豊田真紅4
私はお笑い芸人になろうとは思ってはいない
ただネタを書くのが好きなのだ
もっと言えば私の書いたネタで誰かが笑ってくれるのを想像するのが好きなのだ
元々身近に色々ツッコミどころがあるせいでツッコミには困らないが、ボケを考えるのはとても難しい
…失礼だけど身近の恋愛話でも笑いには変えられるのではないか?
例えば藤坪さんの恋愛事情とか…
不謹慎すぎるか…
「失礼しまーす」
わ、藤坪さん
「昨日、一昨日とサボってしまい、すみません、お詫びに新入部員を一名連れてきました」
頭を下げるほどのことじゃないのに、真面目だな、いや、真面目はサボらないぞ
「いえいえ…そんな…」
などと言いつつ、部員が増えるのは当然助かる、グッジョブ!などと思っていると藤坪さんの後ろからヌッともう1人現れた
うわ、ビックリした…この女子が?
…この女子、背高いな…
藤坪さんとはまた違う種類の美人さんだ!
でも性格悪そう(偏見)
「こんにちは!五次元です、よろしくお願いします」
五次元ってあの五次元!?何何?君ら喧嘩してたんじゃないの…?
「でも私、ソフトテニス部に入っているので…あまり来れないかもしれません…ははっ…」
うわ、マジかよ…森脇第二号か…
まあ、でも居ないよりは…?
「…創作部部長の、豊田と申します、どうぞ、お掛けになって下さい…入部届の記入を、していただきます」
なんか面接みたいだね…部長さんってそういう人?
そうそう、ちょっとお堅いの
と言う陰口、聞こえてるからな!私内心メチャクチャお喋りだからな!
ひと通りの手続きが済み、何も分からないという五次元さんに部活の説明をする、そこは藤坪さん、説明しておけよと思った
「…創作部は、字の通り、創作活動を行う部活ですが…五次元さんは、何か創作したりとかは…?」
しばらく考え込む五次元さん、何かたくさんあるのかな?
「何もないですね!昔から不器用なので!」
ない!?ないなんて事あるか?
「…何か、やってみたい事などは…?」
「…あー、強いて言えば作詞とか?」
「良いですね…やってみましょう…」
作詞か、今までにない新ジャンルの開拓だ、なかなかに喜ばしい、私も大概新ジャンル故にとても、良い
「私が作詞して、バンド部の友達に作曲してもらって、一曲作りたいです!」
なるほど、音楽か、それもまた創作なり
兼部だけど1人増えたのは大きいな、ありがたい
文化祭の主戦力として働いてもらおう
しかし五次元というこの女子、造形が全然違うな
私も同じ女…人間のはずなのだが、全てが分子レベルで違っている…
髪の毛なんか艶がすごい、私も自分の髪を触ってみる
ところどころ枝毛が…なんだろう、こういう人間とは意識から何から全然違うんだな…
「豊田先輩」
「ひっ…?…は、はい、どうされましたか?」
いきなり話しかけるのはビックリするから…
藤坪さんと五次元さんが何か言いたいことがあるようだ
「豊田先輩は…推しっていますか?」
うわ、嫌な質問ですね!
推しは(二次元に)勿論いるけど、同クラスの2バカ男のせいで推しって単語あまり好きじゃないんだよ、特に直接その単語聞くのは本当に…
「えっと…どうでしょうか…私、そういうものに疎くて…」
はい、私嘘つきました
その辺メチャクチャ詳しいです
「そうですか〜…いや、私と藤坪ちゃんにも柿本君っていう推しがいるんですけど…」
ほーん?柿本?なんだろう3次元のアイドルとかかな?生憎私は三次元に興味はない
お笑い芸人は好きだけどまた違う感情だ
「推しの尊い気持ちを作品にぶつけたいんです…」
なるほど、なかなか良い意欲だ
「では、試しに1つ作詞…してみましょうか」
何でもかんでもお試しは必要だ、五次元さんとやら、お手並み拝見といこうではないか…と言っても文化祭では否応言わず作品として出してもらうが
「わかりました、よ〜しやるぞ〜」
この五次元さん、見た目の割に素直な人だな
典型的なクール系の美女だからもっと高飛車女だと勝手に思っていた
美人という点を省けば私も同じような偏見を持たれるが
生まれつき高めの身長と目つきが良くないせいで勝手にクールというイメージが定着してしまった
私は…五次元さんの超下位互換ってところであろうか、私も出来ればそのくらい美人に生まれたかったと思う、でも藤坪さんみたいな典型的な可愛いゆるふわ系も良いな、森脇のようなあざと可愛い系も捨てがたい
…諦めていますけどね
私もネタ帳にツッコミを足す
最近の手法はマニアックな例えツッコミをネタに組み込む事だ
シーラカンスか!
歯磨き粉じゃないんだから!
悪魔でももう少し気を使うわ!
など先にツッコミを書いておいて後でボケを足す手法でネタを作っている
全てのパーツが揃った時の快感は凄まじいものだ、私はこの為に生きている、そうとさえ思える
「…よし、書けました!見てもらえますか?」
五次元さんの試作の歌詞が出来たようだ
「お預かりします…」
ほーん?この子、意外と字がそんなに上手くないんだな
可愛い君へ
逃げちゃダメだよ
捕まえてあげる
ヤキモチ焼くのは君のせい
君が悲しい時は抱きしめてあげたい
君がいないと寂しい
私の事はなんでも教えてあげる
君の事ももっと教えて欲しい
途中で読むのをやめた
理由は多々ある
推しに対する気持ちはそれぞれだが私はそこまで図々しい感情は芽生えない
自信の現れか?
でもその柿本…だっけ?が芸能人だったらこの子達なら可愛いから簡単に落とせそう(小並感)
「…素晴らしいと思います…今後も、是非とも作詞を、続けていただいて…」
ごめん、ハッキリと嫌な歌詞だな、とは言えないんだ
「ワァ…ありがとうございます!私、家でも頑張って書きます!柿本君、喜んでくれるかな?」
「柿本君、気難しい人だから…実際どうなんだろう…今日も逃げられたし」
ん?今日も…?
「今だに壁は感じるよ…まあ藤坪ちゃんに比べたら私なんか新参者だから…」
「これからもっと推し活しないと…お弁当でも作ろうかな」
「あっ、ソレ良いね!」
今思えばすぐ繋がる事なのだが、私がその柿本という人物が例の低身長な男子生徒だと知るのは少し後のことだ
そして私は彼に部長を任せる事になる
本音で話をする様になる
彼が現れてから私の心境は大きく変化した
凹凸のように上手く噛み合う相手だからだ
コミュ障同士なのに




