授業を受けよう2
あの後2人の先生に人族と魔族で争いは無かったか聞いてみたら、大きな山を越えてまで統治するつもりもない遠方の相手と戦う意味が無く、そもそも魔物が蔓延る世界で言葉が通じる貴重な相手と争ってどうすると逆に聞かれる始末だった。
その後いくつか質問をしたけど、いわゆるファンタジーに慣れ親しんだ日本の高校生には基礎知識の確認のような感じだった。
あまりにも知識が被るのでワタリさんに聞いたら、隣接世界の影響が深層意識に影響していて、空想の著作物なんかに反映されたのではないかって言われた。ご都合主義感が半端無いなそりゃ。まぁ正直助かりますけどね。
そして遂に魔法の授業が始まった。まず基礎知識として魔法には基本の無属性に応用の地水火風と光闇、発展で雷と氷と金があり、体内で発生させた無属性の魔力に応用の属性を付け、それを組み合わせる事で発展にまで上げるとの事だ。
無属性の魔力は人間誰しも持っていて、応用の初期まではただの村人でも使えるらしい。
それならば油断するといきなり魔法で攻撃される可能性もある訳で、この世界の人は日頃から体内の無属性の魔力を高める訓練をして、魔法の抵抗力を上げているそうだ。
今回は各クラスに数名の元冒険者の先生が付いてくれた。
冒険者とは人々からの依頼や魔物の討伐を生業にしている人達で、人族・魔族の両方の国に跨いで組織されている。当然死亡率も高いので天界で声をかけたら大勢集まったとワタリさんが言っていた。悲しい事だけどそういう世界なんだな。
そして魔法の訓練に際して問題があった。魔力は周囲に満ちているので使う分には問題が無いけど、本当の身体がまだ無くて、魂に形を作っている今の状態の僕達は自分の魔力を増加させる訓練は出来なかった。神界の訓練で初のデメリットだったけど周囲の魔力を纏めて発動させる事は出来るそうで、先生達に教えられて何とか実際に魔法を使う事は出来た。ちなみに僕はライトの呪文で指先を光らせたのが初の魔法でした。
魔法は色々あって、先生をやっている冒険者ごとに得意不得意は当然のようにあった。僕達のグループの担当になった先生は金の魔法も使える優秀な人で錬金術師として有名だと自称したアルシェムという女性だ。他の先生より若く見えるけど、それを気にして年齢を聞いたクラスメイトの惨状から妙齢を少し超えた頃だろうと思った。それ以上は知らなくていいや。怖いし。容姿はちょっと派手目なオバさんといった感じ。
『何だい?』
「何でもありません」
察したように睨まれた。気を付けよう。そんな感じで魔法の勉強についてはまず状況に応じた魔法を教えてもらい、発動させられるように訓練をするのが基本になりました。この状態だと得意な系統は解りやすいそうで、アルシェム先生は僕達のクラスで金系統向きの生徒を集めてこのグループを作ったと言っていた。
魔法に不慣れな僕達だったけど、数時間で応用の魔法の初期の発動まではいけたのは先生が優秀だったからだと思う。決して教え方も怖かった訳ではないので人の思考を読んでるのかこっちを睨まないで下さい。
ちなみに魔法の発動の手順は体内の魔力を高めてから周囲の魔力を集める。その後は呪文というか発動させるキーワードや動作等の自分で決めた発動条件を満たす事で魔法が出るそうです。カッコいいポーズなり中二全開の呪文なり色々楽しそうだけど、統一したイメージが何より重要らしいのでそれは気を付けるようにアルシェム先生に言われた。先生は錬金術用の素材回収に行った森で魔物に合い、使おうと思った魔法の発動用のド派手ポーズがうまく出ない状態でパニックになって襲われて亡くなったそうだ。実際に戦闘慣れした人の魔法は発動までのスピードと威力のバランスに注意をしているそうだ。
先生達はもう亡くなっているので家族や後輩に教え損ねた秘術のような特殊な魔法もあった。
中でも女性に一番人気だったのは水系統の魔法で自分の手足や顔などに水分を集めて肌の潤いをキープするという男の僕では正直どうでもいいものだった。
世界は変わっても人間って変わらないんだなぁと思った瞬間でした。
何とか続きを書けた。ゼルダ恐るべし。




