騒々しい昼下がり
注文した料理が運ばれててから二人は黙々と料理を食べ始めた。 二人とも食事の間は料理を食べることだけに集中したかったのだ。
その二人を厨房から眺めている人物がいた。 この店の主でありS級悪魔のシンクである。
その視線に気づいたのかアルダは顔を上げた。
絡み合う視線。
彼はその目に宿るモノの正体が何なのか瞬時に理解した。
数秒後、 彼が視線を手元のフライパンに戻すと彼女もまた視線をハンバーグに戻した。
シンクの口が歪む。 ああいう類の人間の顔を歪ませ地にひれ伏させるのを想像するのは楽しかった。 強い敵に限る、 が。
「てんちょーどうしたんですか?」
見るとマリが不思議そうに立っていた。
「あ?俺がなんだよ」
シンクは想像を妨害されたことに苛つきながらマリに聞き返した。
「さっきから一人でニヤニヤしてますから」
気づかないうちに顔に出ていたらしい。シンクはわざとらしい笑みを浮かべて言った。
「俺のことなんか気にしねーでさっさと注文とってこい!」
「は、 はいぃ!」
マリが行ったのを確認してからシンクは 今日の晩飯について考えていた。 紫髪の青年がその様子をちらりと見た。
「ご馳走様でした」
アルダは手を合わせて軽く礼をした。先に食べ終わっていたスタウトが財布を胸ポケットから取り出して会計に向かう。
「あのっ、 大丈夫です、 から」
アルダがスタウトの腕を掴む。
「いや、 俺に払わせてくれ」
スタウトはアルダの手をやんわり払いのけると会計を済ませた。
「そういう関係?」
厨房からニュッとシンクが出てきて二人に話し掛けてきた。 爽やかなオーラを醸し出している。
「違います」
アルダは間髪入れずに答えた。
店内には微妙な空気が流れたが二人はすぐ出ていったのですぐに元に戻った。
店から出るとリスキーとシェリーがかなり距離はあったが立っていた。 二人ともぶすっとしていた様子から決着はつかなかったようだ。二人は顔を見るなり互いのパートナーに駆け寄った。
「アルダちゃんひでぇよぉ。 オレを置いて他の野郎とどっか行っちまうなんてぇ」
「知りません。 あなたが勝手に喧嘩ふっかけたんでしょ」
アルダはリスキーの右耳を引っ張り、 溜め息をついた。
「だ、 だっさぁ! 尻に敷かれてる!」
スタウトに抱きついていたシェリーが身体を離してリスキーを嘲笑した。
「くそっコイツやっぱりムカつく!」
リスキーとシェリーがまた喧嘩になりそうだったのでアルダは仕方なく行動に移った。
右腕をリスキーのわき下にいれ、腰を曲げて、 リスキーをかつぐ。 そして地面に投げた。
「うぉっ!?」
突然の地面に叩きつけられたリスキーは情けない声を出して転がっていた。
続けてアルダはシェリーの方へ向かった。
「な、なによ......」
シェリーは後ずさりするがアルダは無言で指先をまっすぐにしてシェリーの頭にチョップを食らわせた。
「〜〜〜っ!!」
「喧嘩両成敗」
アルダは両手をはたいてから宿舎へ向けて歩き出した。 もしかしたら、 もうバレットが届いているかもしれない。後ろから文句の声が聞こえてきたがアルダは無視した。