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雷神の慈愛と不穏なメッセージ



「…色々、大変だったよね…ごめん、ごめんね…」


髪を撫でられるのがこんなに心地良かったのか、今までのフラストレーションが頭から抜けていくようだった


俺は誰かに心配して欲しかったんだろう


怒涛の数日、その間出会う人々は思い思いの動きをし、それに巻き込まれる形になった


恨むほどの事ではない

だけど心は疲労していた


人に触れる機会はあまりなかった、ましてや異性に対してなど皆無に近かった


「私、藤坪ちゃんが羨ましかったんだ…」


藤坪が…?

分からない、俺からしたら見た目こそ違えど他と頭幾つか飛び抜けている輝かしさがあると思うが

五次元も藤坪も他人が憧れる人望は全て持っている


「…私はいくら好きな人相手でもあんなに大胆に行動出来ないなぁ…嫌われちゃうかもしれないし」


羨ましいって言ったじゃん…少し皮肉っていらっしゃる?


「好きが先行して本能的に行動出来ちゃうんだもん、良い事ばっかじゃないけど必要な事だよ…相手が柿本君だったからあまり良くないと思うけどね」


藤坪はある日から急に性格が変わったかもしれない

どちらかと言えば大人しめな印象だったのだが


「人を好きになるって、怖いね、私は相手に迷惑をかけたくないよ…」


それもこれもあの日からだ

あの日から全てが変わったのかも知れない

原因は五次元でもあり藤坪でもあり、俺でもある


五次元の腕の力がギリギリ苦しくない程度に強くなる


締め殺されるのではないかと不安になった


「私、小学4年生くらいからかな?だんだん他の子よりも身長が高くなってきたんだ、卒業する頃には1番身長あったのかも…どこにいても目立って、デカ女呼ばわりされて、本当に嫌だった」


俺と真逆だよな、本当に小さいのも目立つぞ、男なら



「今もハンデだと思っている、その点藤坪ちゃんの身長は平均くらい、そんな悩みないもんね…だから羨ましい、負い目を感じないで人と接せるんだなって…」


「…意外と五次元も卑屈なんだな…俺ほどじゃないにしても…」


「そうだよ、全然自信なんてない、いつも人の顔色ばかり伺っている…だから柿本君には嫌われたくないんだ…」


「いや…俺は…」


「…言わなくても大丈夫だよ…でもちょっとだけ、あとちょっとだけこのままで…」


俺はまだ誰かを好きになったり嫌いになったり出来るほど心が整理されていないんだ

分かった、もう少しだけこのままで…






その夜藤坪からメッセージが届いた

そういえば帰ったら連絡する、と言っていたな

帰るの遅くね??まあ、その辺は誤差の範囲か


「入部してくれてありがとう!

材料揃えていたらこんな時間になっちゃった…


あとごめん、懲りずに作詞しちゃったから良かったら読んでね!



考えてみたって分からない

君の元にどうしたら辿り着くのか

もうとっくに気づいていたんだ

届かないあの空の雲ように、掴めないんだ

私は綿毛みたいにフワフワと宙に舞おう

乗り越えなきゃいけない事もたくさんある

物語を始めるのには書き出さなくちゃいけないんだ


会いたいって伝えるために、あなたの為に

詩に書いたようにまとまった気持ちじゃないけど信じ

ている、いつか君に届きますように」





材料揃えるのも大変なんだなぁ…


って、なんか分かんないけどこの歌詞結構良い感じじゃない?

素人だから一概には言えないけど…


「その詩も作品として取っておけば?」と返信した


藤坪も結構クリエイティブだね、余計な事ばっか考えてないでそういう事に熱中して欲しいね


五次元との会話で藤坪に対して若干の嫌悪感はあるんだけど

近頃の藤坪の野性的な面を見過ぎだからだろうか?


五次元は母性的?そんな言葉ないか、必要な時に必要な事をしてくれる、みたいな…なんだか考えがまとまらないが、そんな感じかな


互いに身長の事で悩んできたからなのか、多少の仲間意識はある



創作部入部について母親に話したところ

「中学3年間帰宅部だったのにいきなりどういう風の吹き回しだ?やるならちゃんと3年間やれよ、途中入部とか関係ないからな」


的なニュアンスの事を言われた


見学だけなら良いが、入部を誘われたらそりゃあね…



後日登校すると明らかに疲れ切った藤坪らしき女子が机に突っ伏していた


「藤坪…具合悪いのに登校したのか…?」


藤坪は声に反応し、ゆっくり、ゆっくりと体を起こした

うわ、髪ボサボサ、目もワンサイズ小さくなったような…


「…柿本君…おはよう…ずっと作業してたら寝不足で…えへへ…」


「作業って…レジンか??」


「そうだよ…柿本君をイメージした物を作ろうと試行錯誤してたら3時間しか寝てない…」


ナポレオンじゃなければ許されない所業だ


「確かに3日とは言ったけど…追い込むほどやらなくても良いだろ…」


「ダメだよ…ちゃんと約束は守らないと…それに自分からやった事だから…」


弱々しい声だなぁ…大丈夫かよ、まだ1時間目も始まってないんだぞ、授業に支障出るだろ…


「帰った方が良いんじゃない?」


「嫌だ!」


凄い眼光だ、怖…


結局その後もフラフラの状態だった


帰れよ、マジで、もしくは保健室行け!と何度思ったか…



廊下を歩いていると知らない中分けの男子生徒に紙を預かった

「藤坪と仲良いよな?藤坪に渡して欲しい」

とだけ言われた


ラブレターかな?相変わらず机に突っ伏している藤坪の頭に受け取った紙を置いてみた


「…んー…もう…何…?」


声に気力がない


「いや、紙、中分けの男子生徒に、藤坪に渡してくれって」


「…はぁ…中分けの男子生徒なんていっぱいいるよ…それに柿本君は伝書鳩じゃないのにね…」


実際何度か伝書鳩してるぞ、藤坪だったり、五次元だったり…何度も何度もな


って違う、俺は何をしに教室を出たんだ…


アレだ、中分けに紙を預かる前にデカい短髪の男子生徒に「これ、五次元に渡してくれ」って言われて紙を預かったんだ

そうだよ、俺は結構伝書鳩してるんだよ


んで五次元が教室にいないもんだから、探しに校内を散策しようとしたんだ、本当は五次元の机の上にでも置いておこうかと思ったがクラスの連中に見られるのが嫌だったから直接渡そうかと思った次第だ


最近少しだけ校内をウロつけるほどの気力に溢れているし、お届け物は出来るだけすぐに渡したいんだ


ていうか何が書いてあるんだろうな?もちろん覗き見なんてしないけど


なんて思っていると廊下で五次元を発見した、やはり目立つ

でも4人で編隊組んで歩いてやがる…2人以上いるとコミュ障センサーに引っかかって無理だな…


後で渡そう

すまん、デカい短髪の男子生徒、君の想いが届くのは少し先になりそうだ


「あれ?柿本君、何してるの?」


敵のレーダー照射を受けた、回避する!

急旋回し、教室へ戻ろうと試みるも


「なんで逃げるのよ」


ダメだ!

敵が急速接近

回避失敗だ


「これ…デカい短髪の男子生徒から、五次元にって…」


受け取った紙を手渡す


「もしかしてコレを渡すために私を探してたの?」


コクリ


「偉いねぇ〜」


頭をワシャワシャと撫でられる

「俺は子供か!」


「でも、直接来てくれたら良いのにね、いたいち柿本君を介して、意味わかんない」


ね、その通りだと思うよ




下校時刻になった、藤坪は後半になるに連れて、気力を取り戻したようで


「…よし、柿本君、部活行こ!」

とやる気いっぱいのようだった


俺は飲み物を買って、トイレに行くから後で向かうと伝えた


「…順番おかしくない?私も着いていくよ」

と言われたが、うるせえ、俺を置いて先に行くんだ!と無理矢理引き剥がした


本当のところ、校内に生徒がたくさんいる状態で藤坪と一緒にいるのをあまり見られたくないからだ


また色々他の男子生徒に頼み事やら何やらを押し付けられそうだからな…



少し時間稼ぎをしたら、さあ2度目の創作部だ

入口に貼ってある創作部の紙、なんとかならないのかな、質素にもほどがある気が…

扉を開けると

豊田先輩…しかいない

相変わらず同じく3年の人は生徒会か


「あれ?今日は先輩だけですか?藤坪は?先に来てると思ったんだけど…」


五次元はソフトテニス部で来れないと事前に聞いていた


「柿本さんが、来る少し前に、美術部の方に行きましたよ…借りたいものが、あるらしくて」


ほーん、そうなんや

藤坪の机の上には様々な小さいボトルや、なんだかよく分からないビーズみたいな物がたくさん置いてある、コレは、レジンの材料かな?


あ、そうだ、先輩に昨日藤坪が送ってきた詩を評価してもらおう


「…先輩、コレ、藤坪が昨日送ってきた詩なんですけど、なかなか良くないですか?」


その画面が表示されたスマホを手渡す


「…お借りします」


なんでこんな丁寧なのに文章だと荒ぶるのかな!これはずっと思い続けるぞ!


「…藤坪さんも、多才ですね…私は、お笑いのネタしかやってこなかったので、羨ましいです、いい詩ですね…」


もう読んだんか早いな

先輩は先輩でお笑いネタ書くのは珍しいけど…褒めてもらえるなんて、凄いじゃん藤坪、


「…すみません、この詩、もう少し見てもいいですか…?」


あれ?なんかさっきまでと打って変わって表情が険しくなったような…?


「ええ、俺の作品じゃないけど…」


なんだろう、やっぱ無し!クソみたいな詩だな!節穴野郎が!とか言うのかな、メッセージで


豊田先輩は聞こえるくらいに息をフゥーッと吐くと神妙な面持ちでこちらを見る


「…柿本さん、これ、この詩、しっかり読みましたか…?」



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