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第2話 ゲームスタートッ!

 開始から一時間後、僕の目の前には燦々と輝く太陽が浮かぶ青い空と白い雲が広がっています。


 『始まりの広場』と呼ばれる九柱神殿前の広場に出現した僕はたっぷり5分ほど感動に打ち震えていたのですが、あとからあとからやってくるプレイヤーがどんどんと神殿へ向かうのに気付き、もしかしたら邪魔になっているのかもと思い、場所を移したわけです。


 正式オープン初日の今日を祝うかのような快晴の空の下、ゆっくりと深呼吸をすると森の中にいるような汚れのない新鮮な空気が肺を満たします。


少し前までは味覚や嗅覚は再現できないと言われていたようですが『トリアングルム』その常識を覆したようです。


 眼下では何人ものプレイヤーが僕と同じように深呼吸をして驚いています。


 少し離れた市場のような場所に既に訪れているプレイヤーも見えるのですが、彼らも屋台の食事を食べて驚いているようです。


 ゲーム内での飲食でも満腹中枢に信号が届き食事が食べられなくなるので、気を付けるようにアナウンスされていましたが、やっぱり気になりますよね、僕も後で行ってみましょう。


 ぐるっと周囲に目をやると高い建物が一つしかない為、東側以外は町が全て見渡せます。


 石造りの建物が多くなんとなく北欧を思わせるこの街はユーテシア帝国の首都『ユティ』、プレイヤーはもちろんNPCも大勢いて沢山の建物が立っており、大陸でも最大規模の街の一つです。


 全体的に白い建物が多く道もタイルで舗装されており、なおかつ多く樹木が残された美しい街ですが最大の特徴は何と言っても街の東に立つ『帝城シルワ』でしょう。


 背後に広がる森に土台が飲み込まれているかのように見えるその城は一際高い巨大な木をくり抜いて作られた5本の尖塔が城の四隅と中央に立っており、それぞれが空中回廊で繋がっているとても美しい城でした。


 PVで見たときも綺麗な城だとは思いましたが、こうして目の当たりにするとため息が漏れるほどの美しさで、なんとかしてアレの上に登りたくなってきます。


「突然ごめんなさい、キミはそこで何をしているの?」


 そうして城に見とれていると急に耳元で女の人の声がしました、思わずビクッとして尻尾の毛が逆立ち膨らみます。


 キョロキョロしてしまいましたが、いるのは枝の先に止まっている小鳥くらいで当然ここに僕以外の人がいるわけがありません。


「ふふっ、そこじゃないわ、私はキミの右背後のカフェのテラスにいる、藤色の着物よ」


 声に導かれ右下に目をやると、背が低いながら直径の大きい木をくり抜きお店にしているカフェがあり、2階のテラスにそれらしい人が確認できました……同じ席に並んで座っている鎧姿の女性が手を振っていますから間違いなさそうです。


「えっと、貴女はわかりましたけど……もしかして僕、目立っていましたか?」


 出来る限り人目に付かないようにこの枝葉の多い木を選び登って、生い茂る葉の中に隠れていたつもりだったんですが……。


 僕が今いる場所は九柱神殿から離れ、人気の少ない路地の中に立っていた高さ20mほどの木の上で、現実での反省からあまり目立たないようにするつもりだったんですが、早速見つかっていたとなると……他の人にも見られている可能性が高いですかねぇ。


「あら、やっぱり隠れていたのね。式神を操る練習をしていたらたまたま見えてしまったの、ごめんね」


 枝の先に止まっていた小鳥がその声に合わせて飛び立つと、僕の肩に乗ってきました。


んと、この小鳥が式神なのでしょうか? ……そういえば『陰陽師』がそんな特技を持っていたような……。


「ふつうに見ていたら気付かなかったと思うわよ?」


 んー、一応バレバレの行動をしていたんじゃないですかね、よかったというべきか、これからはもっと気をつけないといけないと言うべきか……。


「それで始めに戻るけれど、キミはそんなところで何をしているの?」


「えーと、なんと言うか……街を眺めていました」


「……そんなところで?」


「はい、こんなところで……」


 若干呆れたような声でした、慣れているとはいえちょっとショックかも……。


「まーまー、そんなの人それぞれじゃないの」


 と、その時別の女性の声が聞こえてきました。


 先ほどの人が女性らしい落ち着きを持ったやさしい声だとすると、今度の人はいかにも活発そうな聞いているだけで元気になれる女性の声です。


「それよりさ、こんなに離れて話すよりもこっちにこない? キミ面白そうだしちょっと話そうよ」


 テラスを見ると、鎧姿の女性が着物の女性の顔の横に自分の顔をくっつけているのが見えました。


「ちょっと、リンったらそんなにくっつかなくても話せるわよ」


「あ、そうなの? なんか電話みたいな気がしちゃってさ」


「もう、あいかわらず早とちりなんだから」


 などと言う会話も聞こえてきます。


 さて、どうしようかな? 考えるように首を傾げましたが、考えるまでもなく気持ちは決まっていました。


 この初めての世界でせっかく向こうから話しかけてきてくれたんです。


「これもなにかの縁ですね、今からそちらに行きますから少しお待ちください」


 そう言うと僕はルートを確認し、『隠密』を発動、枝を蹴り空中に飛び出しました。


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