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甘い果実  作者: A9
3/5

三ノ果実 《衝撃は突然に!》

「お疲れさまでしたー!!」


暮夜(くれよ)高校(こうこう)のグラウンド。

ここは谷原が通う高校。

野球部の練習が終わり、一年生が片付けを始める。


「はぁ~・・・今日も疲れたなぁ~谷原~。」

「そーかー?俺はものたりねーよ~」

トンボにもたれかかりながら口を尖らせる谷原

「まぁ、確かにもの足りねーけどなぁ~仕方ねーよなぁ~。」

「仕方ねーかぁ・・でもなぁ~(たけ)(まる)だって早くグラウンド使って野球したいだろー?」

「やりてーけどさ、うちの野球部はAチームに入らなきゃグラウンド使えねーからよ。一年は無理だろ〈笑〉」

今の状況を受け入れ、仕方ないといった様子で話すのは、谷原と同じ中学出身の竹山和(たけやまかず)(まる)。通称竹丸。

「でもよ、練習見てて思うけど、絶対俺より下手な奴いるからな!」

「お前ぜってーそれ他で言うなよ・・・〈汗〉」

「おいっお前らちゃんとグラウンド整備しろよ!」

「やべっ大泉だ!」

「やってるよー♪」

「どこがだよ。」

谷原を冷たい目で見るこの男は大泉(おおいずみ)祐一(ゆういち)

(こいつ何かコエ―んだよな・・・苦手だなぁ・・・。)

「なんだよ竹丸、言いたいことでもあんのか。」

「い、いや無いよ。俺あっちトンボ掛けしてくるっ。」

逃げる様に去ってい行く竹丸

「なんだあいつ?どーしたんだろーな?」

「知らん。俺が怖いんじゃねーの?」

「何で?」

「知らねーよ。」


その後グラウンド整備が終わり、部室へ戻る一年。


「うわー今日もまた9時過ぎてるー・・・。」

「宿題帰ってからやんのメンドくせー〈泣〉」

「おいあれ!」

「いーなぁ~先輩・・・。」

野球部の一年の視線の先には、彼女と帰る先輩の姿が。

「くそー羨ましいなぁ!なぁ谷原!」

かなり羨ましいそうな表情をしている竹丸。

「はぁ?何が羨ましいんだよー、くだらねー。」

「全くだ。」

「うわっ、大泉いつの間に!?つーかなんだなんだお前らー男なら羨ましがれよっ!」

冷めた2人にビシッと言う竹丸

「野球部だったらグラウンド使えないことに悔しがれよ!」谷原&大泉

息ぴったりに竹丸に一喝


「なんだ気が合うな、大泉!」

「意外だな、お前なかなか見込みあるな。」

「いやちょっと待てって、野球と女は別もんだろ?」

「別もんてゆーか、俺女に興味ねー。」

アホみたいな顔をして言う谷原

「・・・・それはそれでまずいんじゃないか?」

一歩後ずさりをして谷原と距離をとった大泉

「は?」

「いや、大泉何か勘違いしてるなお前!」

「違うのか?大丈夫なのか〈汗〉」

真顔で竹丸に詰め寄る大泉

(な、なんだこいつー〈笑〉訳分かんねー性格してんなー)

必至に笑いを堪える竹丸

「だ、大丈夫、谷原はまっとうな男子だから・・・ちょっと感性がお子ちゃまなだけ・・。」

「そ、そうかならいい。」

「なんだよ?俺何かしたかー?」

不思議そうな顔で2人を見る谷原


「あっ、つーか谷原今日出された課題やってねーだろ?」

「あぁ?課題?何それ?」

「数学の課題だよ!」

「・・・・・?」

(こいつまた寝てたか・・・。)

「もしかして、これか?」

大泉がカバンからプリントを出した。

「あーそれ!何お前のクラスも出されたのか?」

「あぁ。」

「何それ?」

「はぁ~・・コピーしてやっからさ、今から帰って一緒にやんねーか・・。」

あきれ顔で誘う竹丸

「やったやつをコピーして俺にくれよ。」

ボコッ

「っつー・・・。ヒドイっ竹丸~〈泣〉」

谷原の頭に大きなたんこぶ。

「でもこの問題、結構むずいんだよな・・・。俺一人で解けるか?」

不安に襲われる竹丸。

「じゃーさー、大泉に手伝ってもらえばいいじゃん!なぁ大泉?」

笑顔で大泉を見る谷原

「何で俺が?つーかお前らは地元かも知んねーけどおれこっから電車で20分かかんだよ家まで。」

「だってお前いかにも頭良さそうじゃん。」

「確かに、優等生っぽいよなお前!」

「はぁ?だからそーいう問題じゃなく、家に帰れなくなるだろっ!」

「俺んちに泊めてやんよ、俺一人暮らしだから。」

「一人暮らし?お前自炊してんの?意外としっかりしてんだな?」

感心する大泉

「まーな!だから泊まれ!」

(いや、お前自炊なんてしてねーだろっ!海崎家に世話になってるだろっ!!)

「うーん、じゃあ仕方ないから教えてやる。」

「マジ?」

「あぁ、人んち行くのって気を遣うからあんま好きじゃねーけど、一人暮らしなら。」

「よし、じゃあ帰るぞ!」


三人は急いで帰り支度をし、部室を出た。


途中プリントをコピーするためコンビニに寄った。


「おい、夕飯買ってくだろ?」

大泉がお弁当コーナーから声をかける

「そうだな、飲み物もだな。」

竹丸もドリンクコーナーへ

「飯ならあるから買わなくて大丈夫だよ~。」

「え?」

「あるって?お前さすがに俺らはマズイだろ!」

「いやさっき連絡しといたから大丈夫。一応気を使って今日はコンビニ飯にするって言ったんだけど、体に悪いからダメだって言われた。3人分用意するって言ってた♪」

「それどーいうこと?」

話しが良く分からない大泉

「まーとにかく早くいこうぜー腹減ったし。」

「あぁ。」

「なぁ何だ?こいつ自炊じゃねーの?」

「自炊ってなんだ?」

「えぇっ!?」

「大泉、こいつのアホさ加減舐めてたら痛い目みるぜ!」

「何っ!」

そして・・・

ガチャッ

「ただいまー♪」

「おかえりー♪」


「おい・・・谷原一人暮らしじゃねーのか・・・。」

「いや、一人暮らしは・・一人暮らし。あれがあいつんち・・。」

竹丸は隣の家を指さした

「じゃ・・ここは?海崎って表札だけど・・。」

「あぁ、海崎さんちだよ。そのまま海崎さんち。」


谷原の後ろで固まる2人


「ほらぁ~2人も入って~、あら竹丸くん久しぶりね~♪」

「お久しぶりです、お邪魔します。」

(竹丸も知り合いなのか!?)

「あらぁいい男ね~どーぞ上がって~♪」

「す、すいませんこんな時間に・・・。」

「いいのよ~気にしないで~、楓はわたしの息子同然なんだから、友達連れて来てくれて嬉しいわ♪」

いつになくキャッキャしている母


3人はダイニングへ


「なぁ、この家は谷原の親戚んちなのか?」

「いや、まんまお隣さん。まぁここの娘は俺らと同級生。」

「娘?」

「そう。だから俺もおじさんとかおばさん知ってるの。」

「あぁ、そうなんだ。」

「はい、ごはん♪お口に合うかしら?」

「すいません。」

「ありがとうございます。」

「よっしゃくーぞ!」

「遠慮しないでいっぱい食べてね~♪おかわりもあるからね♪」

3人は黙々とごはんを食べ始めた


「あ、そーいえば~あなたのお名前は?」

「あ、すいません大泉祐一です。」

「祐くんね♪彼女はいるの?」

ブッ!!

「うわっ!」

「きたねー♪」

「アハハ嫌だわ~♪おばさんたら変なこと聞いちゃったかしら~♪」

「す、すいませんっ!いや、いないですっ!すいません!」

(な・・・なんだこの人・・やっぱり俺こういうタイプ苦手だ・・・。)

大泉は青ざめた顔でテーブルを拭く

「何?おばさん大泉みたいなのタイプなの?」

笑顔で聞く谷原

「ばかな事言ってんなよ谷原!」

「いやね~、おばさんはこんなカッコいい子が雫の彼氏だったらいいなぁって思っただけ♪」

ぶっ!!

「うっわ!」

「お前もかっ!」

今度は竹丸が吹き出す

「す、すまん・・・。」

(海崎に彼氏って・・・〈笑〉)

「なんだよお前ら人んちで行儀悪いぞ。」

「お前に何が分かるっ!!」竹丸&大泉


「ただいまー。」

「あ、雫が帰って来たわ!」

「まだ帰って無かったの?」

「うん何か用事があるって言って。」

(うわ~・・・海崎帰ってきたのかぁ~・・何か気まずいなぁ。)

(娘まで登場かよ・・・しんどい・・。)


「お母さんただい・・ま・・?」

リビングに入ってくるなり目を据わらせる海崎

「お帰り~海崎。」

「久しぶり・・海崎。」

「お邪魔してます。」

ジ―――

「雫、あんたも早くご飯食べちゃいなさい。」

「・・・え?何してんの?」

海崎は谷原を見て言った。

「夕飯喰ってる。」

「違う。聞いていること違う。」

「あー、今日3人でいまから宿題するのに夕飯ごちそうになってんだよ。」

「へ~・・・。」

「あーこいつは大泉祐一ね♪」

「祐くんっていうのよ~♪」

谷原と母が大泉を紹介する


「・・・・・」


「おい、大泉どうした?」

何も言わず、目を丸くして海崎を見たまま動かない大泉

「おーい」

「大泉~?」


「あ、あ、どうも初めまして・・大泉祐一で・・・す。」

「はぁ、どうも。海崎雫です。」

海崎は淡々と自己紹介をし、ダイニングにあるソファーに座った。


「どうしたんだよ大泉なんか顔赤くね?」

竹丸が心配そうに聞く

「・・か、かわいいだろ・・。」

(え?聞き間違い・・・?かわいい?)

大泉のボソッと言った言葉に困惑する竹丸


「よし、飯も食ったし俺んち戻って課題やっちまおうぜ。」

「そうだな。」

「はぁ?谷原が課題?熱でもあんの?」

「うっせーなぁ!俺だってやるときゃやんだよ!」

「へー。お母さん明日台風くるよ。」

「お前なー!!」

「たく雫ったらぁ~楓をいじめないの!」

「アハハ、海崎の言う事間違ってないですよ~〈笑〉」

竹丸が笑いながら言う


「お前まで~!俺がやる気だしたら大変なんだからな!」

「そうか、じゃぁ今日はそのやる気を見せてもらおうか。」

薄ら笑いを浮かべて谷原を見る大泉

「お、おう。」

「じゃ、お邪魔しましたー。」

「すいませんごちそうさまでした。」

「じゃあまた明日~♪」

「はいはい待ってるわ♪」


「あっ!ちょっと谷原!明日は起こしに行かないからね!」

「なんで?」

「はっ?お前海崎に起こしてもらってんのか!?」

「そーなんだよー、竹丸からも言ってやってよっ!自分で起きろって〈怒〉」

「お前、明日起きなかったら俺だけじゃ無くこつらまで犠牲になるんだぞ!それでもいのか!?」

「はぁ〈怒〉知るか!誰か一人は起きんだろーが!」

「そんなの分かんねーだろ!」

「あ、俺起きるから大丈夫ですよ・・・。」

谷原と海崎の間に割って入ったのは大泉

「ほら、なんだっけ?泉くんだっけ?」

「大泉です〈哀〉」

「そう、彼が起きるって!分かったあたしは知らないからね!」

「マジ?ちゃんと起こせよな大泉!」

「お前それが人に頼む態度か・・・。」

「ほんとこのアホの面倒見るの大変だと思うけど、宜しく頼むね大泉くん。」

困り笑顔を見せる海崎

ズッキュン!!

「は・・・はい・・」


《谷原家》


「谷原んちも久しぶりだなぁ。」

「そうだっけ?」

「そうだよ。で、どうしたんだよ大泉?」

「え?」

「え?じゃねーよ。何か変だぞお前。」

「そーか?いつもこんなじゃねーか?」

「いや、明らかに変だろ?つーか俺の聞き間違いだと思うんだけどよ・・・。」

竹丸は大泉の肩に肘を置いた

「お前、海崎を可愛いとか言ってなかった?」

カァ~・・・・・

大泉の顔がみるみる赤くなっていく

(マジかよ〈驚〉)

「嘘だろっ!!可愛い?海崎が?あの暴力暴言女がか?」

谷原はあざ笑うかのように大泉を指さす


「可愛いだろっ!」


・・・・・・・


一瞬の間のち



「アハハハハ!!」

「ウケる―!」

2人は腹を抱えて笑い出した。


「何なんだよっそんなに変か?」


「わり、でも・・・アハハ・・・海崎を可愛いとか言うやつ初めて・・・アハハ」

「俺も・・アハハ・・・好きとか言った奴は・・・いるけど・・。」

ピタ。


竹丸と大泉は目を丸くして笑い転げる谷原を見る


「え?海崎のこと好きとか言ったやついんの?」

「え?いるよ。お前知らないの?」

「彼氏なのか?」

「彼氏?いや?さぁ?」

「誰?」

「どんな奴だ?」


ガチャ

「おい、谷原インターホン電池ねーのか?いくら押しても出て来ねーから勝手に上がった・・・。」


谷原家のリビングに駿河が現れた

駿河の目の前には谷原を険しい目で見降ろす2人の男


(何やってんだ・・・つーか竹丸いるし・・。)


「あ。あいつ。」

谷原が無表情で駿河を指さした。


「えーーーー(驚愕)」

竹丸はムンクの叫びのような表情をした

(こいつが・・・海崎さんを好きなやつ・・・彼氏なのか・・・。)

睨みつけるように見る大泉


「何なんだよ。こいつら何?」

不機嫌じみた声で谷原に聞く駿河


「つーかお前何しに来たの?用事?」

「あぁ、ちょっと借りたい・・」

「谷原っ!卒アル、卒アルかして!」

「えっ?」

竹丸が唐突に谷原に詰め寄る。

「何だよ、竹丸・・・うるせー。」

「卒アル?そこにあるべ。」

竹丸は本棚から卒アルを取り出し、海崎のクラスページを開いた。

「どしたの?」

ばっ

「何?」

「なんだ?」

そのページを駿河と大泉に見せ


「なぁ、この子可愛いと思うか?」

そう言って指さしたのは学年で可愛いと言われていた女子


「は?なんだよお前。」

駿河はイライラしている

「そーだぞ、急に何なんだ?」

「いいから、答えろ!」

「竹丸~お前何してんの~。」

「はぁ・・・。めんどくせー。俺はタイプじゃ無い。可愛いとか思わない。」

駿河はかったるそうに答えた。それを聞いて大泉も


「俺も何ともおもわん。」

「じゃぁこっちは?」

今度は少しタイプの違う綺麗めの女の子

「全く興味ない。」

「俺も同じだ。」


「じゃ・・・じゃぁこれは・・・可愛いと思うのか?」

次に指さしたのは

「は?海崎じゃねーかよこれ。」

口を引き攣らせる駿河

「どうなんだ可愛いと思うのか?」

「お前バカか?聞かれるまでもねーだろ。」

「そりゃそーだよな〈笑〉わり、やっぱありえねーよな!」


「可愛いだろ。」


「え・・・。」


「あぁ、可愛いな。」


「え?」

「お前ら目ん玉大丈夫か。」

冷静に引いている谷原


「何引いてんだよお前。」

「引くだろ普通。」

「まぁ、好みは人それぞれだからどーでもいいけど。」

淡々としている駿河


「おい、お前。」

駿河の前に立ち真面目な顔で駿河をジッとみる大泉


「誰だよ。」

「大泉 祐一。駿河っていうのかお前。」

「あぁ。」

「海崎さんと付き合ってるのか?」

(な、何きいてんだよー大泉~♪)

唐突な質問に、竹丸はドキドキしていた。

谷原は興味が無いらしく、大きなあくびをしている。


「付き合ってねーけど。」

「そうか。ならいいんだ。」

「よくねーなぁ・・。」

「何?」


ピリッとした空気が流れた


「海崎に手だした許さねぇからな。」

「彼氏でもないやつの言葉など知るか。」

「おいおい、落ち着け2人とも!」

竹丸が仲裁に入るが


ゴゴゴゴゴ・・・


(やべーなんかやべー・・・駿河がこんな感じなの初めてみるー!!)


「なぁ早く課題やろーぜぇ・・俺ねみぃ・・・」


床に座り込み今にも寝そうな谷原


「そ、そーだほら、大泉課題!課題やるぞ。」

竹丸が大泉を引っ張り駿河から引き離す


「ほら、駿河も何借りに来たんだ?」


「あぁ、やっぱもういいや。帰る。」


そう言って部屋から出て行く駿河

その背中を睨みつけるようにみる大泉


「おい、お前女にうつつ抜かしてる場合じゃない的な事言ってただろーが!」

「しかたねーだろ・・・もろタイプなんだから。」

(・・・マジかよ。)


zzzz・・・


「っておい、寝るなっ谷原!」

「よしやるか課題。」

「いや、谷原がおきねー!」

「知らん。」


zzzz


「起きろー谷原ぁぁぁ!」



一方、海崎家では



「お母さん、誰でも家に上げるのやめてくれない・・・。」

「えーいいじゃない♪若い男の子大好きなんだもの~♪」


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