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2 レオン


「レオン、君には我がパーティから抜けてもらう」

「え?」

「今後我々[ニケウイング]はダンジョンの下層部へと進行する。しかし、君の実力では無理だ。ここを去り新しいパーティでも探してくれ」


 ダンジョン中層部を短期間で攻略して拠点へと戻ってきた[ニケウイング]は、今もっとも期待を集めている冒険者パーティだ。

 そのリーダーであり、レオンの幼馴染であるイルマからの突然の言葉だった。


「なんで? 確かに俺の基礎ステータスがみんなより低いのは理解してる。だけどそれを踏まえての立ち回りや俺のスキルの運用で今まで問題なくやってきたじゃないか」

「今まではな。レオンのスキルは確かに役に立っていたよ」


 サブリーダーのデニスがイルマの代わりに口を開く。歳は二十歳。色々と表に立つイルマに代わり、パーティの細々な事をよくみている落ち着いた男だ。


「だが基礎ステータスが低くすぎる。と言うかレベルが上がるのが遅すぎるんだ。すでに君は我々のスピードについて来れなくなってるのは自分でも分かってるのだろ? 先程も言ったが今後我々は下層部へと行くが、君には無理だ」

「でも、それでも」

「前々から考えていた事だ、すでに君の代わりのメンバーも見つけている」


 俺よりも頭ひとつ背の高いデニスの視線が冷たい。


「ふざけんな! この[ニケウイング]は俺とイルマで立ち上げたパーティだぞ。なんで……何故俺が出て行かなきゃならないんだよ!」

「レオン、強い魔物相手に身を守れるのか?」

「は? そんなのお前たちほどの前衛がいれば俺の所に魔物が来ることなんて無いだろ。それがパーティだろ!」


 俺はもう一度イルマの顔を見る。怒っているのと同時に助けてと懇願するような顔をしてたと思う。

 だが、イルマはこちらに背を向け扉のほうへ向かうと


「君は皆の足を引っ張ってるのだよ」


 そう言って部屋を出て行く。その言葉は今までに聞いた事ない低い声だった。


(鑑定の儀でわたし剣技のスキルだったぁ)

(おお!じゃあ、僕の弱体化スキルで弱らせた魔物をイルマが倒せばお金稼げるね)

(二人なら強くなれるね)

(よし、将来は一番強い冒険者になってこの村を有名にしよう)

(うん! レオンと一緒に強くて有名な冒険者になるー)

((おー!!))


 ピシッ……バリンッ!!


 幼かった日、小さな村で誓った夢。

 冒険者になってからも二人で高みを目指そうと誓い合い、笑い合った。

 その思い出は、突然にヒビが入り音を立てて壊れていった。


 「一人でも強くなることだな。俺たちくらいに強くなればまたここに戻す事も考えてやる」


 デニスの手が俺の肩をポンと叩き扉をあける。出ていけと言ってるのだ。


 ふざけんな…ふざけんな、ふざけんな!!

 ここまで頑張ってきたのに役立たず扱い? ふざけんな!!


 気がつけば俺は部屋をとびだしていた。

 もうここには居られない。ここから追い出された。

 ただただ悔しくて、拠点の出口を目指して走る。


「兄ちゃん! お兄ちゃん待って!」

「パルマ?」


 よく知った声に呼び止められて、少しだけ我に返った俺は足を止めて振り返ると、うっすらと涙を溜めた少女がいた。

 俺の二歳下で、赤いベレー帽が似合うパルマは【召喚】のスキルを持つ。契約した魔物を呼び出し、斥候や遊撃などマルチに活躍する珍しいスキルだ。

 立ち位置は俺と同じ後衛職になるため、パーティに入った当初は俺が教育係となり世話をしていたからか、今ではお兄ちゃんと呼ばれる程に懐かれている。

 一緒に訓練したり買い物に行ったり、雷が鳴る夜には俺の部屋に来て一緒に寝た事もあった。妹がいればこんな感じだったのだろうか。


「ここ出ていくの?」

「話し合いを聞いてたのか?」

「うん、部屋の外まで声聞こえてたから」

「そうか。聞いての通り俺は追放されたからな。ここには居られない」

「私も行く! お兄ちゃんと一緒がいい」

「は? パルマは追放されてないだろ」

「お兄ちゃんに会えなくなるのはヤダ」


 慕ってもらえるのは正直嬉しいが、今はそれが煩しかった。

 同じ後衛職でもパルマは【召喚】で近接戦闘も可能で、何より基本能力は俺より高い。

 パルマは残り、俺は追放。その事実にパルマに対しても悔しさが湧き上がっていた。


「俺はこれからもダンジョンに行き自分を鍛える。この都市にいるわけだし、一生会えないわけじゃないないさ」

「本当に?」

「このパーティの誰よりも強くなってやる(見返してやる)。その時は、パルマとパーティ組むのもいいかもな」


 早くこの場を去りたかった。だからパルマに対して適当に答え出口に向かい踵を返した。


「じゃあ私も強くなる、強くなってお兄ちゃんとパーティ組むね」

「ああ、それじゃあまたな」


 パルマも強くなればそんな約束なんて忘れるに決まってる。俺を必要とは言わなくなるんだろうな。

 

「また会えるんだよね。また会えるって信じてるから!信じてるから〜〜!」


パルマのそんな口約束を背にして、俺は拠点を去った。



 あれから一月が経った。

 俺はダンジョン森と呼ばれる森の入り口付近で活動している。ここから北東に向かって奥へ行けばダンジョンがあるのだが、森の中にも魔物が生息している。

 一角ラビットやリトルボアなど初級冒険者でも倒せる魔物もいればグリーンウルフやマッドベアーなど高ランクの魔物もいる。

 悔しいが中級ランク程度の今の俺ではソロでダンジョンまで行くことは出来ないだろう。だからと言って誰かとパーティーを組む気もない。

 だからまずはレベル上げだ、基礎値が低いなら誰よりもレベルを上げて基礎値を周りに追い付かせるんだ。  


「よし、印はこんなもんだろう」


 道に迷わないようにガリガリと木の根元に×印を付け一休みする。


「しかしパルマは何を考えてるんだ?」


 数日前、噂でパルマが[ニケウイング]を抜けたと聞いた。理由は強くなるためとの事らしいが、詳しいことはわからない。この森で出会うかもと思ったが今のところそれは起きていない。


「まあどうでも良いが」


 そんな事をぼんやりと考えていた時、ガサガサと音がしたと思ったら突き飛ばされるような衝撃が俺の胸元を襲った。


 ドンッ


 パルマのことを考えていて完全に気を抜いていた。

 胸が熱い、いや痛い。

 恐る恐る自分の胸に目をやると、そこにはウサギがいた。

 頭をすりすりしている仕草は一見可愛らしく見えるがそうじゃ無い、こいつは魔物一角ラビットだ。

 しかし頭に角が見当たらない。いや違う、俺の胸に、心臓に突き刺さってるんだ。


「うそ……だろ?」


 そう理解した時には自分の体温が急激に下がっていくのが分かった。胸から太ももに向かって大量の血が流れている。


「なんだよ……これ。これでおわ……り?なんで……だ……よ」


 段々と薄れていく意識の中、惨めに終わりを迎える自分が悔しかった。

 目を開けてるのに目の前が真っ暗になっていく。

 王国歴307年ーーレオンの命は尽きた。

 


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