強いな



「お互い色々あるだろうけど、普段仲良い人達がだんまり決め込んでると周りは不安だし、気まずいよ〜あー、藤坪さんも五次元さんもアクション起こしてくれねえかな」


確かに、宮下以外のクラスの連中もなんだか嫌な空気を出している


あーー、めんどくせぇ

巻き起こる全てとアイツらめんどくせえよ!!


「そうだ、宮下、小説書いたりするんだろ?創作部に入らないか?」


そう、この男は賞を受賞するほどのスーパーライターなのだ

頭を切り替えるために咄嗟に思いついた事なのだが、なぜこんな逸材を今まで放置していたのだろう


「いや、賞取ったのは中学の頃だし、今は書いてないよ、帰ってゲームしたいから部活はいいかな」


「みぃ!」


みぃ!とは最近流行っている


「ズコッ」とか「ありゃっ」に変わる言葉である


多分子猫の鳴き声が由来だろう


「ちょっと待ってくれよ、ゲームなんてスマホで出来るじゃん!」


「テレビゲームだよ!テレビに繋がないと出来ないよ〜」


「そんなもん持ってくれば良いでしょ!」


「無理無理、テレビもゲーム機も持って来れるわけないじゃん、30年前のゲームだし」


何でそんな古いものを…


突然宮下が

「あっ」と声を出し、風に吹かれた新聞紙のような速度で自席に戻って行った


先生でも来たのか?まさかな


「…柿本君、ちょっと来て」


その声に一瞬心臓にかなりの衝撃が来た


藤坪


別人かと思うほど疲れた顔をしている


いつか寝不足の時の藤坪を見たが、ソレと似ている、いや、それよりも悪化している

まさかコイツ寝てないのか?

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