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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

愛の果て

作者: とーふ
掲載日:2024/09/08

Twitterの方で参加した匿名企画の小説です。

「匿名狂愛短編企画」

私、西宮咲姫。十六歳。おとめ座のAB型。


自分で言うのも何だけど、とても容姿が整った美少女!


美少女の中の美少女と言っても過言では無いと思う。


町を歩けば私に見惚れた人が電柱にぶつかってしまうし、十人に聞けば百人が美しいと答えてしまう!


アイドルやら、芸能人やらにならないかと声を掛けられた事だって一度や二度じゃないよ。


ま! 少なくとも変装なしに大きな街は歩けないんだ!


声を掛けられ過ぎて前に進めないからねっ!




そんな完璧美少女である私には、子供の頃からずっと一緒な幼馴染が居るのだけれど……。


「咲姫ちゃん!!」


「あぁ、昨日ぶりだねぇー。裕子」


「ねぇ! どうして私からの電話に出てくれないの!? ずっと、ずっと鳴らしてるのに!」


「んー?」


「やっぱり咲姫ちゃんは他の女が好きなんだ!! こ、ここ、こうなったら咲姫ちゃんを殺して、私も死ぬぅぅうう!!」


カッターナイフを持ちながら叫ぶ裕子を見て、私はハッと目を見開いた。


まさか、こんな事になるなんて!


「裕子!」


「何よ! 今更言い訳なんて!」


「私の携帯電話がどこにあるか知らない!?」


「……は?」


「今、言われて気づいたんだけど。私、携帯を携帯していない……! これは大事件だよ。いつから持ってなかったんだろう?」


「え?」


「裕子なら知っているでしょー? 五分に一回はメッセージを送ってくれるし。私、いつまで返事してたっけ?」


「え? えと、ちょっと待ってね?」


裕子はカッターの刃を仕舞うと、鞄に入れて携帯を取り出して調べる。


「えっとね。昨日の夜八時までは返事くれてたよ」


「はー、なるほど。昨日の夜八時かぁー。ふむふみゅ」


私は腕を組みながらうーんと考える。


そして、すぐに思い出した。


「そうだ! お風呂場だ!」


私は裕子と共に一階へ降りると、お風呂場へと向かい洗濯機の近くに落ちている携帯を発見した!


完璧である!


「おー。携帯。携帯、携帯よぉー。お前を探していたんだよぉー。さて、返事だったね」


私はメッセージアプリを開くと裕子からの『返事をしてよ!』というメッセージに『うん!』と返しておいた。


そして、取り戻した携帯を手の中でクルクルと回して遊ばせながら二階に戻……る前に、一応母さんに声を掛けておく。


「お母さーん! お風呂場にあった私の携帯ー!」


「あ、咲姫ちゃん。咲姫ちゃんのお母さんは出かけてるみたい」


「そうだっけ。あぁ、なんか遠くに行くって言ってた気がするなぁ」


「うん」


「あれ? って事は! もしかして玄関の鍵開けっ放し!? やば! またお母さんに怒られちゃう!」


「大丈夫だよ! 鍵は閉まってたから」


「あ、そうなの? ん? そしたらどうやって家に入ってきたの?」


「それはほら、私合鍵持ってるから」


「そうなんだ」


なるほどなぁ。と頷きながら私は再び二階へと戻っていった。


しかし、いつ合鍵なんて作ったんだろう……。


まぁ良いかー。




自分の部屋に戻った私は、ベッドに座りながら床に置いた座布団の上に座る裕子を見据えた。


「あれ。そう言えば裕子は何で来たんだっけ?」


「え? あ、ほら。遊びに来たんだよ」


「そうだっけ」


「うん。そうだよ」


「そっかー」


うんうんと頷き、私はベッドの上でゆらゆらと左右に揺れながら裕子と話をするのだった。


今日も今日とて特に山もなく、オチも無く、意味もない話だ。


「そう。あの二人絶対にデキてるよー。間違いないね」


「そ、そうなんだ。何かイケナイ感じ」


「ね。でも二人が恋人になったら素敵じゃない? 友情を超えた愛情っていうのかなぁ?」


「咲姫ちゃんは……」


「ん?」


「咲姫ちゃんも、友情を超えて、愛情になったら、良いなって思ったり……する?」


「私? 私かぁ。どうだろうな。それだけ想ってくれれば嬉しいとは思うよー?」


「そう、なんだ……!」


「でも付き合うかどうかは分からないかな」


私の返答に裕子はズーンと沈んだ表情をする。


何をそんなに落ち込んでるんだろ。


「だってー。私誰かと恋人になる時って、すっごい好きになった時だもん。あぁ、この人となら、どこまでも行ける! って感じでさ。でも、相手が同じくらい想ってくれないと悲しいから、耐えられないかなー」


「そ、っか」


「だから友情から変わったとか、一目惚れとか、どうでも良くて……私と同じだけ想ってくれたらそれだけで十分だよ」


「うん。分かった」


裕子はうんうんと頷きながら、私の言葉をかみ砕いて笑った。


目元まで隠れる様な長い前髪の向こうで、私を見据える瞳が静かに揺れる。


その透き通った色が、まるで人が入らない森の奥にある湖面の様で、私は胸の奥に温かさを感じるのだった。


「そういえばさー。一目惚れで思い出したけど、ちょうど映画のチケットを手に入れてさー」


「映画?」


「うん、そう。街の中ですれ違った二人がね。互いに一目惚れしちゃって、その相手を探し回る話でさー」


「うんうん」


「ちょうど今週の土曜日にやるんだよねぇ。裕子は行く?」


「あ……」


「ん? どうしたの?」


「いや、その、今週の土曜日は、他に用事があって」


「あ、そうなんだ。それはしょうがないね。じゃあ誰か他に行ける子探すかー」


「え……咲姫ちゃん一人で行くのは」


「えー? ヤダよー。私映画終わったらすぐに感想とか言いたいタイプだしー。特に恋愛映画は誰かと行くに限るね!」


「……」


「んー。さっちんか、いやよしりんなら空いてるかな。彼氏にフラれたって言ってたし。空いてるかも……」


「咲姫ちゃん!!」


携帯を弄りながら、一緒に行けそうな人を探していた私は、不意に正面から飛び掛かってきた裕子に押し倒されてベッドに仰向けで倒れる。


荒い呼吸を繰り返す裕子を見上げながら私は、笑った。


「どうしたのー? 裕子。突然」


「だっ、誰かと映画に行くなんて、やだ」


「いやいや。ヤダって言われてもさ? さっきも言ったけど、私一人で行くのは嫌なんだってー」


「それなら私が一緒に行くから! だから、お願い」


「うーん。でも、裕子は用事があるんでしょ?」


私は目を見開き、私を見下ろす裕子を真っすぐに見つめ返す。


「大した用事じゃ無いの。だから、大丈夫」


「いや、大丈夫って。駄目だよ。裕子は大した用事じゃないかもしれないけど……「大丈夫なの!!」っ!」


裕子は必死に、私の肩を痛いくらいに掴んで訴えていた。


その様子に、私はふぅと息を吐きながら笑う。


「分かったよ。じゃあ土曜日は一緒に映画を見に行こうか」


「……! うん! うん!!」


「はいはい。そんなに泣かないでよ。心配しなくても私は逃げないからさぁー」


私はポロポロと涙を流す裕子の頭を撫でながらを慰める。


泣き虫だなぁと笑いながら、裕子が泣き止むまでいつまでもそうしているのだった。




それから時は過ぎて、裕子が泣き止む頃には外もすっかり暗くなってしまった。


私は裕子を送る為に、上着を羽織って外へと出るのだった。


つい先日まで秋らしく虫の声がしていたというのに、季節はそろそろ冬に向かおうとしているらしい。


少しだけ肌寒い感じだった。


「ふぃー。もうすぐ冬って感じだね」


「寒くない? 咲姫ちゃん」


「ちょっと寒いけどっ! はい!」


私は裕子に向かって右手を差し出した。


「温めてくれるかにゃー?」


「う、うん!」


「いひひ。裕子の手は暖かいねぇ」


「そ、そうかな」


「うん! 多分心が暖かいから、体もホカホカなんだろうねぇ」


「で、でも。手が冷たい人は優しい人だって聞いた事あるよ。だから咲姫ちゃんの方が、優しい人なんじゃ無いかな」


「そうかなー? だったら嬉しいなぁー」


私は裕子と繋いだ手を軽く振りながら夜道を歩き、裕子の家についてからお別れをした。


そして、懐から小型端末を取り出して、イヤホンを耳に付けようとしたのだけれど……向かいから歩いてきた人にぶつかって、端末を落としてしまう。


「あっ」


「んだよ! 前見て歩けよ!」


「……ごめんなさい」


「って、なんだよ。すげぇ可愛いじゃん。今一人? 何やってるの?」


私は小型の端末を拾いながら、ペラペラと鳴く季節外れの虫に目を向けた。


どこにでも居る。普通の虫に見える。


故に、私はソレを無視して家に帰る事にした。


「ぅおい! 無視すんなって! なぁ、さっきは悪かったよ。ぶつかったのがこんなに可愛い子だって分からなかったからさー。ごめん! この通り!」


「……」


今日も虫の鳴き声が煩いなと感じながら両耳にイヤホンを付けようとしたのだけれど、その腕を掴まれてしまう。


「……何か?」


「いや、そんなに無視しなくても良いだろ。ほら、話くらいは聞いてくれても良いじゃん? 俺ってば、イケメンだって大学でも有名でさ。君、まだ高校生とかだろ? 年上のカレシって結構なステータスだと思うぜ?」


「私と恋人になりたいという話ですか?」


「そうそう。話分かるじゃーん」


「じゃあ、死んで下さい」


「……え?」


私は鞄からカッターナイフを取り出して、刃を出さないまま男に向けた。


「はい」


「いや、はい。って、え? いや、何かの冗談?」


「冗談でこんな事は言いません。私と付き合いたいんでしょう? なら、死んでください。出来ますよね? 愛があるなら」


「は、はぁ……?」


「愛は一途でないといけません。そしてその人の為なら何でも出来る。それが愛でしょう? だから、死んでください」


ジッと見つめる。


男の目の奥にある輝きを捕まえて、その真実を探す。


「出来ないんですか?」


「っ! つ、付き合ってられるか!!」


結局その虫は私と愛を交わす資格もなく、どこかへと消えていった。


私は、改めてイヤホンを耳に付け、彼女の声を聞く。


『はぁー。緊張した。咲姫ちゃん、今日も可愛かったな。それに、手……柔らかくて……』


裕子の今にも消えそうな声を聞きながら、私は幸福を感じて歩く。


クラスの虫が、裕子の可愛さに気づいて近づこうとしていたのは知っていたけど、まさかデートに誘おうとしていたなんてね。


早めに気づいて良かった。


「ふふ。でも、悪い事をした裕子には良い罰になったかな」


携帯をお風呂場に放置して、ずーっと無視していたのだ。


愛が見えなくて、どれだけ不安だっただろうか。


でも……。


「私だって、傷ついたんだから、これで……おあいこ」


私は誰も居ない夜道で、湧き上がる幸福を感じながら、踊る様に歩く。




そう。お母さんが昔言っていた。


素敵なお姫様には、お姫様の事だけを想って幸せにしてくれる人が現れるって。


それが、裕子。


私の裕子。


幼い頃に出会った時、一目惚れして、この子だって思った。


だから、ずっと……導いてきた。


私と同じである様に。私たちが二人で一つになれる様に。


本当は可愛いのに、私以外には隠して。


本当は頭が良いのに、私以外とは喋らなくて。


本当は誰よりも優しいのに、その想いを私以外には向けない。


私を愛する為に、全てを捨てて、私以外の全てを!!


そして、私だけの為に生きて欲しい。


私も裕子以外の全てを捨てるから。


そうすれば……。


そうすれば、きっと。




「永遠はそこにあるわ」

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