4 相棒
エルクロス学園の入学式が始まって30分が経過した。
現在、 学園にいるほとんどの人間が視線をステージの上に立つチェルシーに向けている。 …………1人を除いて。
「――では、これからの皆さんの活躍に期待しています。 くれぐれも紫の髪の先輩の真似はやめて下さい」
チェルシーはその人物を一瞥して、 ステージを降りた。
2年生の席からは笑い声が洩れた。
その間、 アルダは別のことに少々気を取られていた。
――隣の席が空いている。
1年生の席は1クラス男子1列女子1列で構成されている。
エルクロス学園では1年間2人 1組で行動を取らなければいけないという伝統的なやり方があった。 これは生徒の身を守るためである。 そして今己が座っている隣に座る人物が1年間自分のパートナーなのだ。
だがアルダの席の隣には誰もいなかった。
欠席か、 と思ったところで体育館の入り口からバーンと派手な音が響いた。
全員の視線が入り口に集中する。
音の正体はすぐ判明した。
それは扉が壊れた音。
「誰だ!」
職員の1人が声を上げた。
「やぁーっと着いたわ」
扉を壊した本人らしき男がダルそうに呟いた。
「君! 遅刻の挙げ句器物損害とはどういうつもりかね!」
教師達が男を取り囲む、 がそれは意味のないことだった。
男はありえない跳躍力を発揮したのだ。そしてそのまま例の空席にストンと降りた。
場が静まったところで男はアルダの肩を掴んでニッと笑った。 「キミが俺のパートナー? 俺、 リスキー。 よろしくちゃん♪」
アルダは目眩がした。