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3章8話 「???」

今回のサブタイトルはサブタイトルじゃありません。

本当のサブタイトルは↓↓↓一番下です。

前回の話からそこまで時は進んでいません。

どうぞ、ご覧ください。







 激闘が終わった。



 勝負と是非の決着もついた。



「…………まずいことになった……」


 それなのに、赤髪の少年――アルシンの精神は緊迫と絶望にあふれていた。





〔………………〕



 目の前で突如、新種バグのアンノウンが出現してしまったのである。



「…………最悪の状況だ……」



 白黒の闇で全身を包み込んだ風体(ふうてい)


 コモンタイプを遥かに凌駕する暗澹(あんたん)としたボディ。5mはあるだろう。


 目も耳も鼻も口も存在しない。背中にはそれらの感覚器官の代わりに、配線のように長く絡まる謎の()()()


 そして、見ているこちらが寒気がしそうな程の紺碧(こんぺき)に燃えている両手。




(…………けど、やっぱりやるしかねぇか……)


 アルシンは左腕を真っ直ぐ伸ばして、


()()()()()を避けるためにも、おれがやるしかねぇんだ)


 唇を強く噛んで、覚悟を決めたアルシンの左腕が(うず)く――





「…………!???!」



 背中に走った――衝撃。



 アルシンの胸の先まで開通する、針のように細く槍のように鋭利な長いもの。


 驚愕の瞳に映ったそれは、地中から芽のように突き出ていた。

異様な長さの出所をたどっていくと、別の穴を抜けて、面前のアンノウンの背面へと繋がっていた。




(――なるほど、【アレ】が()()()()ってか……!)


 空前絶後の奇襲性。

いつの間にかアルシンの死角を貫いていた攻撃。その軌道を全く捉えることができなかった。




「……うぐっ、」


 アルシンはミント色に切り替えた左腕で、胸元を抑えながらその尻尾を引き抜いた。



 噴き出る(あか)い花火。傷口を一瞬で塞いで、扇情的な輝きで癒して……。




「……ぐふっ……!」


 アルシンは倒れた。


 即席の()()()治癒で、致命傷と即死は免れたものの、先程の戦闘による消耗がかなり響いている。




(……毒も、回復も、源躍流も……使う力が、戦う力がマジで残ってねぇ……!

どうする、おれは……どうする!?)





「おい、しっかりしろ!

あんた!」


 後方から、怯えと恐怖をふんだんに(はら)んだ声。



「……大丈夫かよ、あんた!?」


 直前の死闘を出歯亀(でばがめ)していた英雄志望の青年である。状況の理解が追いついていない形相ながらも、アルシンの容態を気遣いに駆け寄ってきた。



「……人の心配してる場合かよ、ボケ。

アレを見れば……分かるだろ。

とっとと失せて、里の人達を避難させるのに(いそ)しんどけ……!」


「……な、何がどうなってるんだよ!?

どうして、……が、こんなことに!?

あ、あんたは……どうすんだよ!?」


「テメェは、馬鹿か……!?

疑問ばっか並べてる場合かよ……さっさと行け!

おれはコイツを食い止める……被害が出る前に!!」



 アルシンは再び立ち上がる。



「行かねぇと、ぶっ飛ばすぞ!」


 孤独にも、満身創痍にも、絶望にも臆さずに、(おとこ)の意地を剥き出しに叫んだ。




「……わ、分かった、言うとおりにするよ!

み、みんなの避難は……俺に、任せろ……!

すぐに救援も来るはずだから、あんたも無理するなよ!」


 追い払われた青年は、人々が暮らす方角へと走っていく。


 混乱に(さいな)まれている彼の瞳からは、断腸(だんちょう)の涙がこぼれていた。




 それは――目の当たりにした1つだけの真実を理解したことへの、万感の涙だった。




* * *



 青年が消えてすぐ。





 大地が震動。



 木立が薙ぎ倒されていく。





 衝撃を受けた背中には、ガチガチに硬く、痛みを和らげることなどできない土のマット。



「………………グエッ……!」


 自分がボールのように軽々と飛ばされたことに気がついたのは、苦痛に(あえ)ぐ息がこぼれてからだった。


 肉体がどうしようもないくらい痺れる。





「…………」


 アルシンは四肢を少しずつ動かして、自分の容態を確かめる。



(大丈夫……ではねぇが、壊死(えし)はしてねぇ……。

骨も……ギリギリ折れてねぇ……)



 頭で反応することができなかった。


 それでもまだ自分が倒れていないということは、体でガードと受け身を咄嗟に取れていたのだろう。




「…………くそっ、周りが……見えねぇ…………」


 アルシンの眼球は陥没して、複視状態になっていた。


 正常に視覚が作動しない。




「――!!

ヤベェ……!」


 重なったアルシンの視界の奥。


 生命(オド)を貪るためだけに林の中を駆けている――二重に広がる巨大な影。



(立てねぇ……死ぬ……!!)





〔!!!〕


「……なにっ!?」


 影が欲しがるオドの対象は……先程の青年か、はたまた里に暮らす人々か……。


 アンノウンはアルシンを素通りした。既に命を奪うのに容易なはずの彼を、歯牙(しが)にも掛けなかったのである。




「――おい、アンノウン!

今はこのおれが、お前の相手をしているんだ!

あっぢに行ぐんじゃねぇ!!」


 ただただ多くのオドを求めて駆けるアンノウンは、アルシン個人のことなど眼中になかった。




 バンバンバンバンバンバンバンバン……!!



「っっ〜〜〜〜!」


 その時――鼓膜を破くような規模の爆音の山が投入された。




 アルシンがなんとか周囲を見渡すと、



「……D機関の奴らか!」



 銃座(じゅうざ)が何砲も接続された移動式小型要塞と、(かに)型の機動兵器。


幾重にも陣形を組んでこちらへ向かってくる、震撼(しんかん)の光景。



 やがて、ブロロロロロ…………という、低くけたたましい回転音も上から迫ってくる。

武装コンテナを大量に積んだ戦闘用のヘリと、戦闘機陣営。



 現れた救援――北を守護するための【作品達】。



 アルシンの視界が歪んでいるせいか、彼の目には、よりそれらがおぞましく見えた。




「――見ていたぞ。

成る程……これでは一向にバグが滅びはしないな……」



 割って入る一閃。



〔!?!〕


 瞬時に、アンノウンの頭の上から股間の正中線まで、すっぱりと綺麗な切り込み線が描かれた。



〔??!!!??!!?〕


 アンノウンは頭を抱えて悶え、狂い、踊っている。




「何故なら、貴様こそが()()()()()だったのだからな……」


 D機関代表の男――エクラシーは刀を片手に、太々しくアンノウンの前に立った。



* * *



 時は、ほんの少し(さかのぼ)る――




「…………それでは、シノのところに行きましょうか」


 この場には、もう1人の少年がいたのである。





「……流石に、死ぬかと思いましたよ……。

アンノウンよりも、あなたは強い……」



 戦いを制した少年が、次の目的への一歩を踏み出した途端――




 クククク……。


 イイゾ、ヨクヤッタ……。



 心臓が激しく高鳴り、(きし)むような(いびつ)(わら)い。



辰砂(しんしゃ)さん……!

急にどうしたんですか!?)



 それは、久しぶりの一蓮托生(いちれんたくしょう)の声だった。



「マエヘ……マエヘ……。

ソノサキ二ハ――ナニガアル?」


 しかし、その声色は明らかに、少年が知っているこれまでの傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な雰囲気とは異なっていた。





 アソコニ……ムスウノ【オド】。



 【タクサンノイノチ】。






「――ガッ!!!?」


 人間嫌い(しんしゃ)の闇にあふれた本性の目覚め。



「!?

おい、どうした!?」



 少年の意思は――この瞬間に()()した……。




「イマ……オマエノシンソウハオチタ……。

オタノシミノハジマリダ……」



 辰砂の声と、少年の深層の共鳴。



「……ま、まさかっ!!」


 少年の対戦相手――となりにいたアルシンは、刹那に真相を直感した。





〔イノチ……オド……ホシイ!!〕



 【人類の脅威であるバグの1体――アンノウン】が生まれたのは、それから間もなくのことだった……。




* * *



 時は戻り、現在に至る。



「バグ……それもアンノウンを育てていたとなっては、機関の存続が危ぶまれる汚点……!!

時間と金を無駄にさせ、あまつさえ機関も里も脅かす悪魔は、私の手で成敗してくれる!!」


「お、おい……っ!

ちょっと待てよ、あんたアッ、」



 アルシンは切れた叫びを飛ばした。



「……確かに……今のソイツはバグになっちまってる……!

……だけど、あんたの()()()()なんだろ……!?

あんたが、息子を躊躇いもなく殺すのかよ……!?」




 ……聞こえていないのか、エクラシーは問答無用で左手をまっすぐに空へと掲げ――



「てぇぇぇーーーーーー!!」




 ズドドドドドドドドドドドドドドド!!



 打ち込まれるおびただしい弾丸、ミサイル、光線、毒槍、鉄球、クナイ、矢、アイアンメイデン、電磁パルス 、蟹味噌(かにみそ)……etc.(エトセトラ)




〔!!!?!!?!!?!〕


 あまりに苛烈な攻撃の包囲網に、俊敏なアンノウンはなすすべなく集中砲火を受けている。




(事の次第を見てたんだろうに、コイツらは……!!

それに、あんな攻撃何発当てたどころで!!)




「ハハハハハハハハ!!

リエントの歴史で暗躍し続けたバグの最期にしては、無様だな!!」


 浮き足立つエクラシーは、酔っ払ったように着物を脱ぎ捨てて肌を露出させた。その肩から腰にかけては、大きな一直線の傷跡が走っている。



 エクラシーは身を大きく屈めて構える。

どう見ても邪悪としか思えない(くら)い気が満ちていき……全身の筋肉が盛り上がっていく。



 邪気を剣撃に乗せて。

アンノウンを刻んでいく、空中で繰り返されるダイナミックな演舞。



〔!!!!!〕


「――何ッ!?」


 エクラシーは狼狽えた。




〔…………〕


 打ち込まれ続ける攻撃の嵐が、鋼のアートが、突如アンノウンに発生した緋色の力場に吸い込まれていっているのである……。




「――どけ、ボケども!!

あんたらが刺激し過ぎたせいだ、とんでもねぇ一撃が来るぞ……!!」


 アルシンは、最期の力を振り絞って飛び込んだ。



(おれの左腕は――()()()()()()()()()()()!!

それをコイツに巻き込めば……!!)



 次の瞬間、




〔!!!!〕


 アンノウンの手のひらから――周辺一帯、宇宙(そら)へも広がっていく蒼炎……。




(コイツがこうなったのは……たぶんおれの行動が裏目に出たせいだ……。

間違えたおれの行動が、ここ数日コイツを張り詰めさせた。

そしてさっきの戦闘で精神を過剰に昂ぶらせて、タガを外させちまった……。

本性を露わにした辰砂にソレを利用されたに違いねぇ……。

おれが全部悪い……だから――おれ1人の命で止めなきゃならねぇ……!!)




 紅蓮と蒼の炎が瞬く間に交わり――




「あんたらは下がってろォォ!!」





 BURRRRRRRRRRRRN!!







リベレーションプレゼンター ~プレゼントにバグを~

3章8話 「アンノウン――その名はクノバグ」


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