if ベーゼ・ハイエンスが王女に恋していたら
当然のことながらなろう運営の方から利用規約14条6項に抵触する部分を確認されました。
そのため、内容が変更になっています。
筋書きは全く同じでベーゼの感情が違うだけで、王女の態度も変わってしまいました。
元々の設定はベーゼは王女にべた惚れでしたが、書きすすめると王女を愛するのは難しいとに気が付きました。
感想文に王女を愛していたベーゼを読んでみたいと書かれていて、ちょっと面白いかもと思って出来上がりました。
もしも・・・もしも・・・。のおはなしです。
学園の卒業間近の頃、第二王女と初めての謁見を許された。
王女は私に名前を尋ねてくださった。
緊張して声がかすれてしまったけれど、なんとか答えることができて、王女が立ち去った後、その場に座り込みたくなった。
王女の護衛騎士に選ばれたと祖父に報告すると自分のこと以上に喜んでくれた。
なのに祖父は突然胸を押さえて倒れて、そのまま死んでしまった。
葬式の間、ミランダはずっと私に寄り添ってくれ、励ましてくれた。
けれど、私の心は虚ろで少しミランダのことが煩わしく感じてしまった。
両親は祖父の葬式に顔を出したら祖父が追いやった屋敷へと直ぐに帰ってしまった。
祖父の部下の人に「お祖父様は満足されて逝かれたのです」と言ってもらえたことだけが私の救いだった。
学生の身で突然騎士爵を継ぐことになり、家のことを把握するだけでも私は精一杯だった。
そんな中でのミランダとのデートは私を疲弊させるものでしかなかった。
ミランダは私を気遣ってくれていたが、それが余計に神経に触ってしまう。
ミランダは何も悪くないと、思えば思うほどミランダへの気持ちが離れていった。
学園の卒業式が終わった翌日に王宮に呼び出され、王女との顔合わせを済ませ、ローテーションが決められた。
緊張の初日を迎え、王女は私のことを気に入ってくださったようで、私に「側へ」と言ってくださった。
交代の時間がやって来て、王女の側を離れようとすると王女に「側にいて欲しい」と懇願された。
私は護衛執務室で泊まって、明日朝一番から側に付かせていただくことを約束する。
私を気遣うのではなく、奔放に振る舞う王女を自由で羨ましく、そして好ましく思えた。
翌朝王女に付くと「約束を守ってくれたのね」と天使のような微笑みを私に向けてくれた。
その日も王女の我儘は護衛騎士を困らせたが、妹とはこんなものだろうか?と微笑ましかった。
その日の夜も王女に「側にいて」とお願いされ、メイドの目を盗んで唇に触れるだけのキスをされる。
とても驚いたけれど、唇が離れて真っ赤な顔の王女を見て、思わず私から深い口付けを落としてしまった。
「申し訳ありません!!」
「ううん。嬉しかった。謝らないで」
「はい」
次の日も次の日もメイド達の目を盗んで何度もキスをして私の心は日毎、王女に奪われていった。
ペンス伯爵が「明日結婚式なのにどうするのか?!」と護衛騎士詰め所に怒鳴り込んできた。
ミランダのことなどすっかり忘れていた私は今更、結婚式と言われて戸惑ってしまう。
結婚を断ってもいいだろうか?!
けれどいつかは王女も嫁入りしてしまう。
「ミランダにかならず行くからと伝えてください」
ペンス伯爵に手紙と言付けを頼んだ。
「ベーゼ、お願い。私を置いて行かないで。私の側にいて」
「婚約者との結婚に愛はありません。私が愛しているのは王女殿下だけです」
「ごめんなさい。それでもベーゼを誰にも渡したくないの。我儘で本当にごめんなさい」
私の腰に巻き付く腕が、私を離すまいと力いっぱい抱きしめているのが分かる。
「王女殿下は私を置いてお嫁に行ってしまうでしょう?」
「ベーゼが行くなと言うなら行かないわ」
「そんな事できないと分かっているでしょう?」
「そんな事ないわ。ベーゼに私のすべてを貰ってほしい」
王女は恥ずかしそうにドレスを脱ぎ、私に全てを見せた。
王女から目が離せなくて、それでも私が手を出せずにいると私の手を取り、ベッドへと誘った。
激しいキスの後、見つめ合い、私達は一つになってしまった。
ミランダとの結婚式の当日、結婚式に出席できない旨を書いた手紙を送った後、私と王女は一日中愛し合った。
出入りするメイドや側近たちのことなど気にならず、愛し合い、後悔した。
王女はメイド達に口止めするために、お金を公費で支払ってしまう。
私達はいけない、駄目だと分かっていても止めることはできなかった。
貪り合うように愛し合い、疲れ切って眠った。
前々から王女は私の姿が見えなくなると不安がっていたが、愛し合ってからは一層私を側に置きたがった。
なのに、王女が時折私に大した用事でもないことを言いつけ、外に出す。
どうしてなのか不思議で仕方なかった。
王女の態度に不安になり、急いで用事を済ませ戻ると、王女はソファーの上で小さくなって耳を押さえていた。
そんな王女が居る室内で、嫌がるメイドがカインとアベルに押さえつけられていた。
「何をしているんだ!!」
カインとアベルを引き離そうとしたら、王女が私を呼んだ。
「ベーゼ許して。こうするしかなかったの!!貴方にこんなところを見せたくなかったのに。ごめんなさい」
「どうしてこんな酷いことを」
「どうしても必要なの。この子達、私達のことを陛下に話すって・・・」
「だからといってこんな酷いことを!!」
「ごめんなさい。でも、初めは嫌がっても最後には喜ぶから・・・ベーゼを守りたいの!!」
「そんな・・・」
「ごめんなさい!!」
王女は私を遠ざけ、私の耳をふさいだ。
「もう二度とこんなことはしないでください!」
「ベーゼ。ごめんなさい。でも私はベーゼを守りたいの」
「こんなことをしたって・・・」
私のことは守りきれない。と王女に伝えることはできなかった。
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いつか来ると思っていたこの日がとうとうきてしまった。
陛下に愛し合っている姿を見られてしまった。
私、カイン、アベルは地下の一般牢に入れられ、毎日事情聴取される。
カインとアベルはメイドたちにしたことを。
私は、王女にしたことを。
ある日、陛下が一般牢のわたしのもとを訪れられた。
「子供を作れない処理をして、東棟の最上階に閉じ込められる生活を選ぶか?」
そう聞かれて、私は喜んだ。
「私は王女殿下を愛しています。王女殿下に殉じたいと思います」
けれど王女には会わせてもらえないまま地下牢から出されてしまった。
「陛下!どうか王女のお側に」
陛下は冷たい目をする。
「二週間の謹慎処分だ」
「陛下!」
「ベーゼはミランダ嬢を迎えに行け!!それらが済んでから考える」
「・・・分かりました」
久しぶりの屋敷に戻っても何の感慨もない。
王女のことが気になって仕方ない。
きっと怖くて私を呼んでいらっしゃる。
「坊ちゃま、どうかミランダ様をこちらのお屋敷にお迎えください」
「私はもうミランダを愛してはいない!!」
「愛がなくても、上手く付き合っていくのが貴族というものです」
「だが・・・」
「お願いいたします。長きに渡って坊ちゃまがいらっしゃらなかったために、ハイエンス家は機能不全を起こしております。それを整える方が必要なのです」
私の代でハイエンスを潰すわけにはいかない、のか・・・?
でも、それはもう無理なのじゃないだろうか?
「どうか、ミランダ様をお迎えください!!」
あまりに必死なお願いに、聞き入れるしかなかった。
「・・・分かった。行ってくる」
「ありがとうございます!!」
使用人達の喜ぶ姿に、私一人が我慢すればいいのだと言い聞かせた。
ミランダを迎えに行くと想定外のことばかりを言われる。
婚姻していなかったこと。
もう愛されていないこと。
婚約破棄したいこと。
使用人達のことを考え、なんとかミランダに諦めてもらおうと努力したが、心から望んでのことではなかったため、婚約破棄に簡単にサインをしてしまった。
屋敷に戻ってそのことを伝えると、その場に崩れるように何人かの使用人が膝を突いた。
「坊ちゃま・・・貴方の命の危機でございます」
「そう、だな」
「ご自分のされたことは分かってらっしゃるのでしょうか?」
「勿論分かっている」
「どうして第二王女に手を出してしまったのですか?」
「すまない。愛しているんだ」
「それは知っております。それを我慢するも貴族というものなのではないのですか?」
「そう、かもしれないな?」
「はい・・・」
きっと王女でなければと皆思っているんだろう。
「本当にすまない」
「私は陛下に殺されることになる」
「間違いなく。坊ちゃまは第二王女を傷物にして、隣国との婚姻を駄目にしてしまい、我が国に大きな損失を与えてしまいました」
「そう、だな・・・」
「私共は何があっても坊ちゃまを守りたかった」
「すまない。この家の後始末を始めてもらってもいいか?」
「坊ちゃま・・・」
「両親には頼めないし、お前達に頼むしかない。私が死ぬまでに全てを片付けてくれ」
「・・・かしこまりました」
翌日、陛下の前で膝を突きお願いした。
「私が処分されることは分かっています。最後の望みを叶えていただけませんでしょうか?」
「なんだ」
「第二王女殿下とご一緒に逝かせてください」
陛下は躊躇った後に「諾」と返事をくれた。
東の塔へ足を踏み込むのは王族と、その世話係だけと決められている。
その階段を一歩一歩踏みしめて登る。
この棟の天辺に王女が待っている。
やっと王女に会える喜びがまさるが、会った途端に死ぬ運命は呪えばいいのか。
フラップドアから差し出される王女の手が痩せ細っていることに胸が痛む。
扉が開かれ、私が中に入ると扉は閉められた。
王女は私を見て「ベーゼ!!」と叫び、涙をポロポロと零した。
「王女殿下!!今までおまたせしてしまって申し訳ありません」
「ううん。いいの。こうして側に来てくれただけで」
私は王女を抱きしめ、落ち着くまで背を撫で続けた。
とりとめもなく王女と別れてからの話をして、私達は共に逝くことになると王女に伝える。
「ベーゼと一緒なら怖くないわ。ベーゼを守れなくてごめんなさい。許して」
「もったいないお言葉です。私こそ王女を守れなくて申し訳ありません」
「ふっふっ・・・ベーゼの匂いがするわ。私、幸せだわ」
「私もです」
ゆっくりと愛し合い、互いを堪能する。
何日か経った頃、食事に小瓶が二つ並んでいた。
「私がベーゼを誘惑しなければこんなことにはならなかったわね」
「いえ、遅かれ早かれこうなっていました。私も王女様を愛していますので」
「最後にキャリーって呼んで」
「キャリー・・・自分の命より大事で、愛しい人」
「ありがとう。ベーゼが私にとっても何よりも大事よ」
私は腕の中に王女を閉じ込め、小瓶の蓋をとって王女の口の中に薬液を流し込んだ。
自分の分の蓋を取り、私も飲み込む。
きつく王女を抱きしめると「愛しているわ」と王女の最後の言葉が聞こえ私も「愛しています」と伝えた。
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もしも・・・もしも・・・
きつく王女を抱きしめると「愛しているわ」と王女の最後の言葉が聞こえ私も「愛しています」と伝えた。
重い瞼がゆっくりと開かれる。
「王女殿下!!どこか苦しいところはありませんか?」
「どうして?私達毒を飲んだのよね?」
「仮死状態にする薬だったそうです。私達は東棟から出され、王都から遠く離れた離宮に連れてこられました。王のご温情でございます」
「お父様の?」
「はい。私達二人が手を取り合ったこと、毒を二人でいただいたことで、罪を許されました。ですが、私達はもう死人です。この屋敷から出ることは許されません」
「それでもいいわ!!ベーゼと一緒なら!!愛しているわ!!」
「私も愛しています」
必要最低限の使用人と私とキャリーの閉じた世界。
毎日が幸せで、夢の中の出来事のように感じる。
陛下のご温情に毎日感謝して私達は日々を過ごした。
我儘だったキャリーは鳴りを潜め、私を思いやり、使用人達を思いやった。
東の塔の暮らしが王女の体を弱らせていたのだろう。
王宮であれほど元気だったのが儚くなった。
穏やかで幸せな時間は長くも感じたし、短いとも思った。
七年、ベーゼと王女は喧嘩もすること無く互いを慈しみ合い、閉じた世界で愛し合った。
王女が亡くなると、ベーゼは王女を美しく飾り立て、その横に横たわり、胸を一突きして王女の下へと旅立った。
if ベーゼ・ハイエンスが王女に恋した場合。いかがでしたでしょうか?
BAD ENDをご期待いただいた方には申し訳ありません。
ベーゼが王女を愛していたら王女は他の誰とも愛し合わなかったと思います。
初めて人に愛されたから。
すると何故、結婚式に行くと言ったのか、愛していると書いたのかが辻褄が合わなくなりました。
必ずどこかで不都合が出てくる本編を恨みました・・・www
if以外では王女もベーゼも間違いなく処刑ENDで亡くなっています。
『王宮の出来事』はこれにてお終いです。
お付き合いいただきありがとうございました。
誤字脱字報告ありがとうございます。感謝しています。