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優しくて美しい世界  作者: 白い黒猫
解説

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コチラの物語について

コチラの物語は11:11:11シリーズの第5弾にあたる物語です。


 7月11日の11:11:11に事故に巻き込まれた事で、同じ一日をひたすら繰り返すことになった主人公を描くという事だけがシリーズ共通の内容となっています。


 シリーズ世界の中では、ある条件下で毎年世界のどこかで必ず発生してしまう現象。


2018年に起こったループ現象を描いたのが【11:11:11世界の中心で】

2019年に起こったループ現象を描いたのが【世界の終わりで西向く侍】

2025年に起こったループ現象を描いたのが【バッドエンドの向こう側】

2026年に起こったループ現象を描いたのが【バッドエンドはもう来ない】

2027年に起こったループ現象を描いたのが【美しくて優しい世界】


 となっています。


 そして2027年に現象に巻き込まれたのが、この物語のヒロイン貢門命架となります。


 シリーズの中で一番、ループ現象そのものがよく分からないオカルト寄りな話となっています。

 普通はループ現象に巻き込まれたら最初の一回は夢だとスルーしますが、直ぐに世界が狂ったことを察して慌てるもの。

 しかし今回のヒロインは引きこもりで曜日感覚が曖昧だったことと、狂気に囚われた人なので、ループした世界を認識出来ないまま日々を過ごしてきていました。

 何故狂気に囚われているのか? 元々思い込みの強いぶっ飛んだ人ではありましたが、それをセンセイこと不死原渉夢に強い愛情を抱く残刻や樹里らによって精神的に痛めつけられて、狂気を極めたという感じです。

蠱毒の話タイトルのように毒と毒がまじわって最悪な毒を生み出したのがこの状況。


 今回の主人公の貢門命架は田舎育ちの野暮ったいポッチャリ体型で小さな一重で目つきの悪い目が特徴の容姿も良いとは言えない冴えない女の子です。


 冴えない田舎の生活にウンザリしながら暮らしていました。

 そんな彼女がデジタルでイラストを描き、その作品をネットで公開してみたところ、ネットで少し持て囃されるようになってから彼女は変わっていきます。

 初めて人から認められた事で、自分はこんな田舎ではなく、もっとキラキラした世界が相応しい人間だと勘違いしていきました。

 絵を描く事が好きというより、褒められて自分がチヤホヤされたいだけ。

 褒められた事で自分の腕を磨く方向に頑張れたら良かったのですが、自分の能力の至らなさを誤魔化す術だけを磨いていってしまいました。そしてトレパクやAIを駆使してパッと見、悪くは無い絵を作れるようになります。

 安く使えそうなイラストレーターとして出版社から声を掛けられ仕事をした事で、ますます過ちを加速させます。


 たまたま見た絵画の作者がイケメンの金持ちであることを知り、妄想を爆発させてあらぬ方向に突っ走ってしまったというのが彼女の過ち。

 彼女が脳内で勝手に描いた、人気イラストレーターのアーティスティックな未来のパートナーに正にピッタリな存在。


 実際素敵な男性なので、恋する気持ちは嘘では無いですが、同時に自分の虚栄心を最大限満足させてくれる相手でもありました。

 自分に愛も富、そして更なる名声与えてくれる理想の恋人が不死原渉夢だったわけです。


 彼女の中で、最高に素敵なラブストーリーが作り上げられていき、ソレになぞった行動をしています。


そして思い通りにならない所は妄想でカバー。

 彼女自身が自分の人生を素敵に思いたい為に、記憶までも大幅に改竄され、信頼ならない語り部となってしまっていました。


 その為、塗り替えた記憶も細かく違和感のある光景となっています。鉛筆を持ちデッサンをしている筈なのに、センセイと会話している時だげ何故か絵筆を持ってキャンバスに向かってる。


 珈琲が苦手で、いつもカフェオレを飲んでいる筈なのにグアテマラを頼んでいたり、唐揚げの味付けやおにぎりの具が彼女の家の味とは違っていたり……。


 センセイとの思い出の全てがキャスティングが勝手に変えられた記憶という厄介な思考回路。


 一方、不死原先生は基本的には善人。本当に穏やかで紳士な人ではあります。

 先生からしてみたら貢門命架は直接関わる必要も無い、単なる多くいる学生の一人でしかありません。


しかもかなり奇怪な性格の画才も微妙な学生。

 渉夢から見たら好意的に気になる点がまったくなく、恋愛に発展する筈もない。そもそも学生に手を出すという事は絶対しない真面目な人物。

 命架はその願望と現実のギャップを、明後日な行動力と妄想で補い突っ走った事で今回の悲劇となった訳です。


 本当に彼氏であったなら最高な相手になりうる不死原渉夢ですが、此処にもとんでもない地雷がありました。

 彼が不死原一族の人間だったという事。

 不死原一族は政界とも経済界とも強いパイプを持った一族。

 そしてその一族の住む土地は不死原王国との異名も持つ結束力が強く、忠臣を多く抱えている所。

 その地方都市周辺にも強い支配力をもっていました。


 そんな王国の国民に最も愛されている王子とも言うべき存在に、無礼な事をしてしまった。

 敵と認定された貢門命架がタダで済むわけなかったという状況です。


 また不死原渉夢自身がタチの悪い人たらしの為、多くの苛烈な保護者や信望者に大切にされ愛されています。

 それらが各々、より過激な制裁を与えるように動いてしまう傾向にあります。

 何より厄介なのは十一残刻という存在で、彼は里で不死原家の次に力を持つ十一家の三男。里の中で一番、渉夢を守るために過激で容赦なくそしてしたたかに行動する男。

 渉夢によって動きを止められた樹里を煽り、戦線復帰させ攻撃の手を増やすということもし、直接命架と接触し社会的にも精神的に痛めつける言葉で攻撃をして苦しめました。


 そして五年の刑期を終え出てきたのが2027年6月。その一月後の7月11日に小学校に向かって事故にまきこまれました。


 そうして物語のスタートの状態のヒロインが出来上がった訳です。


 因みに不死原渉夢は2026年のループ現象の被害者で、十一残刻は2025年のループ現象の被害者。

 その為この物語の2027年の世界では二人とも事故で亡くなっている事になっています。


神社で行われていたのは、本当に渉夢と残刻を悼む為の法事です。


 海側の茂みがないとか、渉夢の時代の物語と和装の人物の銅像の場所が変わっていて、そこに花がたむけられているのもそのためです。

 現象の被害者同士が、ある条件下において異なる年の被害者と接触できる事から、この物語において二人は本当に貢門命架と会話をしています。

 接触といってもそれぞれ違う時間軸にいるので、姿を見て会話出来ても触れ合う事が出来ません。

 自分の作品であるモニュメントの所に残刻が命架を呼び出したのは、現象の条件の検証と確認。それに加え懲りずにまだ渉夢に接触しようとする命架に精神的にとどめを刺しに行ったというところです。


 他のシリーズとは今回かなり雰囲気や傾向が違うので、もう少しこの物語の世界を知りたいという方は、一作目となる【11:11:11世界の中心で】か【バッドエンドはもう来ない】を読まれるとループ自体の現象が分かりやすいかもしれません。

 この二作品は現象の検証を主人公が真面目に追いかけて調べる行動をしています。


 このシリーズは全体で一つの大きな流れの中にあり、時間的にも繋がっているのですが、大きく分けて二つのグループ分かれてしまっています。


【11:11:11世界の中心で】【世界の終わりで西向く侍】は佐藤宙が物語の中で強い影響力を持つ内容。


【バッドエンドの向こう側】【バッドエンドはもう来ない】【美しくて優しい世界】は不死原渉夢が物語中で強い影響力を持つ内容。


 どちらがオススメというのはないですが、不死原渉夢のグループの作品の方は女性が主人公で恋愛要素がある内容になっています。佐藤宙グループの話はループ世界の中で自分と向き合い求める物を見つけ前に進もうとするという内容になっています。

 また、それぞれ検証のアプローチが違う為、異なる年の被害者との接触方法も若干異なっています。


 ご興味があればどうぞ他の作品も読んでみて下さい。

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