自販機での出会い
平均的な日本人の身長は男性が約170センチ、女性が160センチほど、身長が低いとされるのは男性が159~160センチほど、女性が147セン
糞がッッッ!!!!!
じゃあなんすか、身長が157しかない俺はミジンコって事っすか!!
スマホで調べた結果に憤慨と絶望をしつつ、いつもの場所へと足早に向かう
通学途中にある俺のオアシス、一般的には自動販売機とでも言うのだろうか、俺はそこで下校途中で飲み物を買ってしばらく休憩するのが楽しみなのだ
分かっている、分かっているって、スーパーで買った方が安いし種類も豊富だと!
結論から言うと俺は自動販売機のボタンが押したいのだ!
そうこう考えている間に目的地へと到着、先客なし、商品入れ替えもなし。
正直飲み物のパターンに飽きていたりはする。
昨日はほうじ茶、今日は…
「コーン茶かな」
ピッ、ガッターーン!
最高、ボタンの感触とそれに呼応しての飲み物が落ちてくる音、これが快感なのだ
というかコーン茶ってなんだ?…ノンカフェイン、ほう、それは実に良いではないか。コーンって事はモロコシの匂いでもするのか、確かめるべく蓋を開けて匂ってみる
「モロコシの匂いじゃん!」
素晴らしく香ばしい!コレは期待出来るぞ
…おや、足音だ…誰かがオアシスに近づいて来るぞ、
「柿本…君?」
女の声と俺の苗字、このミスマッチな組み合わせはなんだろうか
「へッ!?」
声の主は同じ同じクラスの五次元火鞠だ、彼女はとても綺麗だ、一言で言うなら黒髪美女、艶やかな長いロングヘアに一見キツそうにも見えるが整った顔立ち、高身長、そして何よりその珍しい氏名。一言じゃ言えないな、うん。
「モロコシが…どうかしたの?」
しまった、コーン茶のレビューの下りを聞かれていた!
「モロコシが、美味しいの」
我ながら何言っているんだ。
「美味しいよね、あっ、もしかして藤坪君が持っているコーン茶の事?」
いかん、飲まずにそのまま持っていたのだった、五次元さんの質問に頷きつつ、一口飲んで緊張からの口の渇きを潤そう。
「…あ、美味しい…、」
思わず出たこの言葉、メーカーの人が聞いたら喜ぶんだろうな。
「ねー、私も一口飲んでいいかな?」
いつの間にか隣にしゃがんでいる五次元さんは俺のコーン茶を所望される。俺のコーン茶を。
「え?俺、口つけたやつだよ…」
「ん?良いけど…」
カースト上位の人間に逆らったら怖い事になりそうだからコーン茶を差し出す
「ありがと」
流石に口は付けないだろう、でも口をつけない飲み方されてもショックだしなぁ、でもなぁ、仕方ないよな…って
「口つけた!!」
見たで、思いっきり飲み口に密着してるのを見たでえ!
「えっ、もしかして柿本君、潔癖症だったかな…?ごめんね、新しいの買うね」
なんちゅう悲しそうな顔するんだ…俺明日登校出来るのかな。クラス全員からボコボコにされるんじゃねえべな?
「違う、違う!…違うんだ…俺は大丈夫、でも、五次元さんが…!」
「私は全然気にしないけど…あ、コーン茶美味しいね、ありがとう」
カースト上位女子は間接キスとか気にしないのか、何かそういうの気にしてるから俺は下位なのか…ていうかテメーどさくさ紛れにもう一口行ってんじゃねえよ、なんかゾワゾワして嬉しいけど
「柿本君はいつもここに来るの?」
「うん、通学路だからね、学校楽しくないから、帰り際にここで飲み物買って落ち着いているんだよ」
いかん、色々余計な事を口走ってしまった、陰キャキモって思われる
「…学校、楽しくないの?どうして?」
聞いてくれるのね
でもスクールカースト上位の女子にどう説明すればわかってもらえるかね
「…友達も出来ないし、クラスの奴らがワイワイやってるのに、馴染めないから、連中だって、きっと暗い奴だって…実際明るくはないけど…」
笑えよ、陰キャの言いわけを、蔑めよ、どうせ理解なんてしないんだろ?興味もないんだろ?
「私も、学校楽しくない」
「え?」
もしかして俺に気を遣ってくれたんかな?
「私の周りの人は全員が全員私が望んだ関係じゃないもん、私が大きいから、変な名前だから皆珍しがっているだけなんだよ」
大きめなのも変わった名前なのも否定は出来ないが、それよりも美女だからでは?
「私、火鞠って名前、嫌いだよ、あんまりないよね、名前に火が入っているなんて…ただでさえあまりない苗字なのに…」
苗字に関してはあまりないっていうか、皆無だと思うぞ
「その、名前の由来とかって…?」
「火の玉だよ、お母さんが私を産む前にお腹の中に火の玉が入って来る夢を見たんだって、ありえなくない?」
ありえないって、そりゃ夢だからね
火の玉、玉は鞠の事、それで火鞠か。
「でも…名前の由来が夢に出てきたモノってよくある話じゃない?」
「火が名前に入ってる前例はないよっ!」
「うっ…」
強烈な火の玉ストレートを喰らい言葉が出ない
「あ、なんかごめんね、初めて喋ったのに色々言って、またここに来るね」
あ、これはお別れの合図的な空気かな?ちょっと虚しい
「そうだ、柿本君、連絡先の交換、良いかな?」
「え、マジで!?」
あ、思ったことが口に…
「うん…マジだけど、嫌かな?」
「嫌なわけないよ!俺の連絡先だよね?良いの!?」
「…?藤坪君の連絡先だけど…良いよ?」
マジか、この先なんか嫌な事起こっても全部許せる気がするよ。
さて、連絡先の交換をしつつ素朴な疑問を一つぶつけてみる(俺の口角、上がってないかな?ニヤニヤしてないかな?)
「…五次元さんってこの辺の人じゃないよね、今日はどうしてここに?」
そう、言うなればここら周辺は俺の地元、ど田舎である
「あー、私の母方の祖母がこの近くに住んでてね、週に何回かはそこから通ってるんだ、学校からもそこそこ近いからね」
「なるほど、そうなんだ」
「そうなんです」
「……」
「……」
うわ、この、糞みたいな受け答えと沈黙世界一嫌い
受け答えミスったな
向こうも陰キャに引き止められて嫌な気持ちしてるんだろ、耐えられない、そろそろ幕引きだ
「それじゃっバイトの時間だから!」
嘘をつきダッシュでその場を去ろうとするが
「あっ、待って、コーン茶持ったままだった、ごめんね」
そうだった
「あと、一年生はバイト禁止じゃなかった?」
そうだった
「柿本君」
「はい」
俺を呼ぶ声に後ろ向きで答える
「こっち、私の方見て欲しいな」
えー…怖いな、なんでそんな事言うのよ…
「はい」
恐る恐る後ろを振り返る
女子という存在を直視することなど遺伝子レベルで不可能に近いが、挙動不審でこれ以上恥を上塗りすることなどもっと不可能なのだ!
それにしても、立っていると本当にスラっとしていて、身長高いな…170はあるな。あ、俺が低すぎるだけか
「柿本君、私のこと大きいとか思っているんじゃないかな?ううん、思っているよね」
いきなりどうしたっていうのだ?この人は
「そりゃあ…」
そうだろう、実際俺とは結構身長差があるからな
「だよね、私は大きくなりたくてなった訳じゃない、皆は褒め言葉のつもりで言っているのかもしれないけど、言われる度に凄く傷ついているんだ、悩んでいるんだ」
低身長で校内で周りに誰もいない俺にとってはなんとも羨ましい話ではあるのだが
「生まれつきの特徴で人の価値観が変わるなんてバカらしいって、思わないかな」
「…!」
俺は
俺はこの言葉を…この言葉を渇望していたのかもしれない
「わかる…わかるよ!五次元さん…!俺、低身長で悩んでた、勝手に五次元さんを羨んでた、でも五次元さんだって悩んでたんだね…」
なんだろう、この気持ち
これが幸福感というのか…?
「柿本君…君は同志だよ…!」
五次元さんはそう言うとニカっと笑顔で両手を広げた
「そのポーズは?」
「ハグしよ、ハグ」
分かり合えた気がして、突発的にテンションが急上昇し、一時のテンションで五次元さんの胸に飛びつこうと思ったのはほんの一瞬
「いやぁ、そういうのはちょっとマズイんじゃない?」
冷静だ、俺はとてつもなく冷静だ
「なんで!?」
なんでじゃない。こっちだって色々あるんだよ。
「じゃあ…はい」
五次元さんは両手を差し出す
「握手しよ、握手なら良いでしょ?」
それならギリギリ良いか…抱きつきなんかしたらマズいもんね、誰かに見られたら学校が地獄へと早変わりするもんね。
恐る恐る五次元が差し出した手に応じて俺も手を伸ばす
ガシッ
あれ、手首を握ってきた、握手ってそうだっけ?
なんか力が強…引っ張られ…
「う、うわっ!!」
考えてる内に俺は体勢を崩し、五次元さんの胸元に吸い込まれるように飛び込んでしまった
ヤバいと思ったが五次元さんの両手でガッチリホールドされているようだ。なんで??
「へへっ、こうでもしないとハグさせてくれなそうだもん、騙されたね」
え?わざとやったの?




