炎天下、予期せぬ好意
炎天下の中何周も歩いているとプールでバシャバシャしている水水しい生徒達に殺気を覚える
それにしても俺、スタミナ無さすぎる
藤坪、五次元は喋りながらも全然元気そうだ、何だよ、コイツら無敵じゃないか
ドン亀の俺のペースに合わせる必要ないのに…
「…お前達、俺のことは放っておいて先に行くんだ…」
早く終わればその分早く休めるだろうし
「そんな事言ってぇ…良いよ、本当に10周付き合うし!」
剛気!!強いぞ藤坪!
「じゃあ私はあと追加で10周付き合う!」
オークションみたいに上乗せしないでよ!!こっちが死ぬ!
「よっ、藤坪、今何周目?」
と、後方からいきなり男子生徒が藤坪に急接近してきた
コイツ、この男子生徒も水泳をやらずに走る組の1人か、見たことないが…おそらく別のクラスの奴だな
「ん、3周目だよ…」
そいつは俺の方に目をチラリとやり
「…あー、柿本か…」
と言い残し走り去っていった
なんだアイツ、バカにしたような顔しやがって
「…何あれ、感じ悪っ!アイツ、八代って奴でしょ…ウザっ」
狙ってる女がこんなちんちくりんに付きっきりだものな、そりゃあ…
「なんか最近よく話しかけられるんだよね…別に仲良くないんだけど…」
何を白々しい事を!好意持たれている事くらい分かりそうなもんだろ!
「ちょっ…ムカつくから首根っこ捕まえて詰問してやる!」
五次元はそう言って八代なる男子生徒を猛追し始めた
「待っ…やめっ…」
息が切れかけている俺には制止する余力は、ない
「あー…火鞠ちゃん行っちゃった…」
藤坪は半笑いでそう呟いたが、笑い事じゃなくない?
トラブルはゴメンだよ…
あ、もう追いついた
八代とかいう生徒もそこそこ身長ある方なのに、五次元と並ぶと五次元の方が少し大きいか…?
ここからでも聞こえるほどの怒声が聞こえる、だから五次元は怖いんだよ
出る所全力で出るって感じ
八代君、知らない人だが可哀想…
ドン亀ペースだが五次元と八代は制止している為、追いつくことができた
「藤坪ちゃんを狙ってる訳!?ってかお前、柿本君を明らかにナメたような目つきで見てただろ!キモいんだよ!」
「いや…五次元、俺はそんなに…」
バカにされたような視線に感じたのは事実だが、詰問されているのを見るのは気分があまり良くない
八代君、完全に萎縮しているし…俺ならもっと縮こまるが
「火鞠ちゃん、その辺にしてよ…」
五次元はキッ!っと鋭い目つきをこちらに向ける
「柿本君も藤坪ちゃんも甘い!こういうクソ男がつけ上がるよ!!」
怖いなぁ…なんでこっちまで怒られるんだよ…
「いや…俺は…」
八代が何かゴニョゴニョと言っている
「何?ハッキリ喋れよ」
そうやって威圧するからハッキリ喋れなくなるんだぞ…
「俺は…藤坪を狙ってる訳じゃなくて…その…柿本を…」
意気消沈した八代は再びゴニョゴニョと呟いた
「だからハッキリ喋れって、柿本君が…何!?」
もうヤカラじゃん、今後五次元との関わり方考えよ…怖いわこの人…
「俺は…柿本の事…好意があって…狙ってて……」
……
数秒だけ、時間が止まったのを感じた
「…だから…柿本の事を変な目で見てしまったんだ…それは、ゴメン……」
「あ…あぁ……こっちこそ、手荒な事して、ゴメン…そうだったんだ…へぇ〜…」
あれほど怒り狂っていた五次元が今度は完全なる無になった
俺はもっと無だ
あれほど暑かった気温が一気に下がったような気がした
八代、そこそこいい男が何故俺を……
「なあ柿本…!俺自分でも変だって思ってる、でもこれはどうしようもないんだ…だから…!」
……
再びの静寂の後五次元が気まずそうに問いかける
「…八代って…ソッチなの?」
気まずいならそんな事聞かなきゃ良いのに…俺ももう聞きたくないよ…
「いや…最初は藤坪の事が気になっていた…けど藤坪の隣にはいつも五次元、そして柿本がいた…いつの間にか柿本を目で追っていた、自分でも良くわからない、だって柿本は男のはずだろ、でも…柿本からは男の匂いがしない、それで自然と…」
自然と…じゃねえのよ
男の匂いがしない…か
「え…ヤダ…柿本君は私のものなんだけど…」
藤坪よ、柿本君はお前のものじゃないんだよ
「…分かってる、分かってるんだ…だけど俺は柿本を思い続けるだろう」
分かってねえじゃねえか
そう言って八代は走り去っていった
「…八代って誰だよ…なんで知らない男に好かれてんの…?」
「2組の奴だよ、アイツ最初は色々な女子にちょっかいかけてたと思うけど…新しい自分に気づいちゃったんだね」
八代享と言うらしい
新しい自分に気づいた男だ
これから先たびたび視界に入ってくると思うと胃が痛いぞ




