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本格的に美女美少女と同居生活なのだが素直に喜べない僕が居る

 インタフェースにより個室が使える様になったのは僥倖だ。

部屋の中は見られているだろうけど、流石にトイレの中までは覗かないだろう。と思う。

下賎な話だが、おかずには事か欠かない。僕の記憶を映像として再現出来るし、こちらに来てからは、見目麗しい女性達の裸を生で何度も見ている。


 昨夜もミルリエとサヤに連れられて洗浄ルームに行き、望んだわけでもないが色々と見えてしまった。

サヤ曰く、独りで来ると大変な事に成るから当分は誰かと一緒に、と言う事だったが中まで一緒に入る必要は無いと思うのだけれどね。

皆、もう少し慎ましさって物を持って欲しいと思うが、それは僕の価値観だ。異世界で僕の価値観を押し付けるなんて無意味だし滑稽なことだろう。


 よく異世界転生で、奴隷が受け付けられないとか有るけど、だったらリンカーン大統領の様にトップになって廃止すれば良い。

なのに大概があれこれ理由をつけて、気に入った奴隷を買っているだけだったりだ。僕なら嬉々として好みの奴隷を買い漁るだろう。

他人のステータスを見れる様な能力を持っていても、勝手にプライベートを覗いたらその人に悪いとか呆れる。これも僕なら手当たり次第に覗き見るだろう。

と、話が暴走してしまったが、取り敢えずこの世界の人達は他人に裸を見られる事を、何とも思っていないと言う事なのだから、僕はその恩恵に預かると言う事だ。

そう、郷に入らば郷に従えだ………多分。


「それでは、適正には問題有りませんでしたから、プロトタイプに換装してみると宜しいですわ」

「プロトタイプ?」


 僕はミルリエに連れられ、MRIみたいな物に通されて適正には問題無いと言う事が解った。

殆ど誰にでも乗れるらしいのだが、稀に適正が無い人も居るらしい。適正が無ければ動かす事がままならないと言う事だが、第一関門クリアと言うところだ。


「プロトタイプと言うのは、専用機では無い誰でも乗れる装甲機を指すのですわ。その分機能に制限が有りますの」

「制限って言うと?」


「乗って見ると解りますが、まず操作に違和感が有ると思いますわ。それと武装が単一ですわね」

「成る程」


 僕は、ミルリエの言葉を聞きながらインタフェースで細かい内容を確認する。

こういう所が非情に便利で、これが無くなると僕の判断能力も低下するだろう。既に無くては成らない物になりつつある。

まず、誰でも乗れる事を優先しているために、個人には合わせていないと言う事だ。簡単に言えば身体の縮尺率が違うとかである。


 乗ってみれば解るとは正しくその通りで、装甲機に取り込まれた瞬間、僕の感覚は装甲機のそれになった。

目線は装甲機の眼に当たる位置からになり、身体の感覚は装甲機その物になっている。つまり身体を動かす事で装甲機が動くのだ。

実際の僕がどの様に成っているのかを見る事は、この段階では出来ない。つまり行き成り身体が大きくなった感じな為、普段とバランス感覚が違う。

これは、専用機になって自分の身体の形に合わせた比率になると、かなり違和感がなくなると言う事だった。

感覚としては高下駄を履いている様な、手で頭を掻こうとしてあらぬ所を掻いてしまうとか、そんな感じだ。


「どこからでもかかって来て構いませんわよ」

「そんじゃ遠慮無く。どぉりゃぁっ~~~~っ!」


 そして僕は、ミルリエと対峙していた。ミルリエの装甲機は専用機であり、ミルリエの趣味が如実に反映されている物だった。

確かに見るからにミルリエだと思う風貌を成している。巨大な装甲機に金髪縦ロールってどうよって思うけど、本人が良ければ良いのだろう。

僕は、大剣一本だけだが、対してミルリエは片手剣に盾を装備している。どこの王女騎士様だよと言う感じだ。

そして、我ながら無様な掛け声を掛けながら突っ込んだのだが………。


「勢いだけは、大した物でしたわ」

「ぐふっ」


 完膚無きまでに叩きのめされました。少し考えれば解るだろと自分に言いたい。

行き成り巨大ロボット兵器に乗って、行き成り最強なんて有り得るはずが無いのだ。だったら訓練している人達は何だって事になる。


 それは兎も角、これも剣と魔法(知らない技術)の世界だよなぁと、僕はここに来て初めてとも言える程興奮していた。

ギルドに登録して魔物討伐してランクを上げて、なんて物は無いのだがこれはこれで一つの夢の実体験だ。


「随分と気に入ったみたいですわね」

「うん、あれは凄いよ」


 装甲機から降りて、僕はミルリエと歩いていたが、興奮冷めやらぬと言う奴だ。


「でしたら、専用機を作って貰いますか?」

「え?」


「次の期の新人用に専用機を作成しておりますから、そのラインに1機ぐらい追加しても宜しいですわよ」

「本当っ!」


 思わず立ち止まってミルリエの両手を握ってしまった。ミルリエが顔を紅くして眼を逸らしているが、そんな事は二の次だ。


「で、でしたら、これから基礎訓練施設に行きましょう。今からでも基礎体力を向上させた方が宜しいですわ」

「うん、解ったよ」


 喜び勇んで、元々ミルリエに良い感情を持っていなかった事なんて、100トンは乗るであろう棚の上に押し上げてミルリエに付いて行く。

ミルリエの歩く後ろ姿に、お尻の形が良いなぁと思ったり、スキップでも始めてしまいそうなぐらい僕は浮かれていた。


 ミルリエに案内されて入った部屋は、スポーツジムの様な空間だった。

入った瞬間に女性特有の匂いと汗が混じった臭いが鼻に付く。そこには、インナー姿でトレーニングらしき物を行なって居る女性で溢れていた。

インナーは透ける素材では無いのだが、元々ピッタリと張り付いている様な物なので、激しい動きをしていると色々と食い込んだりしていて、非情に危ない。

だが、当然ここの女性達は、そんな事には何の恥じらいもなく、目のやり場に困る状況だ。


「ここが基礎訓練施設ですわ。何時でも使用出来る様にしておきますわ」

「う、うん。有難う」


 僕達が部屋に入ると、一斉に僕達に視線が集まる。その中には、僕の苦手な視線が有る事も感じていた。

転校生等にクラスの何人かは向ける者が居る拒絶の視線だ。当然、逆の好意的な視線も感じる。僕に向かって微笑んで小さく手を振ってくれる人も居るので、僕は軽く会釈して手を振り返しておく。

なんとなく萎縮しないで済んでいるのは、ここに男が居ないからだろう。強面の男がこっちを睨んでいたりしたら、僕は極力関わらない様にする事に必死だったに違いない。


「皆さ~ん、彼がここを使いたいと言う事ですので、使い方等教えて差し上げて下さいな」

「「「は~~い」」」


「最初は、柔軟からよね」

「私手伝ってあげる」

「狡い、私も私も」

「な、な、な、何? 何?」


 ミルリエの言葉に数人の女の子達が群がって来て、僕は揉みくちゃにされながら、連れて行かれる。

いや、胸が当たってる。お尻撫でないで。身体中に誰かの何かが当たってる。僕は違う意味でパニックに陥ってしまった。




 外の光りをふんだんに取り入れた所長室には、ルーを筆頭にサヤ、マーナ、カヌンが集まって居た。

この場にミルリエが居ないのは、ユーマの情報解析に関わって居なかったことと、今現在、ユーマの相手をしているからだ。


「報告を聞こう」

「全くの推測にしか過ぎないけれど、かなり高い確率で彼のこれまでの人生は、幸福とは呼べる物では無かったと思われる」


 ルーの言葉に淡々と報告を始めたのはカヌンであった。


「具体的には?」

「彼の記憶から両親と子供、もしくは祖父母と両親と子供と言う世帯が、平均的な生活形態と思われる。しかし彼の両親については幼い時に死別または離縁により、その後、引き取られた先での虐待が確認された」


「ふむ、それは一般的では無いと言う事だな?」

「彼の記憶が全てなので断言は出来ない。だが、彼の周りの同年代の者達に対する記憶は、それが一般的で無い事を裏付けていた」


「成る程な、今後の彼への対応にもそれらを踏まえて配慮する必要がある。それは早急に纏めて周知徹底するように」

「彼の居た社会構成では、電気と言う物が主たるエネルギーで有った事は、彼からの言質も取って有る。我々の言う理力に相当する物だと思って良いが、その為にかなり無駄に地下資源を消費している」


 ユーマの個人的な環境から、社会環境に至るまでカヌンの報告は続いた。それは、個人の記憶から取り得た物にしては、現代の社会情勢をかなり正確に把握した物であった。

但し、ユーマ自身が日本人で有ったため、当然、日本での社会情勢と言う事になる。一部、世界各国の情勢も有ったが、そこを深く追求はしていないし、追求することも出来なかったとしている。


「うむ、大体解った。ではマーナ、科学的見地からの報告を聞こう」

「はい。まず彼の持つ染色体ですが、当然我々には無いY染色体を持っております。問題は、こちらへ召喚した場合にその塩基配列がそもそも同じであるかと言う事ですが、こればっかりは現地に行ってサンプルを取得しないと何とも言えません」


「当初から懸念されていた召喚時の造り変えだな」

「はい。こちらの環境に適合するようにしている手前、かなりの確率で変異させていると考えられます。何より彼の記憶からも、彼の世界では理力が見出されておりません」


「それは、遺伝子構成に由来すると?」

「その可能性は高いと推察しております」


「しかし、召喚条件には引っ掛かった。と言うより召喚が成功した」

「それも現地に行ってサンプルを取る必要が有ります。彼が彼の世界で特殊だったのか、何か別な要因が有ったのか」


「召喚実験を続けても成功する確率は低い、こちらから出向く手段を早急に作るべきか」

「その際に一つ懸念が有ります。彼の世界では、病原体と言う物が存在し、それに対抗する免疫と言う物が有るのですが、我々にはその免疫が無いと言えます」


「我々は無菌室に居る様な物だからな」

「確かに過去のデータから、その様な事例を見つける事は出来ましたが、我々の場合ディーヴァによる生命維持が有りますので」


「仮に、こちらから出向くとしてディーヴァの影響範囲とすることが出来る物なのか?」

「寧ろ、出来るようにしなければ、出向くのは危険と考えます」


 そこからは、細かい話とカヌンの調査結果との擦り合わせ等を行い、一通りの報告を終え今後の方針を決定するだけで粗1日を使い切る程だった。




 今日の晩御飯は、海胆パスタだ。

高価な為、自分では絶対食べれないと思っていたのだが、アルバイト先の店主が奢ってくれた事が有る。北海道で採れた海胆をふんだんに使ったかなりお高い物だ。

所詮、僕が味を知っていなければ再現出来ない。だから食べたかった物と言うのは、見た目だけしか再現出来ないのだ。

そして、この海胆パスタは僕が食べた事が有る中で最高級品に当たる。残念な事に僕は高級○○牛のステーキとか、高級フランス料理なんて物は食べた事が無いのだ。


「う~ん、美味い!」


 この食事事情だけでも、この世界に召喚されて良かったと思える。煩わしい進学や就職の事を考える必要も無い。

逆にこの世界でどう生きていくかを考える必要が有るが、それはあまり気にしては居ない。無理矢理召喚されたのだ。それこそ彼女達に考えて貰えば良いだろう。


 あの後、揉みくちゃにされたが、擬似ハーレムの様な状況で疲れたのだが、楽しかったのは否めない。

相手が恋人とかじゃないので、イチャイチャなんて雰囲気は無かったのだが、柔軟と言う名目や二人で使う機材なんかで女の子の身体に触れたし、かなりドキドキした。

ここの女の人達は皆年齢不詳だが、兎に角可愛いか美人な上優しい。世話好きしか近付いて来ていないのかも知れないが、それでも綺麗な女の人が色々気遣ってくれるのは、素直に嬉しい。


 この世界では、身体を鍛えるのに走り込みなんかは行わないそうだ。全てジムの様な所で機材によって必要な箇所を鍛えると言う感じだ。

何を使い、どんな事をすれば良いかは、インタフェースが全て教えてくれる。それ以上やるとどこそこに負担が掛かるからそこまでとか、的確に指示してくれるのだ。

画一式なプランを粛々と実施するのでは無く、自分の好きな事をして何処が鍛えられるとか、何処に負担が掛かるとかを教えてくれるアドバイザーの様な物だ。


 晩御飯を食べ終わり、コーヒーを出して一服している処で、インタフェースが来客を告げる。

すっかり慣れた操作で承諾すると、サヤ達が入って来た。


「今日は随分と楽しんだらしいな」

「えぇ、やっぱり身体を動かすって言うのは、気持良いです」


 サヤは、僕の前にソファーを出すとミルリエとカヌンもそこに座り、サヤは脚を組む。例によって三角地帯が丸見えな訳だが、僕もかなり慣れて来た。

と言うか、つい先程まではインナーしか着ていない集団に揉みくちゃにされていた訳だし、ミルリエと洗浄ルームにも行って来た後だ。

今更インナーが見えてもどうと言う事は無い。だが、それでも眼が行ってしまうのは、男の性だろう。


 マーナが皆のお茶を淹れる。どうやらこの4人で居る時は、マーナがお茶を淹れるのは定番の様子だ。

しかし、何故全員で僕の部屋に来るのだろう? そろそろ独りにしてくれても良いのになと僕は思っていた。


「さて、これからのユーマの処遇なのだが」

「え? あ、はい」


 僕は浮かれていたようだ。この世界で僕がどう生活するのか、全く決まって居ない状況なのだ。

しかも、この部屋だって仮だと思うのだが、既に僕の部屋の様な気で居た。自分の愚かさが恥しい。


「ミルリエから聞いたのだが、装甲機が気に入ったそうだな」

「えぇまぁ」


「本来、部隊に入らない者に装甲機が与えられる事は無いのだが、君は特別だ。専用機を君に一台廻す事は承認された」

「あ、有難う御座います。それで、他の人に迷惑が掛かっちゃう事って無いのですか?」


「それは大丈夫だ。ただ、装甲機を使う時にはミルリエの許可を貰ってくれ。と言うか、当面はミルリエと一緒でないと許可出来ないと思う」

「それは、仕方ないと思います」


 それはそうだろう。どうみても兵器だ。使用に制限が入るのは当然だと思う。


「まぁ、ロールアウトするのにも暫く掛かるがな。凡そ3日と言うところだ。次に住居なのだが、ここをそのまま使っても構わないし、街に住居を移しても構わない。どうする?」

「どうすると言われても、ここしか知りませんし、3日? 3日で出来るんですか?」


「それもそうだな。じゃぁ暫くはここを君の住居としてくれて構わない。移りたくなったらその時に言ってくれ」

「はぁ、解りました。有難う御座います」


「3日と言うのは、後は個人調整で済む機体が何体が出来ている。それを君用に調整するだけだからだ」

「それで、足りなくなるなんて事は?」


「それは無い。元々余裕を持った計画で製造されている。君が心配するような事は何も無い」

「そうですか」


 僕の為に1機回して、本来手に入れるはずだった人に廻らないと言う事は無い様でほっとした。


「次に、これは協力要請になるのだが、マーナの研究を手伝って貰いたい」

「僕にですか?」


 これは、かなり予想外の話だ。この世界は僕の知っている以上に科学が進んでいると思う。

何よりも僕は一介の高校生で、研究なんて行える程の知識など皆無と言っても良い。


「君にしか出来ない事だ。君が元の世界に還る方法の研究を本格的に開始する」

「え?」


 サヤの言葉に僕は詰まってしまった。今現在、漸くこちらでの生活に慣れて来たと言うか、自分の状況を受け入れて安定してきたと言う所だ。

もっと言うと、元の世界よりこっちの世界の方が楽しいし、面白そうなので還りたくなくって来ているとも言える。

そもそも元の世界での僕は、どう言う扱いになっているのかも不安だ。行方不明扱いが妥当なところだとは思うが。


「最後になるが、君はこれから我々と同居して貰う」

「はい?」


 何だ? 監視か? それ以外考えられないか。

しかし、ディーヴァが常に監視しているような物なはずなのだが、一体どう言う事だろう?


「迷惑かも知れないが、簡単に言えば予行演習だ」

「予行演習?」


 何か先程から疑問符しか浮かべていない気がする。

それに対し的確に答えるとは、サヤ恐るべし。


「君には何時になるか解らないと言っていたのだが、君が記憶を見る事を承諾してくれたのでな。そこからマーナが仮説を立てたのだ」

「仮説ですか?」


 仮説を立てたから実験すると言う事か。それだと何時になるか解らないのは変わらない気がする。

マーナの方を見ると凶悪な胸を逸らして自慢気だ。かなり自信が有るのだろう。

しかし、それと同居がどう結びつくのかが解らない。


「ディーヴァの試算では、30日程度で実現可能なそうだ。それも君の協力があればと言う条件付きなのだがな」

「はぁ………」


 凡そひと月で元の世界に還る事が出来ると言う事か。嬉しいやら残念やら複雑な気分だ。


「君が元の世界に還る時に、我々も付いて行くつもりだ」

「は、はいぃぃっ?」


「上手く行けば、君の世界と交流を持ちたいと言うのが我々の目的だが、その為にも君と生活を共にして、そちらの世界の予行演習を行いたいと言うのが同居の理由だ」

「えぇっと、それって元の世界では暫く僕と暮らすと言う事?」


「速やかに我々の拠点を創るつもりでは有るが、当面はそうなるかも知れない」

「解りました。構いませんよ」


 ひと月程度の同居生活なら問題無いだろう。裸を見られても平気な彼女達であれば、往々にして有りそうな男女同居による弊害も起こり得ない。

僕に取っては蛇の生殺し状態だが、ここに来て色々慣れている事を考えれば、僕の感性だけの問題だ。


「了承してくれて助かる」

「な、な、何脱いでるんですか!」


 僕が了承した途端に、サヤは外装を解きインナー姿と成っていた。

サヤだけでなく、ミルリエやカヌン、そしてマーナまで。


「ん? 公務を離れたと言う事だ」

「だからって、脱がなくても良いと思いますけど?」


 水着だと思おう。そう、ここはプールで彼女達は水着姿なんだと。ここはスポーツジムで彼女達はレオタード姿なんだと思っても良い。

いや、それは駄目だ。さっきの訓練施設での情景を思い出してしまい、逆に危ない。あれは危険だった。180度開かれた脚だとか、汗が流れ落ちる胸の谷間だとか。


「我々は、自室では粗インナー姿か、それすら脱いでいるぞ?」

「わ、解りましたから、インナーは脱がないで下さい」


 何を基本全裸宣言しているんだか。進化した裸族とか意味解らないから。


「裸くらい慣れた方が良い。ハーレム」

「いやカヌンさん、そんなの望んでませんから」


「そうなの?」

「いや、出さなくて良いから、出さないでぇ~っ!」


 カヌンは、僕の記憶の断片を表示させてくれる。そこには、アニメやラノベで見た様な、一人の男に抱きつく複数の美女美少女の絵。


「ハーレムは置いておいて、そうだな、我々の事は家族とでも思ってくれれば良い」

「家族ですか………」


 家族と言う言葉に良い思い出は無い。確かにサヤの言う通り家族なら、下着姿で歩きまわる姉や妹が居る家も有るだろう。

だが、僕には無縁だった話だ。物心付く頃の記憶ですら、家族と一緒に風呂に入った記憶すら無い。

鬱な思考に入ってしまった僕は、周りの心配気な顔にすら気付かなかった。だから、ぽふっと頭が柔らかい物に包まれたのも、何が起こったのか認識出来て居なかった。


「そう、家族ですよ。私達にはユーマさんの認識する家族と言う物が、どの様な物か正しい意味で理解出来ていません」

「………」


 僕の頭を包んでいるのは、マーナの豊満な胸だった。何時もなら振り払うであろうその行為も、今の僕は何故か安らぐ感じで受け入れている。


「多分、我々のホームでの感覚に近いのでは無いかと認識しております」

「ホーム?」


「街でご覧になられたと思いますよ? 幼い子達が居た施設です。我々は幼少期をあの様な施設で育ちます」

「あぁ、皆楽しそうだった」


「私達は、ユーマさんの家族に成りたいと思っています」

「家族に?」


「はい、寂しい時悲しい時、マザーの誰かがこうやって抱きしめてくれました。嫌ですか?」

「いや、安心する。有難う」


 僕はされるがままに成っていたのだが、落ち着いてくると自分の姿が恥ずかしくなって来てしまった。

と言うか、マーナ大胆過ぎるだろ。マーナは僕の膝の上に跨り、僕の頭を胸に抱えていたのだ。気が付くと眼と手のやり場に困る。


「あ、有難う。もう落ち着いたから」

「そうですか? こんな事で良ければ何時でも言って下さいね?」


 なんとかマーナの胸から顔を離し、マーナを僕の膝の上から降ろした。

何故名残惜しそうにするのか解らないが、なんとかマーナも離れてくれて漸く体制を立て直せたところだ。


 話の続きが有るかと思ったのだが、どうやら話はこれで終わりだったらしい。

カヌンはポリポリと栄養ブロックの様な食事中だし、サヤとミルリエも別なテーブルで寛いでいる。

僕もインタフェースから情報を得る事にした。




 翌日からの僕は、充実した日々と言うのだろうか? 色々と忙しい日々を過ごす事と成った。

まず、マーナによる実験の被験者が朝から始まる。何か不思議な機材を身体に付けられて、何かの測定を行なっているらしい。

それと合わせてマーナの質問に答える。マーナの研究室? の研究員の人も色々と聞いて来る。

本当にこんな事が必要なのか? と思う様な事も多いが、文化の違いから解らない事は聞く姿勢なのだろう。

女性物の下着の事なんて聞かれても解らないのだが、答えない訳にも行かない。


「ユーマさん、どう見ても見せる為に着飾っていると思われるのに、どうしてインナーを見られると訴えられるのでしょう?」

「普段隠してるからじゃない」


「その割には、外装の丈が短くて見せつけている様にも見えますが」

「乙女心は、僕には判りません」


 僕だって制服のスカートを、下着が見える程短くする理由なんて知らないよ。


 因みにマーナの所の研究員は皆、マーナと同じ眼鏡を掛けている。

これは視力補正ではなく、視線による色々な操作が出来るインターフェイスの補助装置らしい。

彼女達は、インナーの上に寸足らずの白衣を来ている姿だ。どうやらマーナの直轄は、この姿らしい。制服っぽい外装で身体を締めるよりも、ラフな格好で効率重視と言う事だと言っていた。


 午後からはミルリエによる訓練だ。例のジムの様な所での基礎訓練から、生身での戦闘訓練。そして装甲機での動作訓練までだ。

なんと、あの装甲機は飛べるのだ。僕の世界の戦闘機並の速度を出す事が出来るらしい。つまりマッハの世界だ。

残念ながら、それは浮遊大陸の外でしか実際に飛ばす事ができず、今の僕はそれに向けて猛訓練中と言うところだ。

サヤの言う通り3日で仕上がった僕の専用機は黒かった。僕は二刀流の武装をしていえる。ミルリエからは、「珍しいですわね」と言われのだが、そこは浪漫だと答えておいた。


 戦闘訓練では、獲物を使った模擬戦の他、素手での体術戦も行われる。

ここに来て僕は自分の身体能力に違和感を感じていた。見えるのだ。本職の戦闘員たる彼女達の攻撃が。

また対応も行える。僕自身としては体術なんて言う物は、体育の授業でやった柔道ぐらいしか覚えがないのだが、一本背負いなんてお手の物でカンフー映画やゲーム等で見た様な動きまで出来てしまう。

出来ると思って身体が動くのだから仕方がない。組手になると例のインナー姿の女の子達と組んず解れつなのだが、いや全く迸るパトスの行き場が無く困ってしまう。


 しかも最近では、組手になると何故か皆打撃よりも搦手が多い。僕が避けているからきっと弱点だと思われいるのかも知れない。

やたら腕を脚で挟まれたり、胸に押さえ付けられたり、上に乗られたり、まるでプロレスだ。しかも汗でお互いヌルヌルだったりする。


 なので、僕はミルリエと洗浄ルームに行く事が多い。流石に今では一人で入らせて貰っているが、脱衣場は相変わらずだ。

僕が全裸では無く、腰にタオルを巻いて移動するので、ミルリエが真似をしだした。僕は、女の子はこうする物だと、胸からタオルを巻かせたら、何故かそれが流行って、今では皆タオルを巻いて移動している。

ちょっと嬉しいやら残念やらなのだが、皆お尻が隠せてない。隠す気は更々無い様子で、一つのファッション感覚なのだろう。


 プライベードでは、あれからサヤ達は僕の部屋で寝泊まりしているのだが、なんとかサヤ達のインナー姿ぐらいでは動じなくなった。

流石に危ないポーズには顔を紅くする事も屡々だが、そこは男の子なので仕方ないと思う。奴等が無防備過ぎるんだ。

食事は相変わらずだが、紅茶やクッキー等は最近ではお気に入りに入った様子だ。マーナの研究室やミルリエとの訓練の合間にも時々要請されて出しているので、結構浸透してきている。


 僕がサヤ達のインナー姿に動じなくなったのには、他にも色んな要因が有る。

マーナの研究室でも殆ど皆インナー姿だし、基礎訓練は皆インナー姿で、更に戦闘訓練になれば、そのインナー姿の女の子達との組手まで有る。

洗浄ルームでは、皆平気で裸になるし、今ではサヤ達以外にも顔見知りが多数出来たのだが、皆見られる事に全く無頓着なのだ。

そして極めつけがこれである。


 毎夜の様に団体が僕の部屋に訪れる。目当てはお酒だ。結局自分達では同じ様に再現出来ないため、僕の所に遣って来るのだ。

最初の頃はサヤ達4人だけだったのだが、娯楽と言うか間を持たす様な物が無いこの世界では、サヤ達がインナー姿だと言うのも有って居辛く感じていたのだ。

そこに怖ず怖ずとやって来た女の子達に、気が紛れるから何時でも来てくれて構わないと言ったのが、僕の間違いだった。


 最初に来たのはマーナの所の研究班だったと思うが、それを聞きつけてカヌンの所の諜報班がやって来たのは、流石に諜報のプロだからだろうか。

当然ミルリエの所の実働班も雪崩れ込んで来て、僕の部屋は連日宴会模様なのだ。一応休日とされる日も「来ちゃった、テヘペロ」な子が結構居る。

この部屋は僕の部屋と言う位置付けのため、僕が許可したためサヤなんかも異論を言えないらしい。と言うより一緒になって何時も飲んでいる。


 つまり毎夜毎夜、インナー姿の見目麗しい女の子が多数転がっている状況であれば、それは慣れると言う物だ。

最近では、ピンクの下着とか黒の下着とかが恋しいくらいだ。インナーの色や、外装のデザインは個人で変えられるそうだが、そう言うのは就学時代に皆終わらせているらしい。

結局は、インナーは白で、外装は制服で指定されている型か、素の白衣の様な形で済ます様になってしまうと言う事だ。

自由度が有り過ぎるがために、無難でシンプルな所に落ち着くと言う事だろう。


 兎にも角にも、僕はスキルをゲットした。それは、リア充なんて怖くないと言うスキルだ。

殆ど1日中、白の競泳水着の様に薄く更に際どいインナー姿の美少女達と居れば、それは、僕の世界で言うリア充ですら届かに幸福と言う物だろう。

しかも戦闘訓練では、そんな女の子達と絡み合っているし、洗浄ルームで全裸も見放題。誰に怒られる訳でも嫌がられる訳でもない。

今まで、「爆発しろ」と思っていた側から、思われる側に回ったと言う事だ。思う男はここには居ないけどね。


 そんな楽しい時間は、あっと言う間に過ぎ、僕が元の世界に戻る最終実験の日がやって来た。

マーナの仮説では、これで僕が元の世界に戻れれば、元の世界とこの世界で行き来出来る様になるらしい。

こちらに来た時は文字通り身一つで来たのだが、今は普通にインナーと外装、それにインターフェイスまで装着したままだ。


「ユーマさん、準備は良い?」

「はい」


 僕は、こちらに来た時に寝かされていた場所に横たわっている。

周りには、サヤ達の他研究班や実働班、諜報班の人達まで見守りに来てくれている。

これで最後と言う訳では無いので、別れの挨拶等は無いが、皆一様に心配そうに見守ってくれている。ひと月程の間に僕もかなり多くの人達との繋がりが出来たのだ。


「それでは、返還を開始します。ユーマさんは、身体の力を抜いてリラックスして下さい。何も心配要りません。インナーと外装がユーマさんを護ってくれます」


 余計不安になったけど、僕はマーナを信じ身体の力を抜く。


「眠るつもりで、リラックスして下さいね」


 そう言われて、僕は眼を瞑った。来た時とは違いマーナ以外にも色々と作業している研究員の人達が居る。

その動作の音が徐々に薄れて行く。僕は、そのまま意識を失った。




 けたたましい目覚ましの音がする。何時もの通りまだ眠い僕は、眼を開けずに手だけで目覚ましを探す。

手を一頻り動かして、漸く目覚ましを止める事が出来た。


 もう少し寝ようか? 今日は何が有ったっけ? 何か長い夢を見ていた気がする。今日が休みなのか学校へ行かなければいけないのかも思い出せない。

目覚ましを止めて降ろした手が何か柔らかい物に当たっている。何だこれ? 掴むとむにゅっとした感触。徐ろに眼を開けると、緑色が眼に飛び込んで来た。

僕の手は、白い布の上の丸い膨らみの上で、ニギニギしていた。


「あ、ユーマさん、おはようございます」

「お、おはよう」


 僕は、周りを見渡す。狭い1LDKの部屋の狭いベッド。間違いなく見慣れた僕の部屋だが、何故か僕のベッドにはインナー姿のマーナが、今まさに眼鏡を掛けている。

LDKのテーブルには、黒髪銀髪金髪の女の子が、白い水着姿で座ってお茶を飲んでいる。


 誰だ彼女達は? あれ? 僕は彼女達を知っている。サヤにミルリエとカヌンだ。


 あっ、僕は還って来たのか。少しの喜びと大きな落胆。そして沸々と湧き上がって来る不安。

ひと月程、行方不明だったはずだ。僕は、一体どう言う扱いになっているのだろう。僕は、慌ててスマホを探した。机の上で充電中の僕のスマホ。

学校は兎も角、アルバイト先は無断欠勤になるため、メールや着信が多量に有るはずだ。


 まず、スマホの日付で今日が日曜日だと知った。そして、メール受信も着信履歴も無い。


 どう言う事だ?


 落ち着け僕。あの世界に行く前の僕は何時だった? 確か次の日は学校もアルバイトも休日だったため、遅くまでゲームをしていたはずだ。

そう思い出しPCを見ると、電源が入りっぱなしだった様で、マウスを動かしただけでスリープ状態から立ち上がる。


「ほ~、これがこちらの文明か?」


 サヤの言葉に皆が僕のPCを覗きこむ。そこに映っているのは、向こうに行く前までやっていたゲームの画面だ。

女の子の下着が見える二次元画像。僕は慌てて画面をクローズしようとして、ある表示に気が付いた。


 ログインタイム。ログインしてからの経過時間だ。それが12時間しか経っていない。誰かが僕の居ない間に動かしたのか?

いや、そんな事は無いと思う。もしそうだとしたなら、あまりにも部屋の中が変わっていない。


「マーナ?」

「はい、なんですか?」


「僕がそっちの世界に行ってから時間が経って居ない様なんだけど」

「はい。多分、殆どタイムラグ無しに、居なくなった時間にユーマさんは戻っていると思いますよ?」


 何でも無い事の様に、ニコニコしながらマーナは言った。


「どう言う事?」

「え~っと、ちゃんと説明すると面倒なんですけど、簡単に言えば此方の世界への接点が、ユーマさんが居なく成った時空と言う事です」


 ここで突っ込んではいけない。僕はひと月程で学習したんだ。

ここで突っ込むとマーナは止まらなくなる。それこそ1日中この説明に費やす程に。

それでも一つ、どうしても気になる事が有った。


「じゃぁ、此方でどれだけ時間が経っても、向こうに行くと僕が居なくなった時になるの?」

「それは、もう無理です」


「何で?」

「簡易的にですけど、繋げちゃいました」


 テヘペロ風味で、そこには僕が居た頃には無かった扉が有る。

そっちは、隣の住人が居ると思うのだけれど、その扉を開けるとマーナの研究室だった。


「え?」

「「「「はぁ~い、ユーマ君」」」」


 向こうからは、研究員の皆が手を振って居る。


「えっ?えぇぇぇ~~~~っ!」

「まだこの大きさだし、簡易的で不安定なので、研究室で厳重に管理してますが、人が通る分に問題ないですよ」


 ただ、よく見ると向こうに直接と言う訳では無い様子だ。向こうの皆はガラス張りの様な仕切りの、更に向こうに居る。

そう言えば、マーナが言っていた。こちらに有る病原菌が、どの様に作用するか解らないと。


「えっと、皆は大丈夫なの?」

「何がですか?」


「その、マーナが言っていた、病原菌とか抗体とかの話」

「あぁ、今、詳細を調べていますが、私達には影響無いみたいですね」


「そっか、良かった」

「心配してくれていたのですね。有難う御座います」


「あ、でも、こんな扉が出来るなら、僕もここから通れば良かったんじゃないの?」

「これは、ユーマさんの返還が成功したから、繋げる事が出来たのですよ?」


「そうなんだ」

「はい、私達も此方に来たのつい先程ですから」


「あれ? じゃぁ何でマーナは僕の隣で寝てたの?」

「ユーマさんが中々目覚めないので、私のインナーの生命維持機能を使って確認して見ようと思ったのですよ」


「あ、え? でも、それなら、僕のインナーの機能を確認すれば良かったんじゃないの?」

「勿論、しましたよ? でも異常が何も無いのに、ユーマさんが中々目覚め無かったからです」


「そ、そっか。ごめん、心配掛けたんだ」

「いえいえ、ユーマさんだけは、召喚システムで転移してますからね。不具合が有っては、私のミスと言う事に成りますから」


 成る程、つまり僕だけ身体の構成を造り直されていると言う事だ。

この辺りは、向こうでマーナから召喚システムについて説明を受けている。

マーナ達が研究した僕の記憶と言うのは、単なる僕が覚えて居る事だけでは無く、僕の細胞が覚えている事を利用して僕を元の世界に戻すと言う方法を取ったらしい。

そして、その時の僕をトレースしておき、僕の着地点に通路を開くと言うのが、あの扉だ。

理論は、良く解らないが、そんな感じだったと思う。


 こうして僕の同居生活が始まった。



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