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優しくて美しい世界  作者: 白い黒猫
センセイを巡る旅

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11/24

敵二人

 私の人生は二人の人間によって壊された。

 一人は眞邉樹里。センセイの秘書だという女。

 センセイの家族の覚えもよく、婚約者候補の筆頭だったのだと思う。

 センセイとは幼馴染みだとかで。確かにセンセイとは仲も良かった。

 私がセンセイとの距離を縮めるにつれ、彼女は私に牙を向け始めた。

 センセイと話をしていたら、何だかの用事を言い出し切り上げさせようとするのが始まりだった。

 部長や顧問に圧力をかけドローイング部から私を退部させ、共同アトリエに入れなくした。

 そして私が、まるでストーカーのような行動をしていると大学にも働き掛けたようで、弁護士を通してその報告を受けた家族はビビり勝手に接近禁止令の書類にサインをしてしまった。

 あの女は私を退学にまでしようとしていたようだが、センセイが庇ってくれたようで、その時は退学を免れた。


 もう一人は十一(とかず)残刻(ざんとき)。センセイの従兄弟か何からしい。ザントキではなくザンコクの方が正しい読み方なのではと思うほど暴力的で粘着質な残酷さを持つ男。

 私に接触してきて、私の容姿、育ち、画才をボロくそに腐してきて、精神的に私を痛めつけてきた。

「お前のようなドブスなブタ、渉夢から何故愛されるなんて勘違いできるんだ? アイツはな美しいものを愛する」

 それは分かってる。私は確かに太っているし。目も一重で団子っ鼻で美人では無い。でもブスと言われるほどブサイクではない、センセイは可愛いと言ってくれた。

「キショ! ブスがなにいってるの? お前の家鏡あるの? ブタのクセに愛とか語るな、ギャグにもならない、笑えない 」

「安っぽいしダサい服だな。良くそんな服で外歩けるな」

 大学では絵の具や粘土で汚れる授業も多いからオシャレは余りできない。それに大学まで遠いから時間をかけて身支度もできないから仕方がないのに……。

 容姿の関しては、大学のセンセイのファンだという女達からも攻撃された。だから私はメイクを工夫にして少しでも可愛く見えるように頑張った。

「お前の描いたイラスト、最悪だな。

 どこかで見た事のあるものを組み合わせただけのモンタージュ絵で糞だ!

 まだ幼稚園児の絵の方が一生懸命描いているだけ、心に響く。

 アンタの絵は薄っぺらで人の心に何も与えない」

 私の心を乱暴な言葉でズタズタにしてきた。

「不愉快なんだよ、お前ごときの人間が渉夢の名を口にするな!

 名をこれ以上呼んだら喉潰すぞ……」

 あの男のそう言った時の目は本気だった。その所為で私はセンセイの名前を言葉にするのが怖くなってしまった。


 あの男は全国展開のレストランを展開しているトカズコーポレーションの関係者ということを利用して、私の住む村にまで手を出してきた。

 ウチの村はトカズコーポレーションのファミレスに野菜を卸しているだけに、そこから睨まれるというのはウチの近所の人からしてみたら大事で無視できない状況。

 その為私は村では疫病神のように扱われるようになった。


 二人は様々な形で追い詰めて私から、イラストレーターの仕事も奪っていった。

 今の私に残されているのはセンセイへの愛だけ。


※   ※   ※


 あの二人の事を考えていると気が滅入るだけなので私は、センセイの事を考えて、気持ちを落ち着かせることにする。


 なんかお腹もすいてきた。私は食べ物のことを考えながらあの日のセンセイの姿を思い出す。

  

 センセイは珍しくラウンジにいた。二人で丸いテーブルに座っている。空いている席にはセンセイの私物の入ったワンショルダーのリュックと上着がかかっている。

 筆記用具だけでなくタブレットやミニスケッチブックなどが入っていて、よくそれらを取り出して使っているのを見る。

 そのリュックが格好良いから私も欲しいなと思った事がある。しかしネットで調べたら七桁もする価格で諦めた。しかもセンセイの持っているのは限定モデルだとかで余計にプレミアが付いてすごい事になっていた。  

「なんでそんなに、ニコニコした顔で食べてるの?」

 手作り弁当を食べながら、センセイはいつもしないような無邪気な笑みを浮かべている。

「お弁当が嬉しくて。朝食べて来れなかったし、美味しいなと」

「また……朝どころか昨晩も食べ忘れてない?」

 センセイはンーと声を出して惚ける。これは食べてないのだろう。

 センセイは絵に夢中になるとつい食事を忘れてしまうようだ。しっかりしているようでこういう所少しヌケていて可愛い所。

「この生姜の効いた唐揚げに、出汁の効いた卵焼き、自家製高菜漬けのおにぎり どれもとても美味しいよ」

 こんなにストレートに手作り弁当を褒められたら嬉しいに決まっている。

「昨晩の残りの流用で申し訳ありません」

 センセイはフフフと声を出して笑う。

「どれも俺も馴染みのある好物なものばかり。

 良い奥さんになれるね。君は」

 優しい瞳でそんな事を言っている姿に、私はたまらない気持ちになり、下を向いた。


 センセイは食べ物に好き嫌いはないようだ。大会社の社長の息子で祖父は国会議員をしているとかで、お金持ちのお家で育っているのに関わらず、大学の学食でうどんやカレーを普通に食べていたりする庶民的な所もあった。

 他の講師の人に誘われ普通に居酒屋などでの呑み会にも参加していたりするようだ。

 普通にうどんとかを食べていても、所作が綺麗で何故か上品に見えるのが不思議だった。

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