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優しくて美しい世界  作者: 白い黒猫
浮かび上がってくる現実

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永遠の幽囚

 時庭自然公園は観光客というより市民の憩いの場所となっており、市営美術館や市営博物館などもある大きな公園。 

 センセイが何故デートの待ち合わせを美術館の入口ではなく、そういった建物から離れた場所を指定したのか少し不思議だった。


 でも二人っきりで話すには、子供の遊具ばかりあるワンパク広場とか、噴水広場より公園の隅にあるこちらの方が落ち着いて話せるかも知れない。


 田舎で田畑ばかりの私の住む所とは違って、街はビルといった建物が多く、道もアスファルトに覆われている為か体感温度は五度程高く感じた。


 高速バスターミナルから歩いて五分程の公園に着くまでに私は汗みどろになる。

 センセイに会えるのが嬉しくてかなり早めに来ていたので、美術館に立ち寄りよく効いた冷房で身体を冷やした。

 汗が引いた段階でメイク直しをシッカリする。センセイにできる限り可愛い姿を見せたいから。


 約束の時間の十五分前帽子被り、更に日傘を手に私は灼熱の外へと足を踏み出した。

 屋内でキンキンに冷やしてきたから、暑さ中でも耐えられる。


【永遠の幽囚】のモニュメントは公園に入る前に地図でチェックしていたので迷うことはなかった。

 そのモニュメントは公園のアートの杜ゾーンの中央にあり、森の中の開けた場所にあり、思ったよりも大きい。

 オブジェの中に入って楽しめるようになっているようだ。


 複雑な曲線で構成されており、全面鏡面の為に周囲の風景を取り込んで閉じ込めている。そんな妙な錯覚に陥る。


 全体の構造は大きな渦が組み合わさって対称に配置されているようだ。

 一方通行で抜けられる迷路のような構造になっていた。

 しかも内面はシンプルな鏡面となっている為、細い通路を進む自分の姿が壁面に映り続ける。

 その写っている自分は壁面が湾曲している為に、細く歪んで自分ではない様に見える。

 面白いけれど、どこか人を不安にさせるデザインである。


 鏡面がところどころ凹んでいたり汚れがついているので、余計にそう感じるのかもしれない。

 私は反対側から出てから、周囲を見渡すがセンセイの姿は見えない。


「貢門さん」

 

 センセイの声が聞こえた気がした。聞こえてきたのはオブジェの中のから。私は引き返しぐるぐると渦の通路を進んでいく。センセイを繰り返し呼ぶ私の必死な姿が壁面の中で私を追いかけてくる。


 中央部分に誰か男性が立っているのが見えた。私はその背中に抱き付くために手を伸ばした。

 しかしその手は何故か空ぶる。

 私は壁面に衝突しそうになるにを腕で防ぐ。正面の鏡面に驚いた私の顔が写っているだけ。鏡の中にいるには私一人。


 しかし背後に誰か人のいる気配はある。


 ゆっくりと私は振り向いた。

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