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「ソリス、イラミラルから出てきても大丈夫なの?」
「君の為なら構わないよ。それに私がいなくても巡る」
「そう、ならいい」
長い白髪を持つ少女は程よく筋肉のついた褐色の男にしなだれかかる。肩へと頭を預けた少女。2人は木の下で座り込んでいた。木漏れ日が差し込む元、この世界には『無の者』と2人しかいない。この『無の者』は管理者である少女にしか見えない。故に異物であるソリスには2人だけの世界だった。
少女は想いを馳せていた。頭部に感じる温もりに。
初めて結ばれた日のことを。そして、世界も繋がった日のことを。今は自分から閉ざすことで干渉を抑えている。不安の要素もない。故に温かい記憶へ想いを馳せていた。
褐色の大きな手が頭を優しく撫でる。
「アリ……アミラ、君とまた逢える日が来るといいな。今日はここまでのようだ」
そう言って一頻り撫でた後、立ち上がった。
「わかった」
顔を緩ませていたがいつものように無表情へと戻る。顔を緩ませていた時、心なしか周りにいた『無の者』達が沸き立っていた気がした。