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2章2話 「リビルド天啓」



 クノとシノがタブレットで転送された位置は、村のど真ん中。



「久しぶりね、あなた達」


 黒スーツに青ネクタイ、長身のピンク色のロングヘアの女性。


 5年前からお世話になっている防衛省のレディクだ。

相変わらずの特盛りナイスバディ。



「住人の避難誘導は完了しているわ。

それと、各民家や施設内にはバグ検知センサーを備えた自動機関銃を設置したから、少数ならば侵入を許しても対応は可能よ」


 かなり早くに現場に到着して、先んじて手を打ってくれている防衛省がいてくれることによって、クノ達賢者はバグと惜しみなく戦える。


 それは、あのいけ好かないハンディーやクリアのバックアップだって同じ。特にクリアのバグ観測は外れたことが()()無い。




「いつも迅速な対応、助かります」


「後は、わたくし達でなんとかしますのでお下がりください」


「了解!

頑張ってね!」


 レディクに深々と礼をして後退させた兄妹は、深呼吸……。




〈いけますか、シノ?〉


愚問(ぐもん)の無論!〉


〈よかった〉



 念で波長を合わせていると、




〔……〕


〔……〕


 虚空の次元空間が裂けるように現れたバグ。


 銀色のラピッドタイプと、金色のマグヌスタイプが、それぞれ30体ずつ群がって出現した。


 


「この2種の相手をするのは……1年ぶりですね。

手分けして、気を抜かずにいきましょう!」


 両手に装着した白銀のガントレットに力を込めて。

クノは火力重視のマグヌスタイプへと向かっていく。



「すぐに終わらせてみせるわ!」


 赤紫の靴のつま先でトントンと地を軽く叩いて、体を慣らして。

シノは機動力特化のラピッドタイプの集団へと駆け出した。




* * *



「!!」


 急に怖気(おじけ)づいたのか、クノは直立不動で手足をだらんと下げて固まった。


 そんな彼の胸に、黄金の炎。



〔!〕


 スーツの上腹部が焼かれて全壊(ぜんかい)。上半身も全開(ぜんかい)。クノの鍛え抜かれて引き締まった肉体美が露わとなった。


 マグヌスタイプの攻撃。

並の賢者が相手にするには、最も危険なタイプと称される程の超火力。


 ご覧のように、一撃受ければ耐久性の高い賢者の黒スーツ――【賢衣(けんい)】も、あっという間に()()微塵(みじん)




根枝(こんし)」 【五行:木】


 【天啓】の言葉なくいきなりの発動。


 クノの体内の脳細胞が、エンジン全開で活性化。

一度使用した天啓を夢想するだけで、脳内のアーカイブから発動できるシステム――【ニューロンデッキ】。咄嗟の防衛や早撃ちに使えるが、言霊を介する場合よりも威力が僅かに落ちる。



(相変わらずデタラメな威力……だけど、大したことない!)


 クノの体を焼却させるはずだった強大な炎が、粒子に変質。

粒子は強化及びダメージ吸収のエネルギーとなって、クノの肉体に還元された。



突火(とっか)」 【五行:火】


 続く天啓。

間髪(かんはつ)()れずに、折り曲げた右肘(みぎひじ)をバグのオーブへと突き出す外門頂肘(がいもんちょうちゅう)



 オーブに頂肘が到達寸前。


〔……!〕


 今度はクノの右肘が烈火の如く燃え上がった。

オーブを容易く砕いた炎の頂肘は伸びて貫通し、背後で直線上に並んでいた3体のバグを葬った。



還堀(かんくつ)」 【五行:土】


 天啓はまだ続く。

クノは残っている内の1体の両肩を掴んで、凄まじい筋力で押し倒した。


 バグの背中が地上に打ちつけられた瞬間、周辺に衝撃波のカーテンが地から走る。

クノが押し倒したバグと、他の15体のバグを土に還した。



栄乱(えいらん)」 【五行:金】


 天啓を3回どころか、4回目の連続発動。


 クノは両腕を目にも止まらぬ勢いで殴り回して、鉄拳のカッターを形成していた。チェーンパンチの嵐である。


 防御と攻撃を同時に行い、次々と身を固めて飛びかかってくるバグの数を着実に減らしていく。



水破(すいは)」 【五行:水】


 そして……遂に5回目の天啓発動。

これで、五行全ての属性の天啓を使ったことになる。



 バグとクノの体が至近距離に重なる。


 音も風もなく、オーブに添えられた握り拳。



〔!!!?〕


 殆ど予備動作もなく、ちょんと押すように打たれた寸勁(すんけい)は、オーブを外からではなく、内側から完全に破裂させた。

人間に使おうものなら、体内の水分を逆流させた後に破壊する。



 クノが現在使用している天啓は、殆どが自身が幼い頃に身につけた武術や技術に由来したもの。特に、根枝は()()()()の天啓。

あんなだが、ルードゥスは使用者が最も活かせる形の天啓を次々と発明しているのだ。




 マグヌスタイプは全滅。


 クノの天啓の使用上限は、()()


 残りの使用回数は、()()



* * *



 一方、ラピッドタイプ30体と交戦するシノ。



〔!〕


「――ッ!」


 そのスピードは如何なる賢者といえど、天啓なしで喰らいつくのは至難の業。


 足技を繰り出そうとしたその足に、銀の触手が絡み付き、シノは仰向けに転倒。




〔!?〕


 ……したかのように見えたが。

柔軟な関節からの体さばきと、高い瞬発力から繰り出された鮮やかなサマーソルト。シノは無傷でバグの拘束から抜け出していた。



(久しぶりに戦ったけど――何年経っても、進歩のない速度ね!)


 上空からの見下しの微笑み。

そのままニューロンデッキからの天啓を使用する。



「イグニスレオ!」 【五大:火】


 空中戦を得意とするシノは、滞空状態のまま右足を前方に大きく蹴り出した。


 その様はとても12歳の少女とは思えない程勇ましく、荒々しく。任侠映画の登場人物のように漢気に溢れていた。


 彼女のヤク……ではなく喧嘩キックの軌跡が、火炎の獅子のオーラを生み出す。

獅子のオーラは蹴りの軌道に合わせて空を駆けていき、バグ4体のオーブを焼却。



「トップ!」 【五大:風】


 兄と同じく、休む間もなく次の天啓。

高機動を誇る相手の牙城を崩すには、こちらに向いた風向きを絶やさずに早技の連撃あるのみ。


 滞空を尚も維持するシノは、体を180度に縦回転。


 逆さまの体勢からの、独楽(こま)のような高速回転。

シノの体を覆うように発生した巨大なサイクロンが、20体のバグを飲み込んだ。



「ウェーブレイド!」 【五大:水】


 再び体を180度の縦回転。

左足に固着した重い水塊エネルギーが、トリッキングのtsunami(ツナミ)と共に高質量の急流刃となって飛んでいき、バグ3体撃破。



「ストラーダ!」 【五大:土】


 シノの長距離スライディング。

土を抉って滑走する彼女の両サイドに、地層の防壁が次々と形成されていき、残るバグの逃げ道を塞ぎつつ急接近。



「フリューゲル!」 【五大:空】


 クノと同様の5回目の天啓。


 彼女の場合は、五大元素全属性を発動したことになる。



 シノの脚部に白い両翼。


 先程作り上げた地層に壁キックして、きりもみ回転で滞空。

シノのオドを感知できずに地上で狼狽えているバグ数体と、1本の軸線で並んだ。


 オーバーヘッドシュートのフォームから放たれた両翼がダイブ。

地を駆ける翼が飛翔して蹂躙(じゅうりん)



〔……!!〕



 ラピッドタイプ全滅。


 シノの天啓の使用上限は、クノと同じく()()


 そして残り使用回数も同じく、()()



* * *



 陰陽(おんみょう)の五行。


 【木】は燃えて【火】を生み出す。


 燃えたものは灰になって【土】に還る。


 土の中からは【金】が掘り出される。


 金は凝結(ぎょうけつ)により【水】が生じる。


 水は【木】を成長させる。


 以降は最初に戻り、無限ループの円環。



 五行の法則で使用される5属性は、このようにある1つの属性が別の属性1つを生み出せるサイクルが成り立っている。


 そのサイクルに従った順番で天啓を立て続けにコンボとして発動することで、単発で使用する時よりも威力が上昇していく仕様。

更に、そのコンボが途切れるまでに発動した天啓は、【一律1回】としてカウントされる。


 これが、都市部をバグに襲撃されたことへの対応として、ルードゥスが数年かけて開発した天啓の新ルール――【相生(そうじょう)の関係】である。




 同様に錬金術の五大元素。


 【火】は凝結して【風】となる。


 風は液化から【水】に。


 水は固化して【土】になる。


 この4つの元素に続く最上の属性が、エーテルとも称される【空】。


 そして神話の最後に【火】が世界の全てを焼き尽くして【風】だけを残し、そこからまた【水】【土】と再生されていく。



 五大元素の属性をサイクル通りに発動することで、相生の関係が作用した時と同じボーナスが獲得できる。


 錬金術の偉人の名前から取った【プラトンの関係】。




 どちらの関係を用いるにせよ、最初に使用する天啓の属性はどれでも構わないが、次に繋げる天啓の属性は上記のサイクルに従わなければならない。


 そしてこれらを極めるには、ニューロンデッキのようなシステムも上手く活用して、どの天啓を使えば素早く、効率よく次の天啓へとコンボを繋げられるか、各賢者が自分の戦法と照らし合わせて研究と鍛錬を重ねる必要がある。




 何はともあれ、ここが忌まわしきアウェイ村であろうと。


 強力なタイプのバグだろうと。


 今のクノとシノには敵ではなかった。




 ……それが、今まで倒してきたバグであるならば……。




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