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豊田真紅1


豊田真紅

捻った読み方はせずにそのまま真紅しんくと読む

それが私の名前である



高校3年の年、困った事に私の所属している創作部は同級生の森脇、私の2人だけだ

ところてん方式で私が部長を務めているのだが、去年も部員が1人も入らず、今年は部活存続のピンチだ


今年は5人くらい入部してくれないか、と淡い期待を胸に新学期を迎えた


「真紅、今年は誰か入ってくれると良いね…」

活動場所である1年棟の教室で副部長である森脇が私と同じ期待を口にした


「今年で終わっちゃうのかね、創作部…1年間だけは待ってもらったけど、今年は…」


生徒会役員である森脇の計らいで去年は存続の危機は逃れられた、でもかなり活動は厳しかった


大好きなお笑いのネタを心置きなく書ける私の居場所、それが創作部


何も分からず入部した1年生の時、当時の部長が

「自分のやりたい事を考えるのもまた創作」と熱(苦し)く語ってくれた、そのおかげで今がある


ガラリと扉が開く


キラキラした可愛らしい女子生徒が現れた


何かいかがわしい事をする為にこの教室を空き教室だと勝手に決めて入ろうとする生徒が結構いる

この生徒もその口か

どうせすぐに出ていくのだろう


「こんにちは、私1年の藤坪零華って言います、入部届を持って来ました」


入部?ここはあなたのようなキラキラした生徒に似合わない殺風景な場所だ…

入部って…本当なのか?


「あの…部長さんって…?」


私だ


「は…はい…入部される方ですか…?」

当たり前だろう、さっき本人が言っていたのだから

私は白々しい発言をした

作法は分からないが藤坪と名乗る女子生徒から入部届を受け取る


受け取ったのは良いが、どうすれば良いんだっけ?


「これ、顧問の林先生に渡すんだよ」

森脇がナイスフォローをしてくれた

私が渡しに行くのか?ダジャレではなく


「先生、職員室に居ると思うから」

森脇が代わりに行ってくれないか、と思いながらも私は職員室は向かう

職員室の場所は知っていてもなかなか入る機会がない、かなり躊躇したがこれも新入部員を迎える部長の務めである、と自分を奮い立たせ、務めを果たして無事創作部へと戻った


林先生には

「へえー、新入部員入ったんだ、良かったね」

と言われたが何だかその言葉に無性に腹が立った

他人事かよ、と


「私、こういう物を作ったりしてて…」

と藤坪さんは赤青緑の宝石のような玉を見せてくれた


「凄い!これレジンだよね?」


森脇は目を輝かせていた

私は驚いた、レジンで何かを作る人がいるのは知っているがこんなに美しい物を高校生が作れるのかと素直に感心した

拍手をしたい気分だがそんなキャラではない


藤坪さんはモテるだろう、オーラがある

この輝きは他の部活に生かすべきだろうと思ったが入部してくれるのはとても喜ばしいので野暮な事は言うまい

私のような地味な女子とは正反対だ


…でもきっと彼氏とか出来たらそんなに部活に来なくなるんだろうな、そして廃部、何だか少し先が見えた気がする


本音を言えばあと2人は欲しいところ、誰か来ないかと待ち詫びたが



2ヶ月経っても誰1人として来る事はなかった


終わる…終わる…私の創作部が終わる…

6月のジメジメした空気が本当に心地悪い



この前藤坪さんが同じくらいの背丈の男子生徒と歩いているのを見た

顔を見れば分かる、藤坪さんはその男子生徒にホの字だ

人の好みだから口出しする筋合いはないが、もっと選り好みは出来ただろう、別にその男子生徒が悪いわけではない、可愛い系で母性本能をくすぐるような雰囲気だ

だけどこの男子生徒…あまり藤坪さんと目を合わせないし、そっけない感じ…何だこいつ、と思った


よほど女慣れしているか、超コミュ障か、そのどっちかだ


そんな事はどうでも良くて、私は文化祭までにお笑いのネタ作りと展示の段取り部誌の発行をしなければならない、ネタは2ヶ月前には作っておかねばならない


とにかくやる事が多すぎるのだ

去年の文化祭は地獄を見た

だから今年は早めに準備を進めてはいるものの、当然全部は終わらない


今年はどう笑わせようか

私はネタを提供するだけなので、演者、芸人役の生徒がどれほどの力量かにも懸かっている

私の創作とはお笑いなのである



森脇は生徒会の仕事がありほとんど部活には来ていない、もはや幽霊部員、唯一の新入部員の藤坪さんは最近よくボーっとしている

揃いも揃ってやる気あるのか!と内心叫ぼう


「豊田先輩…」


いきなり話しかけられた、ビックリした


「何でしょうか…」


「先輩は誰かを好きになった事って、ありますか?」


何だその質問は…保育園の時は手紙を交換し合ったし「大人になったら結婚しようね!」と誓い合った仲だったが小学校で疎遠になり、何事もなかったかのように記憶から消えていったタカユキ君の事か?そうなのか?

なんて、藤坪さんにそんな話をしても仕方ないし、あれはノーカウントだから


「ありませんが…」


これが正解だ


「そうですか…実は私、好きな人がいまして…」


私に聞いた意味あったか?

あの例の小柄な男子生徒の事だろう、知っている、顔に書いてあるから


「それは…どういう方でしょうか?」

知っているけど一応聞いておこう


「彼は今、同じクラスで隣の席です、彼とは中学2年生の時に出会いました、同じクラスだったのはその時だけですが…」


これ、長くなるパターンなのかな?


「当時の彼は今よりも暗くて、絶対に人の目は見ない、無口な人でした」


まるで私みたいな奴だな


「私、別に何の気無しに彼に話かけたんです、可愛いし、でもそっけない態度でした、私が出会った事のない人種だったから、何だこの人は、と、その程度に思っていました」


思春期真っ盛りだし、コミュ障なんだろ、ほっといてあげてくれ


「その時点で彼の事が気になっちゃったんです、色々知りたくなって、毎日話しかけました」


向こうも何だこの人は、と思っただろう

大概藤坪さんも変わった人だ


「少しずつだけど、打ち解けた、そんな気がしました


そしてその真っ只中、私は当時付き合っていた彼氏に浮気をされました…」


うわ、いきなりパワーワードが出てきてしまった…

ていうか話長いな、やっぱり


「私は浮気ばかりされる性分なのか、彼で3度目でした…

問い詰めたら、お前ダルッ元々付き合ってねーし、って…」


ひどい話だ…男運がないと言うか、明らかに見る目がないんだろうけど


「後日失恋の傷を抱えたまま登校すると学校のあちこちで、藤坪は誰とでも付き合う尻軽だ、彼女がいる男にも平気で手を出す、という噂があちこちで流れました、犯人は元カレとその周辺でしょう、自分の事を棚に上げて、私には覚えのない作り話を拡散したんです…」


本気で話長いな…でも惨い話だ、それが中学生というのが惨さを倍増させている


「皆、コソコソ陰口を言ったり、そっけなくなりました、中には告白してくる男子も…失意のどん底と言うのでしょうか、もう消えてしまいたいと思っていました、でも彼は…可愛い彼だけは、藤坪さんはそんな人じゃないでしょ、どうせ作り話なんだし、気にしなくて良いんじゃないの…って…」


浮気され、フラれ、彼氏の都合の良いように噂を流され、周りからも見放され、地獄だろうな、あの小さい彼は大した器じゃないか


「…その言葉を聞いてキュンって来ました、全身に電撃が走りました…告白してもどうせ断られるのは分かっています、だけどずっと側にいたい、そう思って同じ高校に入学したんです」


まあ、確かに、話を聞く限りではその小柄な彼は十中八九告白を断るだろうな…

え?同じ高校に入学…?え?


「あの…藤坪さん、同じ高校に、入学って言うのは…?」


「え?ですから、同じこの学校に入学したんですよ…?」


んな事ぁ分かってるんだよクソガキ!


「…えっと、そうではなくて、彼の進学先に合わせた、という事でしょうか…?」


「はい、そうです…進学先は人伝に聞いたんですけどね…私、本当ならもっと偏差値が高い所に入れるのですが…」


うわキッショ!!

偏差値低い高校で悪うござんしたね!?嫌な女だな、クソガキ!


「同じクラス、隣の席と、奇跡続きでしたが、今だに進展が何もなくて…きっと相手が困ってしまうから好きとも伝えられず…爆発寸前なんです、最近」


藤坪さんって見た目によらず、結構重い女だ…聞くだけ無駄だった、私のクラスでも藤坪さんは話題になるほどの有名人だというのに…

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