客がいない歌姫
音をもとめていた、誰もが感動に震えるような、、、
「それで!平野くんはいつ就職活動開始するの?」
とライブハウスのバイトの休憩時間に花先輩は訪ねてきた。先輩と言っても高校生だ。
「花先輩、だから俺はバンドで食っていくんすよ、もうこの話5回目ですよ?」
俺の名前は平野伊豆、中学生の夏に近所のお兄さんにエレキギターをもらい音楽に目覚める。高校時代「crazy music」を結成、バンドメンバーは受験やそれぞれの進路により3年生の秋解散。
高校卒業後、あらゆる人に反対されながらなんの考えもなしに音楽の世界で生きていくことを決意。
そんな俺はもうこのライブハウス「laundry」で1年半働いている。
「そんなこといって、、、メンバーなんて一人もいないのに」
「い、いまから集めますし、、、それにメンバーなら二人いますし!」
「二人?」
花先輩は目を丸くして聞いた。
「まずは俺、それと花先輩です」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ???」
休憩室の外に聞こえるほど花先輩は叫んだ。
「だってこの前ドラムできるっていってたじゃないですか」
すると花先輩はあきれた様子で
「確かに言ったけど、私はサポートメンバーはするけどバンドはしたいわけではないの!大体120歩譲ったとしても、私は平野くんと二人でバンドなんてしたくない。なに考えてんの?軽率なこと言わないで?」
「そんなに言わなくても、、、」
小学生のように俺はへこたれた。
「私平野くんのそうゆう計画性のないとこめっちゃきらいだわ、、、でも」
ここで花先輩はため息をつきながら言った。
「一週間以内にメンバーを見つけられたらバンドしてあげる」
「マジっすか!!やった!!」
「その代わり見つけられなかったら就職活動はじめなよ?」
「わ、わかった」
メンバー探しが始まった。
そんなこんなでバイト帰り駅をあるいていた、ここじゃよく路上ライブがやっている。
花先輩の条件のことを考えていると透き通るような歌声が聞こえた。
そこには見物客なんて一人もいない歌姫がいた。