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甘い果実  作者: A9
1/5

一ノ果実 《まだまだ皆成長期!》

―ザワザワ・・・

「ねー写真撮ろうよ!」

「うんっ♪」

「卒業やだなぁ~」

「さみしーよねー」


今日は卒業式。

中学最後の登校日。


海崎(かいさき)~おっはよっ♪」

ギロ〈怒〉

(うわー怒ってる~・・・。)

「あんたねぇ~!最後の最後まで遅刻ってどーゆーつもりだコラ〈怒〉」

「アハハそんな怒んなってぇ~いつもの事じゃん♪」

「・・・殴るぞチビクソ」

「チビじゃねーし!クソでもねーよっっ!」

「フッ・・。」

「おいっテメー海崎!今鼻で笑いやがったなっ!」

私は海崎(かいさき)(しずく)。身長165センチで女子の身長平均よりちょっと高め程度。

そして、遅刻してきたこいつは家がお隣の幼馴染みの谷原(たにはら)(かえで)。身長160センチ。

「あーまたやってるよあの二人~〈笑〉」

「懲りないねー〈笑〉」

「楓も楓だけどよー海崎も口悪すぎっ♪」

「あの二人も見納めかぁ~記念に写真とっとこ」

カシャッ

「あっ誰だッ今撮った!」

「俺のファンか!誰だ!」

アハハハ


クラス中が笑いに包まれる。

いつもと変わらない光景なのに。

何かが違う一日。


「お前その言葉遣い何とかせーよ。」

(え・・・)

後ろからボソッと聞こえた声に振り向く。

「あ・・・駿河(するが)おはよ。」

「よぉ(けん)()おは~♪」

「おはよーじゃねーよ。おせーよ。」

「アハハ寝坊しちったし仕方ねーじゃん♪」

「仕方ねーんだってよ。」

「仕方なくねーよっ!あたしが何度ゆすったと思ってんだよっ!」

「怒るな、怒るな〈笑〉」

悪気なの無い谷原の無邪気な笑顔に呆れかえる海崎。

そして、無表情のまま2人を見る駿河(するが)健人(けんと)

「おーい3年~廊下に並べー」

「はーい。」


駿河健人も近所に住む幼馴染み。

小さい頃から3人でつるんでいる腐れ縁。

私は、姉御肌で勝気で強気、女子力は少し低め。

谷原は誰にでも愛されるような無邪気な少年って感じ。バカだけど運動神経良くて優しいと一部の女子に人気があった。

駿河は、結構クールな性格であまり感情を表に出さないタイプ。身長が173センチあって顔もカッコいいと評判でモテていた。ただ何考えてるのか分からない上に結構冷たいというか・・・言葉に愛がないというか・・・と女子の間でささやかれていた。

私は長年一緒にいるからか、あまりそんなこと感じないし優しいと思っているのだけれど。


ガシッ

(!?)

「ねー雫!」

「あ?何?」

「お願いがあるんだけど~。」

「何?」

体育館に向かう途中で女子2人に両腕を組まれる海崎

(ビックリしたぁ。)

「これ、後で駿河くんに渡して欲しいんだけど・・・。」

「何?手紙?」

(ラブレターですか・・・?駿河に告白する奴いっぱいいたけど皆玉砕したのに・・チャレンジャーだなぁ)

「ラブレターじゃないよっ!」

「へ?」

「これ、めぐみのケータイ番号かいてあるの♪」

「携帯番号?これ駿河に渡せばいいの?」

「うん、高校離れちゃうからせめて携帯番号だけでも交換出来ないかなって・・・。」

顔を赤らめながら話す姿に普通なら感動するんだろうけど、死んだ魚のような目をする海崎

「ちょっと何そんな目でめぐみを見てんのよ雫っ!」

「あ・・・。ごめんつい・・でもあのさ、連絡待っても来ないと思うよ。いや絶対来ないにタケノコの島1個賭けてもいいかな。」

チーン・・・

(タケノコ島1個とか何かリアルに賭けてる感じがするー。)

海崎のお両サイドで目が点になりながら固まる2人。


「あれ?どうしたの?」

「・・・もういいや。何か諦めついたわ。」

「え?いいのめぐみ?え?ちょっと雫~〈汗〉」

「あっ、でも何事もやってみないと結果なんて分かんないもんだけど。物事に絶対なんてないしね~。」

「さっき絶対来ないって自分で言ったじゃんっっ!」

「あれ?あたしそんな事言った〈笑〉」

「言ったっっ!!」

「ごめんごめん、悪気無し!」

「もー雫ってば適当なんだからっ!」

「で、どうする?渡す?」

「・・・うん。自信無いけど・・・ダメ元上等で・・。」

「オッケイ」


(応援してあげたいけど、駿河本人にその気がなきゃ何とも出来ないからなぁ。)


そんな事もありながら、卒業式は無事に終了した。


「あー色々話し長かったなぁ」

ワイワイガヤガヤする昇降口で大きく背伸びをする谷原

「あんたほとんど寝てたじゃん。なんなら卒業生起立にも気づかず寝ていたじゃん。」

冷たい目で見る海崎

「そうだっけ〈笑〉」

「たく、高校でそんなんしてたら怒られるからね。」

「大丈夫だよ!」

「え?何が大丈夫なわけ?」

「俺お前に怒られなれてるからな、めげねーから心配すんな!」

ズテーン!

自信に満ち溢れた態度で言う谷原

「あ?どうした?大丈夫か海崎?」

(・・・こいつどこまでバカなわけ!!)

「何してんの?」

「おせーよ健人!」

「あぁわり。なんか捕まった。」

「捕まった?よいしょ・・・」

海崎はゆっくり立ち上がり、駿河をみると

(えぇっ〈驚〉)

「すげー。まじかぁすげー。」

「すげーじゃねーよ・・・。」

駿河の制服からボタンがすべて消え、何故か中のワイシャツまでもボタンが無い状態。

「駿河。公然わいせつ罪で捕まるわよ。」

「なんでだよ。出しちゃいけねーもんはちゃんと閉まってら。」

「ジョニーズみたいだなお前。」

(あっ・・そーだあれ渡さなきゃ。)

海崎はポケットから携帯番号の書かれた紙を取り出した。

「はい、駿河。」

「ん?何?」

海崎が差し出す紙を受け取り中を見る駿河

「何それ?今度はラブレターか♪やるなー健人ぉ♪」

ニタニタしながら肘で駿河をつつく谷原

(・・・うぜぇ〈苛〉)

「谷原は可哀想なくらい制服綺麗だな。」

「へ・・。」

その一言に固まる谷原

「で?何これ。」

「何って携帯番号でしょーが。」

「いや見れば分かる。こんなの渡されても俺がこの番号にかけたりしない事をお前は知っている。」

(そりゃそーだけど・・・。)

「でもさ、最後だしもう会えなくなる訳だし特別なんじゃないの今日は。」

「特別?」

意味不明といった表情をする駿河。

「お前さぁ~、モテすぎて頭の回路おかしくなってんじゃねー?」

「んだと。」

「だってさぁ、普通嬉しいだろこんなもんもらって♪もっと喜べよ♪」

「そうそう、谷原(コレ)に比べたらあんた幸せよ♪」

「コレってなんだよ!」

「あっ間違えた。谷原(コメ)だっけか。」

「ころーす!海崎ころーす!」

「やれるもんならやってみやがれっ!」

「別に・・女にモテても嬉しくねーし。」

「はぁ?」

「冷めてるなぁ駿河は・・・。」

「そういう意味じゃねーよ。俺には海崎がいればそれでいいから。」


「あー私がいればねぇ。なるほどぉ。」

「海崎がいればいいかぁ~へぇ~・・」


(えっ!!!!!)海崎&谷原


「お、お、お、お、お、おい?え?何今の?健人?え?どーいう意味!?」

混乱状態の谷原と口が半開きで固まる海崎


「別にそのままの意味。」


なんの動揺もなく淡々としている駿河


「はぁ!?そのままの意味って!お前・・お、お前・・・こいつの事好きってことかぁーーー!!」


大声で海崎を指さした。


ザワザワ


昇降口に残ってた生徒たちがこぞってざわめき3人の方を見た


「おぉっ!駿河が海崎に告白かぁ!」

「えーうそでしょー」

「でもあり得るー!」


「お前声でけーよ。」

かったるそうな駿河

「マジか!お前マジか!」

「だったら何だよ・・・周りもうぜぇな。」

「プッ・・・アハハハハ!ウケるマジかぁ~アハハハ!」

地面を叩きながら大笑いする谷原

(・・・なんだこいつ・・。)

大笑いをする谷原を不思議そうにみる駿河。


固まる海崎


笑い転げる谷原


それをただ見続ける駿河


「おい・・あいつら今告白したんじゃねーの?」

「え・・・何か違うんじゃない・・。」

「ぜんぜんそんな雰囲気じゃねーよな・・。」

「どうせ、谷原のバカの勘違いでしょ。」

「そーね、やっぱあり得ないわ。」

「いこいこ。」


告白とはかけ離れた雰囲気に周囲は聞き間違えか何かと納得し注目をやめた。


「おい、谷原いい加減にしろよ。」

「アハハ・・ハァハァ・・わ、わりぃ・・フフ」

「海崎もいつまで口半開きで固まってんだよ。帰るぞ。」

(え・・いや・・え?何?帰る?)

何事も無かったかのようにしれっとしている駿河

「ほら、さっさとしろ海崎~♪」

「え・・あ・・・うん。」

(あれ?何だろ・・あたしの聞き間違い?え?)

「俺一回着替えなきゃ店入れねぇ。」

「いいんじゃね?そのままで。」

「ダメだろ。」

「そうか?」

「そう。」



本当に何も無かった様に感じた。

自分の聞き間違いの勘違いかと思ったら逆に恥ずかしくなってしまっていた。


(そりゃそうだ、そんな訳ないもんな!あーヤダヤダ。)


「どうしたんだよ海崎何か顔青くね?」

「うっせーコメ!」

「コメっつーな〈怒〉」

「海崎言葉使い治せよ。同じ高校で恥ずかしだろ。」

「あ。ごめん。でもこの言葉遣いこいつと話す時ぐらいだから。問題ないっしょ。」

「そっか。」

「いや納得すんな健人っ!俺にも優しく話せや海崎っ!」

「無理。」

「無理なら仕方ないな。」

「何でだ!?」


4月からは、あたしと駿河は隣町の進学校に入学する。

谷原は地元の高校に入学となり、別々になる。

でも家は近所だし特に何とも感じていなかった。


新しい日々はすぐそこまで来ていた。





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