井坂颯太の事情
一般生徒の視点その1です。
俺は異世界に来たかった。魂を写すなんて裏技みたいな事をせずに、本当の俺をここへ連れてきて欲しかった。
俺は高1の夏休み中に病気が発覚してから入退院を繰り返す日々を送っている。高2で出席日数が足りずに留年した時は学校を辞めようかと悩んだけど、家族や友達のお陰で何とか辞めずにいる。ここ数日は体調が良かったので久々に登校したらこの騒ぎに遭遇した。いっそのこと元の世界から消えていれば入院費用や俺の世話で疲れた顔の両親を楽にさせてやれたのかと思った。病院の帰りに駐車場へ向かう母親が涙を拭う様子を見て正直そう長くないかと不安になったりする生活から逃げたかった。いっそ学校の皆と消えてしまえば両親も先に死んで悲しませるよりマシなのかもしれない。そんな風に思った。久しぶりに思う通りに身体を動かせる幸せはあるけど、元の世界の自分や両親の事を思うと何かスッキリできず嫌な事を忘れる為に修行に集中していた。生徒会長の星野が今後の話として皆と残るか別れて生きていくかを聞いていたが、この機会に友達を増やしてみたい事と世界を旅してみたい事に迷っている。今は知識と力を蓄える事を優先して地上での生活に備えるしかないか。入院中に読みまくった色々な異世界系の小説を思い出して無双したりハーレム作ったりするにも修行が必要だって思う。まず手始めに魔法の種類でも増やしてみよう。そして他の皆に必要とされる人間になる事を目指して頑張ってみよう。きっと俺のここでの人生は向こうより長いと思うし、向こうの分まで頑張ってみよう。別の魂になったのなら元の自分に会えるかもしれない。その時に自分に自慢できるようにしないとね。
しかし入院が多くて痩せていた頃のイメージが強いのか元のクラスメイトに会う度に「顔いじったの?」って聞かれるけど、病気しなかったならって状態になっているだけだから。元の病弱な顔つきに戻すにもポイントが必要みたいだし、流石にそこに無駄なポイント使いたくない。できれば病気しないで済むように体力と防御や健康を維持できるようなスキルにポイント使ってみたいなぁ。まずは身体が基本だよね。
そして後日地上にて体力バカと呼ばれる事になった。何か間違った。
コツコツとコソコソと書いていこう!
まだまだ続きます。




