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甘い果実  作者: A9
5/5

五ノ果実 《学内情報部現る!》

「はぁ~食べたぁ~♪」

「ごちそーさまでしたぁ~♪」


お昼休みのほほんとした時間を過ごす、海崎と美咲。


「あーそーだぁ!」

急に何かを思い出した様子の美咲

「どしたの?」

「あたしちょっと職員室行ってくる!」

「付き合おうか?」

「いいよー入部届取りに行くだけだから。」

「そう、じゃあ待ってる。」

(そっか、美咲男バスのマネージャーやるんだっけ・・・。)

「じゃあ行ってくるねー♪」

美咲が席を立つと


カシャッカシャッカシャッ


「えっ!?」

「何ッ!?」


どこからともなく写メを撮る音が聞こえてきた。


「今撮られなかった?」

美咲が周りを見渡す

「気のせい?でもうちらに向けた音だったよね。」

海崎も周囲に目を光らせる

しかし、教室の中はいつも通りの光景

「・・・きっ、気のせいかな・・・アハハ・・・。」

美咲は顔を引き攣らせながらも作り笑いをした

「まぁ、大丈夫でしょ。早く行って来ちゃいな。」

海崎も腑に落ちないままだが、何も違和感のない教室を見て気のせいだと思うようにした。


「うん。」

溜息交じりの返事をし、教室のドアから廊下に出る時・・


「あ、雫いたいた。」

「つーかさっきのってやっぱり、アレだよね・・・?」

「うん絶対そう。」

(・・・雫の友達・・?アレって何?)

美咲の隣を2人の女子が通り過ぎようとしていた。


ジ―――


「えっ・・あの・・〈怯〉」

「な、なんですか・・・〈怯〉」


(あっ・・・ついつい睨んでしまった・・・。)


「ごめん、雫に何かようなの?」

「うん・・。」

「あたしたち雫の同級生・・・なんだよね・・。」

「あーそうなんだ♪ならいいの。」


(何がイイの・・・???)


美咲はそのまま去っていった。


「何だったんだろ・・・。」

「ちょっと威圧感あったね。」


2人はそう言って雫の元へ


「しーずーく♪」

「あれぇ!峰ちゃんとまーこじゃん♪」

「久しぶり~♪元気だった雫?」

「元気だよークラス違うからあんま会わなくて寂しいよ。」

「うちらもだよー。」

峰本(みねもと) (しず)(通称 峰ちゃん)と田中(たなか)真紀子(まきこ)(通称 まーこ)は海崎と同じ中学出身で、元バスケ部の仲良し。


「会いに来てくれるなんて嬉しいな♪」

久々に本気の笑顔を見せる海崎


「おい、海崎さんが笑ってるぞ!」

「ほんとだー。」

「普通に笑えんじゃん・・・意外だ・・。」

「最近、2組の女子3人をシメタって噂ホントかな??」

「マジらしいよーなんか駿河くんに手を出そうとした女子3人をシメタ後、駿河君の首をロックしたまま廊下を走らせたって・・それで駿河くん保健室送りになったんだってぇ・・・。」

「見た、あたしそれ見たぁ!」


ザワザワ・・・


クラスがざわめいている


(噂って・・・怖い・・。)

ドヨンとした空気感が海崎を包む。


「ちょっと雫・・みんなが言ってることホントなの・・〈汗〉」

峰ちゃんが気まずそうに尋ねる

「ほんとな訳無いじゃん・・・。」

勘弁してと言わんばかりの表情をする

「でも何か凄いことになってるねぇさすが雫って感じ。」

笑顔のまーこ

「何がさすがよ・・・いい迷惑だし。」

「まぁ、あたしたちも最近雫と駿河の噂を良く聞くから心配で会いに来たんだけど。」

「つーか何で、駿河みたいなもんが中学以上に今モテてるわけ?」

腑に落ちないまーこ

「アハハ、まーこその通りだよ!何だっけ?学内情報部とかいう胡散臭い部がバスケ部一押しイケメンとかって載せたせいでしょ・・。アホくさ。」

「何で分かんないかなぁ~、駿河はカッコいいよ♪背もまた伸びて、顔はイケメン、バスケも上手いしね~。」

「峰ちゃん・・・あーそーですかぁ。」

「あたしは谷原の方がいいけどなぁ」

「・・・・あらそう。」

2人の話を薄ら笑いで聞く海崎


「あー、つーかさっきその学内情報部が廊下にいたよ。」

「え?」

「すごーい怪しい格好してた。黒魔術師みたいな。」

「うわぁ・・・なんかほんと胡散臭い。」

「で、たぶんさぁ雫のこと写メで撮ってたんじゃないかな?」

峰ちゃんがあごに手を当てながら言う

「うそっ!」

海崎の表情が変わった

「たぶんじゃなくて絶対だよね!」

まーこは確信を得たように頷く

「まじ?何かすっごい嫌な予感しかしねーわ。」

「ほんと、根も葉もない噂は良くないね。特に、駿河が雫を『俺の大事な女』呼ばわりしたとかぁ~アハハウケる〈笑〉」

「ほんと、その噂聞いた瞬間全部ありもしない噂って思ったもんねー〈笑〉」

カチン・・コチン・・・

「あれ?雫どうしたの~固まっちゃってぇ~♪」

「峰ちゃん、雫もショックなんだよぉそんな噂流されちゃってぇ~アハハ」

2人は爆笑している


「なんか楽しそうだねー♪ただいま雫♪」

(はっ・・!!さっきの怖いひと・・・〈恐〉)

「あ、おかえり・・美咲・・。」

暗い顔をしている海崎を見て首をかしげる美咲

「なに?何かあったの?」

「別に・・」

(なんでその話だけはリアルなままの噂なんだよ・・・。)

「えーなにぃ?つーかあたし美咲宜しくね♪」

「あ、うんあたし峰本静。皆峰ちゃんて呼ぶからそう呼んで。」

「あたしは、田中真紀子でまーこ。宜しくね。」

「さっきはごめんね~。」

美咲は手を合わせて2人に謝る

「何かしたの?」

「うーん、ドアの所で2人が雫の名前出したから、また絡みに来た女子かと思って睨んじゃった。テヘ♪」

「あんたも大概喧嘩っぱやいよね。」

「そーかなー。」

「別に大丈夫。ちょっと怖かったけど〈笑〉」

「そうそう、雫の味方って分かればもう怖くないし。」

2人は美咲に笑顔を向ける


「そーだ、なんか学内情報部とやらがさっき廊下にいたんだって。しかもあたしの写メ撮ってたぽい。」

「うそーやっぱりあの時のシャッター音気のせいじゃ無かったんだぁ。」

「まったく腹立つ連中〈怒〉」

拳を握りしめ今にも誰かに殴りかかりそうな海崎

「大丈夫だよ、うちらは2人の噂なんて信じないからさ」

峰ちゃんが海崎の肩をポンポンと叩く

「峰ちゃん・・・〈感動〉」

「そうそう、あり得ないって分かってるから」

「まーこぉぉ〈感動〉」

親友の友情をかみしめる海崎

「こらこらお嬢さんがた、何を言ってらっしゃるの。駿河君はほんとに雫ラブなんだよ♪」

「美咲っ〈恥〉」

海崎は目を見開いて美咲を見た

「だってぇ事実だしぃ。」

「それは・・だからあいつが何か勘違いしてるだけ・・・ハッ・・。」

ゆっくり振り返り、峰ちゃんとまーこを見る


「・・・・・・・・」

口を開けたまま、目をぱちぱちする2人

「いや、ちょっと、違うの!」

必至に否定する海崎

「何が違うのさー。」

「みさきぃぃ!」

「・・・じゃぁ、卒業式のあれってマジで告白だったんだ・・。」

「谷原が勘違いしてた訳じゃ無くて・・。」

(え・・・ちょっと・・・2人とも・・・)

「なんだ、結構有名な話なんじゃん。雫って激ニブなんじゃないの?」

「バカ美咲〈怒〉違うって、ほんと違うんだってぇぇぇ!」


峰ちゃんとまーこは顔を見合わせ


「っぷ・・アハハ!」

「ハハ、それちょっと想定外~アハハ」


「え?何?なにがおかしいの?」

急に笑い出した2人に戸惑う海崎


「ごめん、ごめん。いやね、もし本当に駿河が雫ラブでいい感じなら応援しようって話してたんだよ。」

「でも、絶対無いよねって思ってて、アハハ。」

「いやだから・・・」

「いいんだよ雫恥ずかしがらず、堂々と付き合えばいいじゃない!」

「だからね・・」

「そうそう♪お似合いだって♪」

「お似合いとか無いんだよ・・聞いてる?ねぇ?」

「良かったね雫~味方いっぱーい。」

「美咲。殴るよ。」


勝手に話しが進む展開に着いていけない海崎


「あっもうお昼休み終わるっ!行こう峰ちゃん!」

「ほんとだ!じゃぁねまた会いに来るから~!」

「えっちょっとっ!!待ってっちょっとー」

海崎の叫びは2人の足を止めることは無かった。


「アハハ~ざーんねん♪」

ボコッ

「いったぁぁい〈泣〉」

「なんで話をややこしくするかなぁ!」

そう言って、携帯を取り出し鬼のような速さでメールを打ち出す海崎

「何してんの?」

頭を押さえながら尋ねる

ピピピピピ・・・ピ


「よし。これで良し。」

目を据わらせ誰かにメールを送った様子の海崎

(なに?誰に何を送ったの・・?)


キーンコーンカーンコーン


「ほら、さっさと席に戻りなさいな。」

シッシと手で追い払う海崎

「ヒド―。」

「うるさいっ!」



その頃


ブ―ブー


「わり、何かメールきた。」

「何?例の女?」

「駿河もっといい女他にいるだろ~何であの目つきの悪い女?」

駿河も噂で、クラスの男子から揶揄されていた。


(海崎・・なんだ?)

メールを開くと

〖当分話しかけないで。近寄らないで。お願いします。〗


どよ~ん・・・


「あれ何か駿河顔色悪くなった。」

「振られたか?」

ギロッ

「コエッ!」

「すまんッ!」


(あいつ・・・どーいうつもりだ〈怒〉)

ぶつけようの無い怒りが込み上げてくる駿河


そして放課後


「おーい駿河、部活行こうぜぇ」

「あぁ。」

黒瀬が駿河を迎えに来た

「なんだ?なんか元気なくね?」

「別に〈怒〉」

(あ・・・元気ないとかじゃなくて・・・不機嫌・・・。)

「そーいや、この前海崎と一緒にいた美咲って子覚えてるか?女子に絡まれてた時の。」

「知らん」

(くそーなんかマジ腹立つ・・・〈苛々〉)

「千葉さんて言うんだけど、うちのマネになったんだぜ。」

「あ?どうでもいい。」

「なんだよー、なんで怒ってんだよお前?」

「うるせー。さっさと行くぞ。」

終始不機嫌な駿河。


体育館に着くと


「駿河ー」

峰ちゃんが駿河に駆け寄ってきた

「なんだよ。女バスのコートはこっちじゃねーだろ」

冷たい口調

「おい、女にまで八つ当たりすんなよ。」

黒瀬が注意する

「あーいいのいいの、いつもこんなだよ駿河って。」

「え?そーなの?」

「うん。」

(マジか?海崎の時とは大違いだな・・・へぇホントに特別なんだなぁ・・分かりづらいけど。)

「ねぇ、美咲からきいたよー、駿河って雫のことマジで好きだったんだねぇ。」

「だったら何なんだよ〈怒〉」

(わぁ・・否定しない。ほんとなんだ。)

「ちゃんと守ってやんなよね、学内情報部に狙われてるよ雫!」

「は?」

「うそっ?マジ?可哀想に・・・。」

「2人ともあの人らに狙われたことある経験者なんだから、迷惑なの分かってるでしょ?」

「なんで、峰本がしってんだよそんな事。」

「今日、お昼休みに雫のとこ行ったら隠し撮りされてたから。」

(昼休み・・?)

「うわー・・悲惨。女子までも盗撮されんの?このご時世犯罪だと思うぞ俺・・・。」

「ねぇ、あり得ないよねどーせ撮られるならさぁ可愛く写してほしいよねぇ〈怒〉」

「そこ?」

「まー、百歩譲ってって感じ。とにかく、今雫を守れるのは駿河だけでしょ♪」

「だってよ、どーする?学内情報部にでも殴り込みいく?」

「黒瀬君ダメだよ暴力は〈笑〉」

「アハハ冗談冗談!」

「じゃぁね~」

「おう、峰本さんも部活頑張れよー。」

「ありがと~。」

「大変だなぁ海崎も・・・ってあれ?駿河?!」

振り返るとそこに駿河の姿は無かった。


「駿河なら今出て行ったぞ?」

「えッ!!」

(まさか・・・殴り込み〈焦〉)

「すいません、俺もちょっと用事が!ちょっと行って来ます!!」

黒瀬も急いで後を追いかけた


(・・・つーかどこにあんだ?学内情報部!)

手あたり次第駆け回る黒瀬


一方駿河は


「おい、どーゆーつもりだ。」

昇降口で仁王立ち

フイッ

「・・・〈怒〉」

ガシ

「離してくれない?」

冷たい視線、冷たい口調で駿河を見るのは海崎


「つーか何なんだよ、あのメール。」

「仕方ないでしょ、あんたといると変な噂流されるんだから。」

「仕方なくねぇから。」

「はぁ〈怒〉」

「学内情報部のせいなんだろ?」

「まぁそれもある。」

「それも?」

「それもだよっ!根本的な問題は、あんたが変な勘違い起こしてる事!」

「勘違い?」

「冷静になって考えてみて!お願いだから!あたしのこと好きとかって絶対気の迷いでしょどう考えても!」

海崎は駿河を説得するかのように必至に訴える

「気の・・・迷い・・」

その姿を冷めた目で見ている駿河だがいつもと少し違う冷たさが漂い始めていた

「そう、あたしとイチャイチャとか考えてみーよ!あり得ないでしょ?キモイっしょ?そんな目であたしを見れないでしょー???」

海崎は自分で言って、気持ち悪さが込み上げてきて鳥肌がたった


「・・・・。」

無言で見る駿河


「ね・・・ほら分かったでしょ?」

「あぁ。」

「よかっ・・」

グイッ

(え?)


ちゅっ。


ぱち・・ぱち・・


一瞬の出来事。

気付けば目の前に駿河の顔

(こんな近くで見たことあったっけ・・・)

思考回路が働かないまま、ゆっくり駿河の顔が離れてゆく


「どう?」

「え?」

「キモイ。」

「え・・?」

「俺は、あり得ないなんて思わない。だから、周りのうぜー奴らと俺の気持を同等に考えるなアホ。」

(え・・・どういう意味・・・。)

「俺の気持を受け入れるかどうかは、他の誰でもなくお前の気持と天秤にかけやがれ。じゃあな。」

思考回路が戻らないままの海崎は、その場に立ち尽くし背を向けて去ってゆく駿河の背中をただ茫然と見ていた。


駿河が校舎を曲がると


「やるなぁお前。」

「趣味わりぃなお前。」

黒瀬が壁に寄りかかり待っていた。

「いやいや、別に見たくて見たんじゃねーよ。はいこれ。」

「何この携帯。」

黒瀬は、ニヤッとしながら裏を見るように促した。

(ん・・・?)

携帯を裏返すと

「あ・・これ・・。」

「そう、学内情報部の携帯♪」

「どうしたんだ?」

「いや、コソコソ怪しい連中がココで何かしてるからさぁ、携帯のぞいたらお前らがいたって感じ。」

「はぁ?」

「ほら、証拠写真。」

黒瀬が、携帯から写真を出した

(げ・・・。)

駿河の顔が青くなった

そこには、駿河と海崎のキス写真が映し出されていた

「消せ、とっとと消せ。」

「あぁ、昼休みにとられたとかいう海崎の写真もあったから。全消去だな。」

「つーかどーやって奪ったんだよ。」

「まぁ、正当防衛ってことで。」

「・・・・まじか。」

(黒瀬のやつ・・・俺より食えねーやつだと思うんだが。)



その後数日は学内情報部の動きが無かったという。


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