柿本、入部するってよ
「恋の神隠し」
作詞:Himarin⭐︎、れいか
あなたが去り
幾日経ったか分からない
思い出す日々に枕濡らす
隣にあるはずの温もりも消えてしまった
二人で歩んでいくと思っていたのに
知らぬ女の影
幾度恨んだだろう
あなたよりも影を知らない匂いを
刺し違えても構わない
爆発した感情
私は捨て駒
「怖い怖い!私情が強いんだよ!!これ書いたのほとんど藤坪だろ!ていうかなんでいつも一番だけなんだよ」
「そうだよ、ほぼ藤坪ちゃんが書いたんだよ、恋愛系の歌を書きたくて相談したらささっと書いてくれたんだ」
多少は藤坪の方が文才あるじゃん、五次元は委託しただけかよ…どこに手を加えたんだ…?
これだけ過去の恋愛に恨みを持っているのに、普段はなんで荒ぶらないんだ?達観したって感じ?でも引きずってはいるんだな…可哀想に…
「でも素人目で見たら結構良さげな感じだぞ、藤坪は詩を書けばいいんじゃないか?」
「絵の方が描きたい、いつか自分で柿本君を描けるようになるんだ!」
俺描くの!?写真一緒に撮ったじゃん!それじゃダメなの?
「レジンの腕前があるんだから、例えばその…俺をイメージしたアクセサリーとか作るのじゃダメなの?」
自分で言うの物凄く抵抗あるな…
「あー!しまった!その手があったか!」
頭を抱えて天を見上げる藤坪、びっくりした…
「あー…好きって意味で作ったやつは渡したけど…そっちも作れば良かったなぁ…失敗したなぁ…」
髪をグシャグシャにしながらブツブツと何かを呟いている
あーあ、髪がグッシャグシャ…微かにシャンプーなのか、特有の良い香りがする、やっぱり良い女は身だしなみこだわってるんだね…大変だ
あ?
豊田先輩からメッセージだ、てか目の前にいるんだけど…でも直接は言えない事だろうな…
「藤坪さんの作詞の才能を瞬時に見抜くとは、お見事!!次は五次元さんに何か提案してみてちょうだい!」
コレ本当に先輩が打った文章か?全然違うじゃん!
えーっと…
「五次元には何が出来るかわかりません…なので雑用でもやらせようと思います」
「雑用wそんな事したら学校中の男子からボコボコだよw
参考までに
私が一年だった時の先輩は小説、プラモデル、写真、でもやっぱり一番多かったのはイラストだったね
五次元さんに描いてもらった事あったけど
あっ…察し…だったんだ、柿本さん、頼むw」
「わかりました、何か提案してみます
というか先輩、メッセージだと口調違いますね?」
「私昔から引っ込み思案だったから、直接だと上手く話せないんだ、メチャクチャ気使って喋ってる!」
「そんなに気を使わなくても…気持ちは分かりますが、せめて後輩相手には普通で良くないですか」
「あー、ダメダメ、もう全員にあんな感じだから今更引っ込みがつかないわ、マジ人と話すの苦手だわぁ〜」
目の前の豊田先輩はスンっとしている
あんな文章入力してるなんて誰も思わないだろうな
五次元の適正なんて分からないな、というかそもそもなんで創作部入ったんだ?やっぱり作詞がしたいから?まあ、でも自分のしたい事をするのが一番なのかな…
「五次元よ、指令を下す!お題は俺、3日で何か完成させてみなさい、なんでも良いぞ」
「へ?どうしたのいきなり?」
そりゃそんな抜けた顔になるだろうな
でも先輩の頼みだから…
「いや…今までみたいに恋愛をテーマにした作詞も良いんだけど、五次元なら俺をテーマにしたら何を作ってくれるのかな…って思って…」
言ってる本人はとてもとても恥ずかしい…もう、真っ赤よ
「…分かった!何か考えてみるね!」
おー、ニコニコじゃん
良かった良かった
「って何してるんだよ…!」
腕を絡めて来やがった
なんとも言えない体温と感触がなんとも言えない気持ちになる…
「柿本君にまつわるモノなら、本人をよく観察しないと…何も思いつかないかな〜」
行き先不明の俺の左手は五次元の太もも付近に誘導される
コレはダメだ!慌てて握り拳を作る
「あー、グーじゃなくてパーにしなきゃいけないぞ?」
正面の豊田先輩は無表情でこちらを見ている、無表情というよりは引きに近いような…?
「わッ…わッ…!」
今度は後ろから両手が伸びてきた
「藤坪!お前もか!」
後ろからの抱っこちゃん
「私も柿本君のイメージのモノ作るなら、匂いとか、肌で感じないと分からないし!」
結構な力でホールドされていて身動きが取れない
全国の五次元、藤坪ファンの皆様、私は今こういう状況です、ですが不本意です、大変申し訳ございません
心の中でそう呟いた
柔らかさと良い香りに包まれたら誰だっておかしくなるだろう、でも俺はそのギリギリの瀬戸際で…
「オラァ!!」
「わあ」
2人を弾き飛ばした
「わあ凄い、やっぱ男の子だね、力あるね」
オメエ感心してるのと違うぞ、マジで
ただでさえ暑いんだ、これ以上余計な体力使わせないでもらえるか
「…とにかく、2人は3日で形にするんだぞ!良いか!」
「「はーい」」
全く、油断も隙もあったもんじゃないな、好き勝手俺に触りすぎなんだよ…俺って結構なめられてない?
また豊田先輩、メッセージ送ってないで少し止めるとかして欲しかったな!許すけど!
「流石だね!お題を推しにする事によって2人を纏めたね!…でもイチャイチャし過ぎ…怒
ハーレムだね??眩しくて見てらんねえよ!」
アンタ思いっきりこっち見てたじゃん、ポーカーフェイスが過ぎるぞ!!
「見てないで助けてください…」
「無理無理、あの2人を止めてファン達を敵に回したら勝てないし!
あとさっきから手が止まってるね、イラスト上手いから色々描いてもらおうかな、部誌に載せるイラスト何枚か描いてくれない?」
「俺まだ入部してないですよ…」
豊田先輩は机の下から何かを取り出した
紙?
あっ、俺の机の上に…
「…柿本さん、こちらが、入部届になります、ご記入をお願い致しますね…」
えー…
どうしよう…
「…今の時間でしたら顧問の先生も職員室に、いると思いますので、記入していただけたら、私が提出して参ります…」
先輩は良いけど、出来れば雷神風神コンビから避けたいんだけど…どっちかが部長、副部長になるんだろ…コイツらの下で活動するの嫌だな…
お約束の豊田メッセージだ
「はよ書けや!
私が卒業して部長任せられるのは君しかいないんだ!
部長にと思っていた藤坪さんは柿本君を推しにしてからか、急に気の抜けた人形みたいになって…汗
部誌とか展示どころの騒ぎじゃないのよ!あと3ヶ月しかないんだぞ!?
その責任を取るって形でどうか、頼む」
おいおいおいおい、なんだそれ!責任転嫁もここまで来たら清々しいわ
「柿本君、お願い!一緒に何か作ろ?」
うるせえ雷神(五次元)
「ずっと一緒にいようよ〜ねぇ〜」
黙れ風神(藤坪)
俺は息を思いっきり吸って筆圧気持強めで名前などを書いた
「お願いします…」
豊田先輩へ記入した入部届を渡した
「…はい、確かに、承りましたでは…私は顧問の先生にお渡しして参りますね…では」
静かに席を立ち、教室を出ていく先輩
なんであんなにメッセージだと変なキャラなのか分からないくらいお淑やかに見えるんだけど…
しばらく慣れそうにないな…
「やったぁ!推しが入部してくれた!」
「尊い尊い!!」
うるさいねぇ…っていうかコイツら毎日部活来るのかな?藤坪は俺が知っている中では2回サボってるけど、五次元は?ていうかいつ入った?
「五次元はいつ入部したの?」
「2週間前かな、藤坪ちゃんに誘われて」
2週間、結構最近なんだな
「でも残念ながら創作部には全然来れなくて…ソフトテニス部がメインだから…今日はたまたま来れたんだよねえ」
兼部か!
ていうかソフトテニス部も何回かサボってるな!運動部の事は分からんが、なめるなよ!
でも雷神風神に囲まれて変な気持ちにならなくて済むのか…
俺も何回かはサボろっと、早く帰って自販機を楽しむのだ




