アルダの怒り
入学式はその後は円滑に進んでいった。アルダとリスキーを除いて。
2人はまず体育館から強制退出、 およびに別室で反省文1000文字の停止を命令された。
アルダの身体は怒りと混乱に支配されていたが扉を壊した当の本人、 リスキーはヘラヘラ笑いながら見張りの女教師にナンパしていた。
「先生、その髪型超可愛いね」
リスキーは反省文から逃れるために教師を褒めちぎるが教師は無視した。アルダはその猫撫で声に少し寒気がした。
「黙って書きなさい」
教師は2人を一瞥して、一旦部屋から出ていった。瞬間、 紙と鉛筆が扉の方へ一直線に飛んていった。 もちろん飛ばしたのはリスキーである。
「やっと出ていったぜ。 あのオバサン」
リスキーの声はさっきと打って変って冷めたものとなっていた。
アルダはこめかみを押さえた。 これは怒りを抑えるための彼女なりの方法であった。 そしてリスキーに言った。
「どういうつもり......ですか?」
彼女の声は若干低くなった。 一方のリスキーは口を開けて呆けている。 どうやら自分がしたことの重大性に気づいていないらしい。それがアルダの怒りを増長させた。
「あなたって人はっ!!」
アルダの右手が空を切りリスキーの頬に触れる直前に手が掴まれた。それはリスキーの左手でさらに彼はアルダを自身へ引き寄せた。 その手はアルダの頭へ向かい、 髪を撫でまわし始めた。
今度はアルダが呆然とする番であった。
「アルダちゃんの髪、 触り心地サイコー♪」
彼はケラケラ笑いながら続けた。
「そんな怖い顔しないで。美人な顔が台無しだよん。でも......オレのタイプじゃぁないなぁ」
アルダはリスキーの視線が胸部に向いていることに気がついた。
アルダの右手は拳を作り見事にリスキーの頬にクリーンヒットするのにそう時間は掛らなかった。