夏休み前
夏休みももうすぐのクソ暑い時期
自販機で一息を入れる度に
「私の家来てよ〜」
と五次元からしつこく打診がある
その度に断っているのだが
「藤坪ちゃんの家には行くのになんで私ん家には来れない訳!?」
と言われても距離の問題もある
電車で何駅か進まなければならないからだ
「どうせ課題だって後半までやらないじゃん、一緒にやった方が早く終わるから〜」
「お前も後半までやらないだろ、バカが集まっても進まねえよ」
「キィっ!生意気な…藤坪ちゃん呼べば問題ナシ!」
結局人任せかよ
それなら…
「藤坪の家で課題やれば良いじゃん…」
「私も既に何回か課題やりにお世話になってるし…流石に夏休み中は図々しいよ…」
どの道図々しい事には変わりないだろ…
夏休みの課題は面倒だが自力でなんとかするさ
「ていうか、そろそろココに来てよ、藤坪ちゃんの家より近いよ?」
五次元は自販機の後ろの方を指差す
「私のおばあちゃん家、ここなら問題ないでしょ?」
そう言えばコイツは事実上家が2つあるのか、実家と俺のオアシス近くの祖母の家
五次元にこの場所で会うのも久しぶりだ、ほとんどソフトテニス部に参加して帰りの時間が違うしバイク通学だし
「夏休み中はおばあちゃんの家にずっといるからさぁ!遊びに来てよ!」
他人の家だけでもハードル高いのにその祖母の家となると尚更…
「とにかく俺は最近買ったVRで遊ぶので忙しいから夏休み中は誘わんでくれ!」
「はあ?キモッ、どうせそれでエロいの観て興奮してんでしょ?」
コイツは本当に言葉を選ばないな、ムカつくのでローキックをお見舞いしようとしたが、普通に避けられた
クソ!
「でも夏休みだってそんなに短くないんだから、遊ぼうよ!」
「嫌っすね」
「なんでよ!全然そっち行くから!」
「来なくていいよ」
「バカ!!」
パシンと頭を引っ叩かれる
「大体五次元もソフトテニス部だっけ、夏休み中は部活があるんじゃないの?」
「あー…もう辞めた」
「何で!?」
五次元、そこそこ強いって聞いたぞ?勿体無いやないか
「ココは設備も全然だし、元々私自身そんなに興味ないって言うかさぁ…」
「じゃあ創作部も辞めるの?」
「辞めないよ!創作部メインで頑張るの!」
でもお前全然創作しないじゃん
と言おうとしたがまた引っ叩かれるのが簡単に予想出来たので黙っていた
「ソフトテニス部辞めたなんて今初めて聞いたぞ?何で黙ってたんだ?」
「辞めたのも今日の今日だから…」
そういえば今日の部活も「用事があるから後で行くね〜」とか言って遅れて来たな、それか
夏の夕暮れは何故か侘しい気持ちになる
圧倒的な湿気と木々の香り、虫の声、自販機、隣に五次元
全人類を詩人へ変えてしまう
五次元、藤坪は俺と別世界の人間だ
俺が居なくとも話す人、遊ぶ人は大勢いる
数奇な出会いでこうなっている、今考えても不思議で不思議で仕方ない
「ねー!今何考えてた?」
「!!」
物思いに耽っている時に突然声をかけられたのでメチャクチャビクッっとなってしまった
「あはは〜ビックリしちゃってる、可愛い」
生理現象を嘲笑う奴は許せないな
やむを得ない、首を絞めて差し上げよう!
五次元の首をめがけ、手を伸ばす…
俺は心の中で念じた
ミスってありがちな展開にならないように、慎重に、そして迅速に
首を絞める、というより喉輪を押すのだ、大柄な力士にも有効な技だ
大柄ではないがデカい五次元にも有効なはず
「…何その手?何してんの?」
行動する前に色々考えすぎて完全にバレた
「…念を、送っていたんだ…お前の減らず口がマシになるように」
と苦し紛れの反撃をする他ない
「何それ!超悪口じゃん!」
お前が言うな
五次元と関わってから、と言うか関わった瞬間から藤坪がおかしくなり、創作部に入部し、豊田部長とも出会った
良くも悪くもトリガーになったのは五次元だ
「…これ聞いてみたかったんだけど、私って友達としてじゃなくて、1人の女として…どう思う?」
身長が高い、日本人形みたいな長い黒髪、態度がデカい
色々なイメージが頭をよぎった
だが五次元が聞きたい事とは絶対違うのだと、それだけは理解できる
だからこその沈黙
「…黙んないでよ…」
コイツこんな泣きそうな声出せるんだ?という驚きと共に胸の辺りが明らかに痛くなる
「出会って間もなくと言えばそうだし、まだ分からないだろ?」
「…日数とか関係ないじゃん、関わり深い方だと思うし、どう思うかくらい答えても良くない?」
日数とか関係あるだろ
「まあ…五次元は…友達だと思ってるから女としては見れない、かな」
言った後でヤバっ!と思ったが吐いた言葉は消えない
女として見れないって結構地雷言葉として相場が高かったと思った…
だが意外にも
「そっか、質問が悪かったかな〜じゃあ付き合える?」
もっと質問が悪くなってる…
俺は…そもそも付き合うとかそういうの出来ないんだよ…
って、説明も何もしてないから理解されるはずがないんだが…
「…また明日…」
俺は敵前(?)逃亡する他ない
「え〜?帰んの?…また明日」
振り返らず帰路へと向かった
もうじき夏休みかぁ、課題が面倒だなぁ、部活とか、あるのだろうか、不安だなあ




