柿本、初めての創作部
藤坪、五次元は「柿本ファンクラブ」なる地獄みたいなコミュニティを設立した
ファンとして活動をするそうだ
なんだそれ?
そうこうしているうちに幾日か経過し、蒸し暑い季節になってしまった
こういう時室内系の部活に入っていれば下校まで暑さを凌げて良いな、と思ったそんな矢先
「創作部に見学に来ない?」
と藤坪から誘われ、やる事もないので承諾した
創作部ってなんだ?なんか作ったり描いたりするのか?それだと美術部もあるもんな
レジンアーティスト?の藤坪もいる事だし、手芸メインみたいな感じか
見学は良いけど、俺何も作れないぞ
見学だから見てるだけで良いのか
創作部の活動場所は下駄箱付近の空き教室、何回も通りかかってるな、中身までは見ていないが
藤坪に置いていかれたので一人で向かっている所存である
「ここだね」
粗末な紙に粗末な字で「創作部」と書いてある
俺は躊躇なく扉を開けた
「…こんにちわー」
ここは、教室と同じだな、机は横並びに数個置いてあるだけ
…粗末な教室って感じ
「柿本君♡」
「おーい柿本君〜!」
中には藤坪と五次元、それにもう一人、軽く会釈をしたポニーテールの女子が座っている
え、部員これだけなんだ
…ん、五次元だと?
「五次元、そこで何してるんだ?」
「私も創作部に入部したんだよ」
この粗末な空間に似合わねえ〜
そんな事言ったら全員似合わないか
「ここ座って座って」
藤坪は五次元との間の椅子に座るよう促す
大人しく座るよ、良い匂い
慣れないなぁ、この擬似ハーレム…
「この人は3年生で、創作部部長の豊田先輩だよ」
この二次元観点から見ると弓道部っぽい人が部長か、こんな事思ったら失礼だが見た目は正直タイプだ、ザ日本美人って感じ
ポニーテールなのが良いのかな、なんか青春って感じ
「豊田です…下の名前は真紅って言います…よろしくお願いします…」
なんだなんだ?ちょっと気の強そうな見た目なのに、このか細い声は…!?ギャップギャップ!
それに真紅って…名前!?いや、名前に驚くのは凄く失礼だからもうやめよう
俺もなんか話さないと…そうだな…
「初めまして、見学に来ました柿本戒司です、今日は色々勉強させてもらいます」
無難に自己紹介出来ただろ、上出来だな
「柿本さん…何度か校内でお見かけした事があります…藤坪さんと、五次元さんとよく一緒にいますね…お二人から、よくお話を伺っています…推しなんだそうで…」
敬語キャラなの!?
っておい!関係ない人に色々言うんじゃねえ!
俺は2人を睨みつけた
ニヤニヤしてやがる
きぃっ!
「推しなんて変な話ですよね〜すみませんね、コイツらが訳のわからん事言ってて〜」
「今の柿本さんのコメントだけで、お二人が柿本さんを推される理由が分かった気がしますよ…」
「と言いますと…?」
「藤坪さんと五次元さんは校内でもかなり人気と言いますか、憧れの存在です、高嶺の花です、その方達にその物の言い様…流石という他ありません…」
五次元はともかく、藤坪もそんなに位が高い人間か…!
あと俺、なんか嫌な奴だと思われてるのか…?高嶺の花に失礼な口を叩く無礼者だと、豊田先輩、あなたは俺にそう言いたいのですか!?
「…私の伝え方が少し悪かったようです…大体の人間は憧れの存在に萎縮して畏まってしまい、本来の自分を見失いがちですが…柿本さんはそうではなく、ありのままでお二人に接する事が出来ているのだと思います…」
確かに確かに、実際初対面だし、ちょっと心揺さぶられている豊田先輩には萎縮気味ではある…
彼氏とかいるのかな、いるだろうなぁ
グググ…
「いてててて…!痛えな!」
藤坪のやつが思いっきり俺の足を踏んづけている
「…柿本君、さっきから豊田先輩の事いやらしい目で見てるよね…」
コイツの前じゃ何も考えられないじゃん!別にいやらしい目では見てないわ!
もし俺がイケイケの性格だったら完全にイッてるけどさ
「色々変な事考えるなら個別のハードなファンサしてもらう事になるけど…良いの?」
怖っ
藤坪もこんなイカつい表情出来るんだな、ちょっとカッコいいと思ったが冗談ではなく足が痛い
「分かったから…その足どうにかしてくれ…!」
「うん、分かった」
足をどかしてくれた、痛かった…
次は俺も何か反撃してやろうかな、何が良いかな
体に触れる系はアウトな気がする
ていうか創作部って何をしているんだ?
見たところみんなペンしか持ってないけど…あと紙か
「それで、創作部は何を作っているんだ?なんか、活動的なモノって何?」
「主な活動は…文化祭の時の展示と部誌の作成ですね…」
ほーん、そうなんや、部誌って部員が全員で作るアレでしょ?絵とか詩とか…
「藤坪さんは…絵を描いていますね、五次元さんは歌詞を書いています」
藤坪はレジンのアクセサリー作れよ!と思いつつ藤坪が描いたであろう絵とやらを覗く
……?
…動物だよな、これは、鋭い眼力と口からなんか出てる変な生物
「ブッ!」
「ちょっと!なんで笑うの!?」
すまん、藤坪…コレは無理だ…笑うなって方が…無理…笑いを堪えて体が小刻みに震えてしまう
「分かるよ柿本君…私も最初見た時は同じ反応をしたもん」
五次元もそうか、そりゃそうだよな
レジンのセンスと画力のギャップが…
「もー、頑張ってウサギ描いたのに…」
ウサギだったのか…!また再びの小刻み震え
「五次元は歌詞だっけ?見せてくれたりする?」
「うん良いよ〜」
あっさり快諾、コピー用紙を受け取りしばし観覧
ていうか人のこと言えないが意外と五次元って字汚いな
「LOVE ミッドナイト」
作詞:Himarin⭐︎
眠れない夜にあなたを思い出す
その頃きっとあなたは夢の中
流星に願った永遠の誓い
二人の距離はもう少し
その手に届くように
(サビ)真夜中の月の下駆けていく
あなたを目指して駆けていく
あの日交わした約束を
真夜中に愛を叫び続ける
もうすぐ夜が明ける
君とならどこまでも
作詞者の名前とタイトルがダセエ…あと永遠の誓いを星に願うな
真夜中に叫ぶな
なんて言えないからな
「…コレは…恋愛の歌詞だね…」
「なんかもうちょい言う事ない!?これ、バンド部の友達に作曲してもらってから文化祭で歌ってもらうんだ〜」
そりゃ良うござんした
月並みな歌詞ばっかりだけど別に悪いモノでもないと思う
「ちなみに、部長…豊田先輩は何をお作りで?」
見た感じ二人と同じく紙になんか書いてるみたいだけど…
小説?詩?俳句とか短歌とか!そうでしょ、なんかそんな感じがする
「私は…お笑いのネタを書いていますよ…」
お笑いだと!?なんだそりゃ!ギャップが強すぎるにも程があるぞ!
「豊田先輩が書いたネタは文化祭で毎年使われてるんだって、結構評判良いんだって」
ヤバっ!頭が追いつかない!見せてもらいたいなぁ…
「…去年の、ネタですが、もしよろしければご覧になりますか…?」
そう言うと豊田先輩はメモ帳を取り出す
「すみません、では拝見させていただきます」
メモ帳を受け取る時に少し指が当たった
冷たい
ドキッとした
いや〜漫才だね〜初めてだから緊張するね
……あれ、次なんて言うんだっけ、ちょっともう一回ネタ合わせしない?
今まさに本番だよ、ネタ合わせして良いわけあるか!じゃあツッコミの練習ね、僕がこれから言うことにツッコミ入れてね。いやー僕ね、実は
消防車のレース大会か!!!
まだ喋ってるんだけど!何そのシュールなレース…まあいいや、いやー僕ね、実は
お前はカラスの大群の三番目だろ!!
喋らせろよ!あ、どうしよう…僕はこの人を張り倒しちゃいそうだ…ちゃんと最後まで聞いてね…いやー僕ね、実はこの前実家に帰った時に家族に泣かれてしまってね
やっも離乳食以外も食べられるなんて…うう…
とっくに食べられます!いや違うのよ、家族って言うのは猫なんだけど、鳴かれましたよ、ニャーって…
……(向こうを見ている)
泣かれたんですよ、ニャーって
…さてと、文化祭の次の工程は…とえーっと、下水道工事と、80階建てマンションの建築、それと国家予算の見直しか…
高校生の文化祭で出来ることは一個もねえよ!職場放棄するなよ!今は漫才が仕事なの!!ダメだこりゃ、じゃああなたが面白いこと言ってよ、僕がツッコむから
命に換えても遂行しよう
そこまで気張らなくても良いけど
面白いことね…ふふっアレは面白かったな〜
え、なになに?聞かせて!
ちょっとここでは言えないかな
じゃあどこで言うんだよ、今言ってよ!今!
ワガママだなぁ!分かったよ、ふふふっ、アハハハハハ!!(笑いながら倒れ込む)
そんな倒れ込むくらい面白い話なのか、是非とも聞きたいな
いや、なんか腹が痛くなっちゃって…いてて…
腹痛かよ
これは…俺に慰謝料払った方が良いんじゃないの?
払いたく(腹痛く)ないだろ!!
なんだコレ…本当にこの人が書いたの…?頭の中どうなってるの…?
全体的にシュールだけど確実に笑いが取れるって事は分かる…
「凄く…面白いネタでした!凄いです!今年のネタも楽しみですね!」
「ありがとうございます…今年も…頑張ります…」
「火鞠ちゃん、なんか私たちの評価だけ低すぎるよね?」
「そうだね、普段からそっけないけど今回はひどいね」
…もっと頑張れ…




