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2章13話 「凶星」




〈もう来てる……!?

アンノウンはどこに……!?〉


 クノが視野を広げて周囲を確認しながら尋ねる。


 ドリアンは民家の屋根から地を見下ろして捜索。



〈すみません……場所は見つかりません……。

ただ、先日説明した大きな次元の歪み……。

それがラピッドタイプの発生から間もなくして消失し、異次元空間内に予測通りクレーターが生じました……。

これは……アンノウンが既にその町に発生したということだと思います……〉


〈ジェネラルから離れた座標に発生する可能性がある……ですよね!?

ぼくも二度のアンノウンの遭遇ではそうでしたし……〉


〈はい、しかし……怪物染みた隠密性です……。

アンノウンは肉眼もあらゆるセンサーも避けています……手強いです……〉



 クリアの念に重みが増した。


 そして、唾を飲み込むような音と共に、驚愕の新事実を告げてくる。



〈また、歪みが消失する直前……ほんの一瞬ですが、()()に分裂しました……〉



 3つ。それはつまり……。



()()かもしれないということだ、アンノウンは。

リ――〉


「うっ!」


 長官からの報せと同時に、念話が遮断された。



 クノの肉体に衝撃。


 鋭い斬撃が走ったような感触と痛み。



「くっ、ぐああっ……!」


 更に襲いかかる2連撃。


 どこから飛んでくるのか分からない。クノは一方的に攻撃を受けている。




「どうした!?」


 崩れ落ちたクノを目にしたドリアンが、焦った形相ですぐに駆け寄ってくる。



「な、何かに切られました!

近くにいます……()()()()()が!」


「……!」


 直後、ドリアンの体はクノの視界から消えていた。



「ドリアンさん!?」



 残ったのは、人を(かたど)った光の塊。




瞬爛(しゅんらん)」 【五行:火】


 ドリアンにしか使えない咄嗟の緊急回避用の天啓。


 不意打ちや狙撃、視覚からの攻撃すらもドリアンが本能で察知。すると、ニューロンデッキに刻まれたこの天啓がオートで発動し、光の速度で回避行動に移行する。



(さっきの戦闘でも思ったけど……この人、シノよりも速い……!!)



「チッ」


 身に迫る見えない攻撃をかわして再び姿を現したドリアンは、倒れるクノを抱えて一気に後方に飛んだ。




「大丈夫か!?」


 屋根の上に降り立った2人。


 ここから背後へと飛び降りれば、1番街へと近道ができる。



「ぼくはなんとも……丈夫な体なので。

ただ、ぼくのせいでドリアンさんの天啓の回数が……」


「違う、僕のミスだ。

クノ君、聞いてくれ」


 ドリアンは体に数ヶ所の切り傷が付いたクノの言葉をすぐに否定し、声色を低くする。




「君は、他の2体のアンノウンを探してくれないか?

クノ君よりも僕の方がコイツに向いているらしい。

コイツは……僕が相手をする」


 その言葉と面構えには一片の迷いもなかった。


(本気で言っている……。

だけど、相手はアンノウン……)


「僕1人ですぐに倒せる算段は既にできている。

それに君には、アンノウン2体を相手にできる見込みの賢者の石がある」


 ドリアンはクノの頭を撫でた後、肩に手を置いて顔を綻ばせた。



「……マインはルードゥスさんの承認がないと」


()()()()()と言っただろう?

自分で使いたい時に使えばいい。

何かあったら先輩の僕が守るし、責任も取る!!

僕は君の監視役という立場でここにいるしな」


「ドリアンさん……」



 きっぱりと言い切り、胸をドンと叩くドリアン。


 その姿と言葉は、クノの感情を刺激した。


(この人は、本当に……)




「できるだけ早くアンノウンを見つけてほしい。

だけどいいか、くれぐれも無理はするな」


(この人は本当に……いい人だ……。

その言葉も、志も、あなたの実力も信じます!)




「行ってくれ!!」



 クノは握り拳をドリアンの前にすっと突き出した。



「はい!

託して託されました、お願いします!」


 開戦前にした共鳴の動作を、今度はお互いにバトンを渡すエールに昇華させて返事をする。


「任せろ!」



 ドリアンとハイタッチならぬハイパンチを合わせて、クノは屋根から飛び降りた。



 1番街を目指して、新月の下を走っていく。




* * *




「さて……」


 クノと別れたドリアンは、早速屋根から跳躍――地上に降り立つ。



「すぐに方を付ける!

残光陣(ざんこうじん)」 【五行:土】


 瞑目したドリアンのオドが活性化。


 オドを儚く発光するチャクラとして体外へと放出し、僅か半径3mに展開。




 ……………………。




(そこかっ!)


 黙って静止していたドリアンは何かを掴んだのか、両目を見開き、



金光輪(きんこうりん)」 【五行:金】


 すぐさま金色に光る物質を投げ銭のように、ある地点へと飛ばした。




 !!


 眩い輝き。



 ドリアンが投げたのは、手のひらサイズに薄く圧縮した小さなオドの残滓(ざんし)



〔……!?!?〕


 それが着地した瞬間、目の前に出現したのはアンノウン。



〔……〕


 狂戦士のような激しい気性で地を駆ける、異様に鋭い爪のオレンジのバグ。


 前傾姿勢で立ち、肩を小刻みに気味悪く震わせている。


 陣で広げた高濃度のオドを(むさぼ)るように飛び込んできたそのバグは、可視化されてしまったのである。




(簡単な話だ、バグはオドを求める。

ならば、オドを体外へと展開し、超至近距離におびき寄せる。

オドに釣られたバグがこちらに来た時の風の揺らぎで位置を掴み、対暗所用天啓を当てて、光の元に引っ張り出す。

聞いていた通り……コイツはオーブがない。

だが、姿が見えてしまえば、後はこちらのもの!)


 ドリアンは一気に、一直線に、



閃流(せんる)」 【五行:水】


 滝のような怒涛(どとう)の激しい勢いで踏み込み。


 獰猛(どうもう)バグに一閃。



〔!〕


 光の横一文字斬(よこいちもんじぎ)りで斬り落とされたバグの両腕。

武器と思われる爪の攻撃は封じ込められた。



(――何!?)


 だが、切断された両腕がすぐさま修復されていく。




「……絶漲刃(ぜっちょうじん)」 【五行:木】


 ドリアンは繋げた次の天啓に賭けた。


 煌星(こうせい)を握るオドを纏った両手の力が、鋼に伝わった。


 刀身が巨樹(きょじゅ)のように天へと伸び……容赦なく振り下ろされる唐竹割(からたけわ)り。一刀両断裁きの鉄槌。



〔!〕


 縦に真っ二つになった獰猛バグ。

しかし、またしても巻き戻しをするように体が再生されていく……。




(速攻で跡形もなく斬らなければならないのか!?)


 ならば、最高速の技を使うまで。



「天啓。

伝煌切華(でんこうせっか)」 【五行:火】


 先程路地裏で見せたあの芸当。

今度はそれを3倍以上の速度で残像を発しながらやってのけた。


 辺り一帯を支配する、燦々(さんさん)と輝く光の軌跡。

再生能力を上回るスピードで、獰猛バグをバラバラの木っ端微塵に斬り裂いていった……。



〔!?!??!〕



* * *




 7秒後……斬撃回数200回。




「隠密性と再生力に特化したバグ。

アンノウンは1体ごとに能力が異なるようだな。

侮れないか……」


 そう口にしながらも、静まり返ったバグ亡き地に佇むドリアンは息一つ乱れていない。



「クノ君……今行く!」


 静かに納刀(のうとう)し、背後を睨む。


 少々の困惑と手間取りがありつつも、ドリアンは見事にアンノウンの1体をあっさりと倒してしまった。




* * *





(…………。

何度念話を試みても誰にも繋がらない。

これはアンノウンによるものか……)



 屋根の上を飛び交いながら、町中の様子を探るドリアン。



 やがて、あるものを目にして足を止めた。



「あれは!」


 ドリアンは1番街の自然公園へと降下。

噴水の前に座る人物の元へと足早に向かう。






「何をしているんです!

早く避難を!」


「あんた、賢者の!

何しに来たのよ!?」


 憎しみこもった瞳を剥き出しにする幼女のような成人女性(バリー)

着用している赤い上着の両ポケットが僅かに膨らんでいる。


 バグが……アンノウンが闊歩(かっぽ)しているというのに、何故こんな所にいるのだろうか?



「それはこちらの台詞です!

今は非常に危険なバグが町をうろついている可能性が高い!

早く……あそこのトイレでも構いませんから避難を!」


 ドリアンの必死の訴えも、彼女は鼻で笑って一蹴(いっしゅう)した。


「いつまでそうやって、パフォーマンスするつもり?

アタシは今日はここで寝るから帰って!」


 テントやダンボールハウスの中にいるのであれば、バグのオドセンサーからは逃れられる可能性はあるが、彼女は無防備な状態だ。このままにしてはおけない。


「今だけは僕の言うことを――」



 背後で大きな震動。


 何かが降ってきた音。




(……ウグッ……!!)


 凍りつくような異様な緊張感が背中を満たす。



(……()()()のおでましか!!

背後からでも感じる凄まじい恐怖心!

どう考えても、さっきのアンノウンとは桁外れの強さを保有しているに違いない!)


 それはおきゃんなバリーも同じだったようで、青ざめた顔でガタガタと震え始めた。




「…………動かないで……」


「…………(コク)」


 バリーのさっきまでの威勢と反抗的な態度は、すっかり消え去っていた。


 賢者でもない彼女にもジェネラルの比ではない恐怖を感じ取れている。それもそのはず、相対しただけで抱くこの感情はこの世の次元を超越しているからだ。




(何がいる?)


 ドリアンは音を立てずに振り向く。



〔…………〕


 煌びやかに体を黄色く発光させる、おかっぱ頭の幼い少年が俯いていた。



(髪の毛……小さい……子供?

…………いや、それでも……()()だ!!)



 新たなアンノウン――キッドバグが、ゆっくりとこちらを見上げる動作。



(――!!)


 ドリアンは攻撃が飛んでくることを敏感に察知。


 背後に跳躍し、



「……ぶ!」


 掴んだバリーを噴水の対岸の縁へと投げ飛ばして無理矢理身を隠させ、同時に抜刀(ばっとう)



「瞬爛」 【五行:火】


 またしてもオート回避の発動。


 これが出るということは、素のドリアンの技術では避けられないということ。その代わり、発動すれば必ず回避ができる。




「?!?」



 ………………はずだった。




 キッドバグの()()()が見開かれ、



 爆炎。


 噴水の真上で突如発火現象。





 ストン。



 燃え盛る炎の中に、赤みがかかった()()が転がり落ちた……。




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