豊田真紅3
と、まあ、こういう事が毎回続いての現在なのだ
SNSにその事を呟きたいと何度も思ったが嘘松呼ばわりされて終わりだろう、やる前から分かる事だ
そうだ、新しいネタは恋愛をテーマにしてみよう
なんか最近浮いた話ばかり聞かされるから
「豊田先輩!!」
「わっ…!!」
藤坪さんが突如現れた、私は普段あまり驚いたりはしないがコレは例外だ
「昨日はすみません…無断でサボってしまって…でも今日もサボらせていただきます…では!」
とダッシュで駆けて行った
はあ?声かければ良いって事じゃないぞ…本当、最近の若い奴は…(お前もな)
何をあんなに慌てていたのだろうか?
…男絡みか?
きっとそうだ、あの手の女子の原動力は異性以外あり得ないだろう
…藤坪さんに無くなるかもしれない部活のアレコレを強要する気も背負わせる気もないが、せっかくレジン制作という一芸を持っているのだから生かしては欲しいと思っている
でも彼女的には優先すべきは恋愛なのか、まだ高校1年生の6月だものな、まだまだ時間もあるだろう、それに嫌な思いもしたみたいだし、経験値は私なんかよりもあるだろう、どうせ私も何かあっても直接文句は言えないから多少は大目に見ようと思った
「ドア開けっぱなし…やっほ、真紅」
藤坪の小娘、ドアも閉めねえで走って行きやがった
森脇が来た、久しぶりに部活で顔を合わせる気がする
「森脇さん、今日は、生徒会の仕事、無かったのですね」
「あー、毎年だけど文化祭の前後は特に忙しいけど、たまには何もしない時だってあるよ、他の連中も部活あるんだし、ていうか真紅、毎回言ってるけどいつまで敬語で喋るんさ…もう3年だよ?もう良くない?」
他人と話す時に敬語になるのは発作みたいなものだ
何というか、自信ないくせに自己防衛本能が働いているんだろうな、と
もちろんネットや家だと普通に口は悪い方だ
完全な内弁慶である
このままだとこの先もっと苦労するのは目に見えている
「まあー、良いけどさぁ〜、で、藤坪さんは?居なくない?」
「藤坪さんは、つい先ほど、部活を、休むと言って走って行ってしまわれました…」
「えー?そうなん?確か入部してから毎日来てたんでしょ…?あー、分かった、さては例のチビ助がらみだな?」
昨日なんか無断でバックレたからな
例のチビ助ってあの?藤坪さんが好きなあの男子生徒の事か?
というか森脇も150cmあるかないか分からないけど小さい方だろう、よく人の事言えるな
「昨日さぁ中庭で藤坪さんとチビ助、それに五次元さんの3人が一緒にいるの見ちゃったんだよね〜」
五次元ってあの噂の有名女子の事か…?なんでもモデルみたいな美女だと言うが…どんな組み合わせだ?
「なんか、藤坪さんと五次元さんは向かい合って喧嘩してるような雰囲気だったけどチビ助は近くで座って見てたって感じだったな」
藤坪さんもそこそこ人気者だが、そこに五次元という対抗勢力が現れたのか?なんか龍虎対決みたいだな、で、なんでチビ助は近くで座ってたんだ?
「途中で小林の弟が乱入して解散したって感じだったけど、一体なんだったんだろうね?」
いや私は知らんよ、見てないんだから
あと小林に弟居たのか…
「…実は藤坪さん、昨日も部活を、お休みされていまして、その事も、関係しているのでしょうか…?」
何か深い訳があるのだろう、例えば…分からんけど
「絶対そうだと思う、藤坪さんも、なんであのチビ助の事が好きなんだろうね?もしかしてあのチビ助も只者じゃないのかも…?」
あら?理由聞いてないんだ?
チビ助は多分ただの私の同族なんだよなぁ
性別は違えど顔がいい奴に囲まれてるシチュエーションも同じだし…まあ、こっちの方は恋愛感情はないのだが
「まだあの子たちも1年生だもんねー、良いなぁなんやかんやで楽しそうで、私達も1年の頃は楽しかったよね〜」
…色々あったなぁ
文化祭絡みの事を除けば部活動はワクワクして楽しかった記憶がある
入学当初の私は部活に入る気は無かった
ネットゲーム、推し活、お笑い視聴及びネタ作りは別に家でも出来るからだ
ゲーム部やお笑い部があれば是非とも入部したかった
がそのような部は存在しない為諦めた
そんな私に声をかけたのが当時の創作部部長である横浜先輩である
彼とは小学校、中学校が同じだった
昔はカッコよくてモテていた記憶があったのだが…久しぶりに会った彼は太っ…恰幅が良くなっていた、全然気づかなかった
高校に入学した後に二次元に大ハマりしてしまい、ずっとやっていたバスケを辞めた途端に別人のように肥えてしまったそうだ
「帰宅部?そんなのつまらんだろ!創作部に入りなさい!豊田のやりたい事は全部ここで出来る!」
と半ば強引に入部したのだった
嘘つき、ネトゲは出来ないじゃん…
案内されるがままに私は椅子へ腰掛ける
当時の創作部は3年生だけで5人もいた、これで全員
横浜部長を含めて男子3人、女子2人の編成だ
2年生はおらず
「俺らが卒業したら創作部潰れちゃうから、豊田の代で頑張ってくれ、来年からは君が部長だ!」
と無責任な押し付けをされた
潰れるかもしれない部活の部長なんてそんな…
そもそも創作部って何をする部活なのだろうか?見たところ全員何も作ってないような…?
「…あの、創作部というのは、何をする部活なのでしょうか…?」
恐る恐る質問をした、ろくでもない回答が返ってきそうだと思ったからだ
横浜部長は漫画を読みながら答える
「ん?まあ、スマホゲーやったり、駄弁ったりしてるかな?あとは文化祭の時の装飾の手伝いをするくらいかな」
ほら見ろやっぱりだ
「…私、電車の時間があるので、これで、失礼します…」
お家帰る!バカどもめ!時間の無駄だ!
「ちょっ、おまっ、待てい!!」
いちいち言い回しが嫌な人だな…昔はそんなんじゃなかったのに
「よく聞け豊田、ここはオタク達の憩いの場なんだぞ?君にも好きなアニメや漫画くらいあるだろ?でもクラスの人には話せない…そうだろ?」
いや、アニメどころか、日常会話も出来ないレベルのコミュ障ですが…
「ここにいる全員はアニメ、漫画を初め、あらゆるオタク文化に精通している、所謂エキスパート達の集まりなんだ!選ばれしエリート集団なのだ!」
こんなにカッコつかないエリート集団ってあるのか…
全員がドヤ顔をしている、無性に腹が立つ
「…ここではオタクを隠さなくても…ええんやで?ありのままの姿でええんや」
うわぁ…
言葉にはしまい、だけど伝わって!この不快感
「言っておくが俺らも創作はするぞ?俺は小説、石田はプラモ、前田はイラスト…」
今遊んでるだけじゃん、今やってや!
後ろの方でガラリと音がした、誰かが入ってきたようだ
「失礼しまーす!」
振り向くとそこにいたのはとても小さな可愛らしい女子生徒だった
「1年の森脇って言います、創作部に入部します!」
森脇、今の副部長(幽霊部員)だ
クラスは違うが彼女とは同じ1年生ということもあり、よく話した
話した、と言っても私から口を開くのは今も昔もほとんどないが
彼女はイラストがとても上手だった
見せてもらう度にその画力に感嘆するのだった
彼女は底抜けに明るかった
そのお陰で他の部員ともコミュニケーションを取ることができた
部長はともかく、その他の人達なんか怖いもん
さて、入部したは良いものの、私は何をしようか
お笑いのネタは…ダメだよな…
「藤坪、何を作ろうか悩んでいるだろう?その悩みも創作だ、考えることこそ創作そのものなのだ」
意味わかるようなわからんような…?つまり私はここでお笑いのネタを書けば良いのか…そういうことだろうか




