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空とぶクジラさんとはりねずみくん

作者: 無月雨景

  空とぶクジラさんとはりねずみくん







 空とぶクジラは

      

        のんびりゆっくり空の上



 雲といっしょに


       のんびりゆっくり気の向くままに




空の上からは、いろんなものが見えます。


      クジラさんが好きなのは、やっぱり海。


キラキラとひかる海は


    空にあるものをうつしだします。


とくに夜の海が好きで


  夜空の星ぼしをうつした海の上をおよいでいると


             まるで宇宙にいるみたいです。


星の海をおよいでいると


     どっちが上か下かわからなくなる宝石の海です。



クジラさんは、山も大好きです。


     キセツがうつりかわると


     それに合わせて色がかわってうっとりとします。


風がふくと木ぎが歌います。


  その歌にあわせて歌うのが楽しくてしかたありません。



マチも好きです。


いろんなカタチをしているたてものを見ていると


              ほんとうに楽しいのです。


メロディーをえがいているようで


     クジラさんは目がはなせなくなります。


クジラさんが目にするものは


           みな音楽をかなでています。


それを見ながら


   くるくるからだをかいてんさせたり


 上がったり下がったりしながら


          歌うのが大好きなのです。



ある日


  雲のベットから目をさまして下を見ると


       ぼくじょうのすみのなやの下で


         ゴソゴソとなにかがうごいていました。


クジラさんが、気になってじっと目をこらしていると


     くさのあいだからはりねずがかおを出しました。



「君はだあれ?」



そう言ったクジラさんの大きな目に見つめられ


びっくりしたはりねずみくんは


     口をあけたままうごけませんでした。



「びっくりさせてしまったね。


   こんにちは、わたしはこう見えてクジラなのさ」



はりねずみくんは


   びっくりした目をいっそう大きくまるくしました。



「クジラさん!すごいおっきいんだね!はじめて見たよ!」



はりねずみくんはこうふんぎみに言いました。



「ぼくははりねずみ。おなかがすいたから出てきたんだ」



はりねずみくんはもうしわけなさそうに言いました。



「何でそんなところにかくれているの?」



「え?・・・それは、そのぉ・・・」



クジラさんのしつもんに


      はりねずみくんは下をむいてしまいました。



「クジラさんは、どうしてここにいるの?」



「わたし?わたしは、たびのとちゅうなのさ。


     いろんなものを見てまわる気ままなたびなのさ」



「すごい。たびって楽しいのかい?」



「ああ、とっても楽しいよ。


     そうだ、きみもいっしょにこないかい?」



クジラさんの思いがけないていあんに


        はりねずみくんはびっくりしました。



「ありがとう。でも、ぼくは行けないよ。」



はりねずみくんはもうしわけなさそうに言うと


          なやの下にもどろうとしました。



「どうしてだい?」



クジラさんは


はりねずみくんが行きたいだろうと思っていたから


                    ふしぎでした。


ちじょうの小さな生きものは


いつもはクジラさんの大きなからだにびっくりして


         こうしてはなすこともないからです。



「行きたくないのかい?」



はりねずみくんは


  いちどクジラさんを見上げてから


          またうつむいてこう言いました。



「ぼくにはトゲがあるんだ。


   あなたをさしてしまうかもしれないし


  たび先でだれかにケガをさせてしまうのがこわいんだ」



はりねずみくんの目からナミダがこぼれました。



「あっはっはっはっ!」



クジラさんの大きなわらい声があたりにひびきました。


その声のあまりの大きさに風がおこり


     はりねずみくんはころがってしまいました。



「わたしは、君よりもとても大きいから、


    君のトゲではキズなんてつかないさ。


           せなかがかゆくなったら、


          そのトゲでかいてほしいくらいさ



  どうだい?


  すこしそのあたりをぐるりと回ってこよう。


               わたしのせなかにのって」



クジラさんのていあんにはりねずみくんは、


   おそるおそるクジラさんのせなかにのりました。



それはとてもとてもこわくて、


不安で、はりねずみくんはクジラさんのせなかに


しがみついたまま目をとじてしまいました。


しがみついた手も足もとてもふるえています。



「さあ、しっかりとつかまって!上にあがるよ!」



クジラさんがそう言うと、


いっぱいの風がふきました。


はりねずみくんの背中のハリが風になびいています。


こんなに風をかんじたのははじめてでした。



「さあ、目をあけてごらん」



クジラさんがやさしく言いました。


風もやさしくなっていました。



おそるおそるはりねずみくんが目をあけると、


目のまえにくもがありました。


そのとおくには青く光る海が見えました。



はりねずみくんがお母さんから


ゆめものがたりにきいたうみです。


そのお母さんもそのまたお母さんからきいた海でした。



「ほんとうにあったんだ」



「あっちを見てごらん。山だよ」



はんたいがわを見ると


木ぎで青あおとした山やまが見えました。


いつもとおくに見あげていた山やまを


いまは下に見ていました。


そのとおくには白い山やまも見えました。



はりねずみくんの心にいっぱいのきもちがあふれました。


目からもいっぱいのナミダがあふれました。



「これはほんのいちぶさ。


     セカイはもっと、もぉっとひろいのだよ」



クジラさんは、まるでじぶんのもののように


             じまんげに言いました。



「わたしもたびのオトモがほしかったんだ。


                さぁ、行こうか」



クジラさんは、


  はりねずみくんが空のたびを


    すっかりきにいったとおもいました。



クジラさんは、ヒレをひとかきしました。


クジラさんのからだがぐんっとかそくしました。



「まって!」



はりねずみくんは、大きな声でクジラさんをとめました。



「どうしたんだい?」



「クジラさん。ぼくはいっしょに行けないよ」



「どうしてだい?」



クジラさんのといにはりねずみくんは


すこしはずかしそうに言いました。



「あのね、いまクジラさんのせなかにのれたことで、


とてもたのしかったし、


セカイはひろいってかんじられたよ!ありがとう。


でもね、だから気づいたんだ、


こんなにもセカイはひろいのに、


ぼくはじぶんの家から出るのすらこわかったんだ。


だからぼくの身のまわりにあるもののことすら


                 しらないって。


だからね、


ぼくの行けるばしょのことをしらなくちゃって思ったんだ。


ぼくじしんのあしで。だからね、ごめんなさい」



「なるほど、そうかわかったよ。


たしかにそのとおりだ。


いきなりとおくに行ってしまっては


じぶんのふるさとが


   ちっぽけなばしょだと思ってしまうかもしれない。


それはわたしもふほんいだからね。


うん!


きみのふるさとをしっかりと見てまわるのも


大きなたびだね。


わたしじしんにも、


いつもココロにあるたいせつなふるさとがあるから


           たびができているのだからね。


ではまずはそのきみのせなかのハリのすばらしさを


まわりのみんなにおしえてあげるといい。


大きなクジラのせなかをかくのに


ちょうどいいイッピンだってね!


このわたしのおすみつきだ!


では、きみの家にもどろうか」



クジラさんははりねずみくんをせに


はりねずみくんの家へともどって行きました。




なやにもどると、


はりねずみくんはクジラさんを見あげて


        小さな手を大きくふりながら、



「ありがとう!」



と、めいっぱい大きな声で言いました。



「ではまたね。さよならはいらないよ。


わたしはとおくにたびだつけど


わたしが歌えば


風がどこまでもとおくに歌声をはこんでくれるからね。


いつでもそばにいるようなものさ。


わたしたちは、いつまでもともだちだからね」



クジラさんはそう言うと、


  ふわりと風にのっておよぎだしました。



はりねずみくんはいつまでもいつまでも、


クジラさんのおよいで行った空を見つめていました。




よくあさ、はりねずみくんは、


       おべんとうをもって家から出ました。



クジラさんのせなかから見た海のほうにむかって


           ちからづよくあるきだしました。



そのせなかを、


風がはこんでくれた


クジラさんのたのしげな歌声が


やさしくおしてくれていました。




                  おしまい

 何処かに旅に行きたいです。


 自由気ままにゆっくりと。

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