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2 消えた笑顔
艶やかな亜麻色の髪がハサミによって切り落とされた。
「もったいないわ。あなたの髪、とても綺麗なのに」
「お気遣い感謝します。でもこれからの生活に長い髪は邪魔でしかないから……」
ある小さな美容室に若い女が二人。
1人はハサミを持つ美容師の女。
そしてもう1人、今、髪を切られた女がアルダである。
アルダは目の前にある鏡に映った自分を一頻り見つめた。
淀んだ目、一文字に結ばれた口、少し痩けた頬。
とても幸せそうだとは言い難い顔だと思った。
明日から自分は祓魔師の候補生。笑っていられるような状況ではないのだ。
不安?怖い?逃げ出したい?
そんな感情は捨てるんだ!!
私は全ての悪魔を滅ぼす。そのために今日まで生きてきたんだ。
「どうしたの?」
美容師が不安そうに聞いてきた。
いつのまにか怖い表情になっていたようだ。
「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してただけです」
会計を済ませて外に出ると公園で遊ぶ子ども達が屈託のない笑顔で笑っているのが見られた。
「私、あんな表情もう忘れちゃったよ……」
アルダの視界が滲んだ。