1-0 独白
死のう死のうとぼんやりと考えているうちに毎日は終わっていった。
次の日起きた時にはまた、死のう死のうと思うのだが、具体的にどう死のうか、と考えることはなかった。
加えて、どうして死にたいと思っているのかも。
生きている意味が無いからだろうか、とこれもぼんやりと考えたが、はたして死ぬ意味があるのだろうか、それなら少しは生きてみよう……と考えた次の瞬間にはまたうっすらとした黒い衝動に苛まれた。
何故自分が死んでいないのかと思うほどに自分が生きていることが不思議だった。
目の前を通り過ぎる無数の自動車を眺めているとその流れに乗ってどこか別のところへ行けそうな気がしてきたし、踏切の遮断機の音には強く惹かれていた。
それでもなお、一線を画することはなかった。
結局紆余曲折して考えたのは、自分が死にたくとも苦しみたくないということだった。
実に我侭で滑稽な話だが、どうやら自分は死よりも痛みを恐れているらしい。
痛みと闘いながら生きとし生ける人々に申し訳ない気分になるが、それも苦しくなったために考えるのをやめた。
苦しまずに死ぬ方法はいくらでもあるかもしれないが、それを実行するために必要な下準備をしようと考えるとひどく不快な気持ちになった。
これが生きたいという感情なのだろうか、それなら何とも後ろ向きなものだと勝手に結論を出してまた代わり映えのない日常に戻った。
また苦しみから逃げたのだ。
そして今からちょうど一年前、自分はその妄執から解き放たれた。
あるいは、されに縛り付けられただけかもしれないが。