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7 横山さんは神界経由


 両親が亡くなった後俺だけが病院を退院する日に父の兄、伯父さんが迎えに来ていた。そのまま伯父の家に引き取られ暮らすことになった。

 俺が住んでた家は売りに出されそのお金と両親が残してくれたお金は遺産として俺の手元へと渡った。


「ねえ、なんでうちで面倒見なきゃいけないの?うちだってそんなに余裕があるわけじゃないのよ!」

「仕方ないだろ、比呂君はまだ中学生だぞ。誰かが面倒見てやらないと」

「それは分かるけど、あなたの会社不景気でお給料減ってるのよ。子供たちの学費とかもあるのに…… そうだ、比呂君は遺産があるんでしょ、だったらそれ貰って……」

「ばか!それは比呂君の将来のために……」


 夜トイレに起きた時ダイニングルームからそんな会話が聞こえてきた。

 

「ああ、こっちの世界でも足手まといってことか……」


 その後も伯父家族とは馴染むこともなく、俺は中学三年の時に家を出ることを告げた。

 世話になったお礼を兼ねて遺産の半分を渡すことにし、その代わりに高校入学とアパートの保証人になってもらうことを条件にすることで、渋ってた伯父は納得してくれた。

 伯父の奥さんの明らかにホッとした表情が[ニケウイング]に追放させられた事を思い出させた。


 * * *


「あっ、ごめんね急に不躾なこと聞いちゃって……」


 急に黙り込んだ俺に気を悪くさせたと思ったのか、横山さんは手をわたわたさせながら謝罪してきた。


「大丈夫だよ、ま色々有るってことことだよ」

「うん、ごめんね。私高校卒業したら施設出なくちゃいけなくて、一人暮らしになるからちょっと気になっただけだから」

「施設?」

「うん、養護施設。小さい頃親の虐待でね」

「……」

「色々有るってことだよ」


 ニコッと笑う横山さん。サラリとすごい情報を言ってきたが、俺はどう答えたものか悩んでしまう。


「そうだな、人それぞれだよな」


 果たして、答えとして合ってるのかどうかわからない返事しかできなかった。気まずい……


「そ、そうだ。女神に会ったって言ってたな」


 もう、話を変えて場の空気を変えるしかない。


「うん神界って所で会ったよ。う~んどこから話したら良いかなぁ」


 そう言って、横山さんは焚き火の向こう側を流れる川をじっと見つめて、あの魔方陣が現れた後の事を話し出した。


 * * *


  ただただ白い、真っ白な世界。雪山で起こるホワイトアウトがこんな感じだったと思う。思うというのは友達の家で見た映画がそんな感じだったからで、実際にホワイトアウトなんて経験したことが無いから。


 でも風もなければ体に纏わり付く温度も湿気も感じられない、呼吸はできてるけど酸素があるようにも思えない。でも私は存在できてるしとても不思議な空間、まるで異世界小説に出てくる神界みたい…


「あれ? もしかして私死んじゃった?」


 思い出すのは学校帰りに突然足元が光った事と、思わず高橋君の腕をつかんだ事。

 急いでいる周りを見渡すけど高橋君は居ない。というか白一色の世界だけ。


「死んでいませんよ、横山絵美さん」

「ふえっ!!」


 突然声が聞こえました。と思ったらいつの間にか綺麗な女性が目の前に。銀の髪が足首まで伸びていて、一枚布でできているような白のロングワンピースを着ている。

 髪と同じ銀色の長いまつ毛が優し気な瞳にとても似合ってるね。例えが悪いかもしれないけど、美人のコスプレイヤーって感じ。

 体の周りに仄かな光を纏っていて、そのせいなのか不思議と驚きよりも安心感の方が勝った。

 そして考えられるのは--


「えっと、神様?」

「私はこの世界の管理を任されているエスメリルと申します。この世界では女神とも呼ばれてます。絵美さんはこの世界に召喚されました」

「異世界召還ってこと?」

 

 さすがに[異世界召還来たーー]とは成らなかったよ。小説ではよくある事でも自分の身に降りかかると戸惑ってしまう。


「この世界の者がこんな事をしてしまい申し訳ありませんでした」


 女神さまは深々と頭を下げ謝罪をしてきたけど、そんなに頭を下げても長い髪形が崩れ無い事の方が気になりますよ。


「そんな、頭を上げてください。取り敢えず今の状況を教えてもらえますか?」


 こういう時、異世界小説でも情報収集は必須だよね。


「そうですね、まず絵美さんはガリアス帝国により召還されました。しかしながら私は他所の世界の人間を拉致同然に召還することを許しません。なのでその前に由美さんをこちらへお招きさせていただきました」


 ガリアス帝国、直ぐに脳内メモに書き込んだ。そしてその前にここに呼んだということはーー チート授与?


「迷惑をおかけしたお詫びに、由美さんには無理なく生きられるように私の加護を与えようと思います。受けてもらえますか?」

「もちろん!!」


 加護来た~。これは喜んでも良いでしょ。

 何せいきなり知らない世界に行くんだから貰えないときついよ。


「この世界に行く前に何か質問はありますか?」

「そうですね、その前にこの世界の言葉を理解する能力、どんな人間がいるのかを知る能力、あと沢山荷物を持てるカバンとか貰えたり出来ます?」

「ああ、知らない世界ですものね…… 分かりましたその願いは叶えましょう」


 やった、図々しいかと思ってダメもとで頼んでみたけど貰えるみたい。



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