歌姫探し
思わずその歌声に惹きつけられた。包み込むような歌声。
歌が終わり俺は涙を流していた。
「大丈夫ですか?」
彼女はそう俺に声をかけた。
俺は心配させないように涙をふいてはにかんだ。
「つい君の歌声が心に響いて、涙が出たんだ」
「私の声が、、、ですか?」
不思議そうに彼女は言った。
「そうだ!今、俺バンドのメンバー探してるんだ!楽器なにかできる?」
「ベ、ベースなら、、、」
嫌そうに彼女は答えた。
「おお!ばっちりだ!ぜひ俺のバンドでベースボーカルとして俺と歌ってくれ!」
すると彼女は「いやです」という言葉を残して走り去ってしまった。
それと同時に俺は気づいた。
「名前とか聞くの忘れてた、、、」
次の日のバイト、ステージの掃除が終わった休憩時間
「どう?メンバーは見つかった?」
花先輩が尋ねてきた。
「まだ確定はしてないですが、候補は一人います」
「候補?」
不思議そうな顔で花先輩が聞き返した。
「駅で歌ってる女の子なんですが歌声がとてもよくて、昨日は断られましたけどいつか絶対メンバーにします!」
「おぉ平野くん頑張ってるねぇ、まぁ6日以内だけどね」
「わかってますよ!」
焦りながらも駅で彼女を探す。
でもその日彼女は見つからなかった。
次の日もその次の日も
そして約束の日まであと2日。
俺はどうしようもない焦燥感に駆られていた。
まずい、、、このままだと俺の夢はここで終わってしまう。
はやく、はやく見つけないと、、、
駅周辺をくまなく探しつくしたがやっぱり見つからない。
もう駄目だと思ったその時地元の不良たちにナンパされている少女がいた。
囲まれていてその少女の顔は見えないがそのナンパを断ろうとする震えた声が聞こえた。
「なぁ?いいだろねぇちゃん、俺らといいことしようぜ、、、」
「やめとけよ、その子怖がってるだろ?」
俺はその不良に声をかけた
「うるせぇな、なんだてめぇ!」
その不良は俺を睨みつけた。
「だ、だからその子に関わるのはやめたげて」
そんな俺の声も震えていた。
「黙ってろ!クソが!」
そういうと不良の一人が俺に殴りかかってきた。
案の定ボクシングなどの格闘技の経験がない俺はそのまま吹っ飛ばされた。
いてぇ、、、
俺は痛みに耐えながらスマホの画面を見せた。そこには110番の数字。
「いてて、、さて、ポリスメンでも呼ぼうかな!!」
すると不良たちは走ってどこかに去ってしまった。そして少女が近寄る。
「大丈夫ですか!?」
「君は、、、」
そこにはあの日の歌姫がいた。