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自治省の悪臣  作者: 雪 柳
22/52

第六章 自治省の救助部隊 その5 


フローネの母、リウカ王女の死の謎。

20数年の時を経て、フッサール伯爵夫人は初めて真実と向かい合います。

その死に“アギール家”がどう関わっているのか。

アジヤ侯爵(フローネ父)は。ワグナ殿下(フローネ叔父)は。

リアンも否応なく巻き込まれていきます。


ワグナ殿下こと王弟ベリルは被災地の指揮を副官に任せると、

アジヤ侯爵別邸へと向かった。侯爵の直筆書簡が届いたのだ。

顔を合わせて嬉しいと思う間柄ではなかったが、

間違いなくフッサール伯爵夫人フローネが関わっている。無視できない。


フローネはアジヤ侯爵にとっては娘、ベリルにとっては姪にあたる。


アギール伯爵令息とフェヌイ子爵令嬢が駆け落ちした後、

ベリルは“生涯独身宣言”を出したが、姉であるリウカ王女は

父王キランサの命令で、現アジヤ侯爵にいわば無理やりに嫁がされた。


そうして生まれた姪フローネはベリルにとって“心の棘”となった。


*** *** *** *** ***


トマス州にあるアジヤ侯爵家・夏の別邸には船遊びができる人工池がある。

アジヤ侯爵夫人となったリウカ王女は、三日月夜に独り池の畔を散策していた。


池にはトマス州名花である夜酔蓮が花開いている。

名前の通り夜に咲く蓮の花で、純白の大輪から甘い香気が立ちのぼる。


姉の背後からベリル王子はゆっくりと近づいた。

とくに気配を消しているわけではないが、足音はほとんどない。


「刺客を送るとはまた…思い切ったことをなさいましたね」


成人前のベリルは薬草学と詩作が好きな文人肌。

優しい笑顔と穏やかな性格で知られ、まさしく「王子サマ」として

ファネ国民の人気を博す。


その彼が姉の前では凄惨な表情を浮かべていた。


リウカ王女も硝子玉のような無機質な瞳を弟に向けていた。


「…別にミアンの腹の子などどうでも良かったのですよ。

 他の男との子など、生きようが死のうが、私には関係ない」


夜酔蓮が風を受けて揺れる。リウカは黙ったままであった。


「けれど姉上、貴女はミアンの命を危険に晒した。

 お腹の子もろとも殺せと…毒薬を飲ませる命令を下した」


リウカは肯定も否定もしない。しかし、ごくわずかに口角が上がった。


悦んでいるのだ。


憎い女を消すことはできなかったが、結果としては悪くない。

ミアンは毒の後遺症に苦しみ、クロスとの2人目の子どもを守りきれなかった

自責の念で苦しみ続ける。ミアンの苦しみこそがリウカの悦びだ。


傾きかけた子爵家の小娘の分際でリウカを…“ファネ国の女王”と讃えられた

自分を、嫉妬に狂う浅ましい女に堕としたのだから。


ミアンの不幸がたまらなく嬉しい…しかし、その一方でリウカの中に

虚無が広がっていった。人としての自分が剥がれ落ちてゆく感覚。


「終に愛しい(クロス)から引導を渡されましたな。

 彼の世界には、もはや姉上の入りこむ余地などどこにもないのですよ」


アギール伯爵令息はリウカを殺しに来なかった。

クロスの刃を胸に受け、彼の腕の中で果てる、そんな結末すらリウカ王女は

思い描いていたのに。


代わりに彼がしたことといえば…王女に関わる全てを捨てた。

アギール伯爵令息はフェヌイ子爵令嬢と駆け落ちする時、王女との現在も未来も

かなぐり捨てた。そして最後に…剣の主と騎士として、確かに存在したはずの

忠誠心と敬愛の念と信頼、その全ての過去を消し去った。


「お分かりですか?姉上。貴女の手にはもう何一つ残っていない。

 もうこれ以上…生きていても仕方ないと仰るなら、永久に覚めぬ夢の中に

 でもお入りになってはいかがですか?」

ベリルはそれだけ告げるや姉に背を向けて夜酔蓮の池を後にした。

もう会うこともないだろうと思う。

狂いかけている女はアジヤ侯爵家別邸で幽閉の身となるのだから。


姉と弟…肉親の情がなかった訳ではない。

ただその僅かの情も愛する(ミアン)が狙われた時、砕け散った。


遠くで水音が聞こえたがベリル王子は振り返らなかった。


*** *** *** *** ***


アジヤ家別邸は、これで別邸?!と叫びたくなりそうな広大な敷地に

贅沢の極みという屋敷が築かれていた。

侯爵家が領主権力を政府に委譲してもなお、トマス州で一大勢力を誇っている

ことがよく分かる。


「お父様、お久しぶりでございます」


執事に車椅子を押されて、痩せて顔色の悪い男が現れた。

フローネがその前で貴婦人の礼をとる。

リアンはてっきり二人が既に顔を合わせていると思っていたが、違ったらしい。


「よくきた」

アジヤ侯爵は短い言葉で娘を迎えた。

しかし、再会を喜び合う親子、という感じは全くない。

続いて、フローネはリアンを紹介した。

ヴァンサランとイェイルは部屋の外に控えさせている。


「貴女が、自治省の政務次官。アギール家の…」

「父クロスと母ミアンの娘です」

リアンは役人としての礼をとりながら、きっぱりと言った。

同時にアジヤ侯爵の様子を伺う。

屋敷に来る道すがら健康状態が思わしくない、ということは聞いていた。


今回シャララ王妃が、自治省の視察に(かこつ)けてフローネを同行させたのも、

リアンのためという理由も確かにあるのだろうが、伯爵夫人を父侯爵とを

会わせる意図があったのだろうと察する。


「フローネがアギール家の娘をここに連れてくるとはな…」

その言葉にそぐわず、リアンを嫌悪しているような感じではなかった。

むしろ自分の娘と自治省次官を見比べて愉しんでいるようですらある。


「お父様、お伺いしたいことがあります」

フローネは近況を報告することなく本題に入った。

胸元から一通の書簡を取り出すと、リアンに付きつけた。中身を改めろというのだろう。


書簡はそれほど上質な紙ではなく、ところどころに年月による黄ばみができている。

しかし書かれた文字は鮮明で、末尾の署名を確かめるまでもなく、

リアンには誰の手によるものか分かった。


それは別れの手紙だった。


    貴女が奪った命は二度と戻らない。

    貴女の命を奪う代わりに、私は私の世界から貴女を消し去る。

    私の過去・現在・未来において、もはや貴女は存在しない。


「…父がリウカ王女に送った手紙ですね」


騎士団長であった父クロスは失われた二人目の子どもの報復に

剣も自動( カ)小銃(ラス)も使わなかった。

けれども、一通の手紙を送ることで首謀者である王女の心を壊した。

手紙の両端は皺が寄って歪んでいる。両手で強く握りしめてできたものであろう。


フローネはリアンから手紙を受け取ると、今度は父侯爵に手渡した。

「…この手紙をお前が持っていたとは」

「母に古くから仕えていた侍女が死ぬ前に渡してくれました。

 その手紙を読んだ晩に母は亡くなったと、

 この別邸に拵えた蓮池で溺死したと聞いているけれど…」


フッサール伯爵夫人はずっと真実を知ることを恐れていた。

できるなら一生、真実から目を逸らして、逃げていたかった。

それを翻したのは…山道で転落した時、死ぬかもしれないと思いが(よぎ)ったからだ。

あの瞬間、偽りよりも誠が欲しくなった。それがどんなに辛いものであったとしても。


「教えてください、お父様。お母さまが亡くなった理由を」


アジヤ侯爵は感慨深く自分の娘を見やった。母親によく似た面立ち。

成人して直ぐにフッサール伯爵家に逃げるように嫁ぎ、

以来実家にはほとんど寄り付かなくなった娘。


「夜酔蓮の池で溺れたのは事実だ」

「それは事故ですか?自殺ですか?他殺ですか?」

フローネは容赦なく追求した。


リアンは横に立って成り行きを見守った。

もともとリウカ王女に関しては良い感情は持っていない。

生まれるはずだった弟か妹を殺した相手となれば憎しみも沸く。


「クロスの手紙が、あれの心を砕いたのも事実だ」

「そして母は入水したと?それとも心が病んでいるところに誤って足を滑らせたと?」

「…後者として私は“事故”を処理した」

リアンには分かった。アジヤ侯爵は真相を知っている。けれども容易には明かさない。

恐らく…娘の次の言葉を待っている。


「事故に見せかけた殺人だと、なぜはっきり仰らないんです?

 殺したのは貴方ですか?叔父上ですか?それともアギール伯爵ですか?」


リアンは喘いだ。フローネの挙げた容疑者の面子が凄い。


まずアジヤ侯。確かに政略結婚で押し付けられた気位の高い王女が

邪魔になって…という線はある。


次に王弟ベリル。彼の動機は明白だ。愛する(ミアン)の命が殺されかけたのだ。


そしてアギール伯爵ハリド。フローネの中ではリアンの祖父も容疑者の

一人に入っていたのだ。息子夫婦を守るために王女に刺客を送った、というのか

…ありえないと言いたい。しかし、自分には激甘な祖父がふとした折りに

見せる政治家としての老獪さにリアンは気づいている。

先々代国王イランサの右腕だった人だ。絶対にない、とまでは言いきれない。


「…ずっとそうやって自分の父親や叔父を疑っていたのか?」

突然降ってきたそれは、いつものダミ声ではなかった。

他人(ひと)をくったような調子はなく、珍しくも国軍大将の軍服をきちんと

着こなしている。王弟ベリル、別名ワグナ殿下が現れた。


「まぁ、俺は殺る気だったけどな。

 俺のミアンを害するなら、誰であれ…例え姉でも許さない」


“俺の”って、わたしの母なんですけど、人妻なんですけど、

でもって故人なんですけど…などとリアンが口出しできる雰囲気ではない。


「…だが、お前の親父に止められた。

 金輪際、ミアンに手出しはさせないから、一度だけ見逃してくれ、

 許してくれと、泣いて土下座したぞ。

 お前の親父が、お前の母親のために、だ」


非常に…良い話っぽいが、リアンは聞き逃さなかった。

その時、ベリルはまだ成人してもいなかったはずだ。

年若い王子に侯爵が土下座したということは…そうしなければ妻の命がないと

本気で心配していたということで、当時にしてベリルがどれだけ本性を隠した

危ない男であったかということが伺える。


「…お父様や叔父上ではないのね」

「…追いつめるようなことは言った。

 直接手は下していない、というだけのことだ」

ワグナ殿下の素っ気ない物言い。

それでもフローネの気持は随分と楽になったようであった。

あからさまに、ほっとしたような表情を浮かべている。


焦ったのはリアンの方だ。消去法でいくと…

「え?まさか、お祖父(ハリド)様が犯人?いやいや、まさか…」

ワグナ殿下がお前は馬鹿かという視線をリアンに投げた。


「…手を下したのはトケイという騎士だ」

アジヤ侯爵が苦しげに吐いた。

フローネとリアンが同時に「誰ですか?」と尋ねる。


「前王キランサが女官に生ませた子だ。

 つまり現王やリウカ、ベリル殿下にとっては異母弟にあたる。

 リウカが騎士として引き立て、後見していた。

 そのせいかリウカに心酔していて…叶わぬ恋に狂う姉姫を見ていられなく

 なったのだろう。恐らくは睡眠薬か痺れ薬を飲ませた後、池に付き落とした。」

まさか彼がそんな凶行に及ぶとは思わなかった、とアジヤ侯爵は辛そうに目を伏せた。


「…その人はどうなったの?」

リアンの質問をベリルが引きとった。

「自殺した。姉を弔った後、姉の墓前で。まぁ、結局は無理心中ということか」


「…教えてくださって、ありがとうございます」

フローネはそれだけ言って口を引き結んだ。

リアンは何と声をかけていいか分からなかった。最悪の脚本(シナリオ)ではなかったはずだ。

けれども自分の母親が殺されたという事実は変わらない。


「…帰りましょうか、リアン」

もう用はないとばかりフローネは父に背を向けた。

その瞬間、浮かんだアジヤ侯爵の表情をリアンは見てしまった。

余計なお節介だと思う。けれどもリアンはつい口を出してしまった。


「リウカ王女を愛してらっしゃったのですか?侯爵」

「リアン!」

案の定、フローネは自治省次官を殺しかねないような視線を向けてきた。

「フローネが生まれて嬉しかったですか?侯爵」

()してちょうだい!」

フッサール伯爵夫人が金切り声を上げて飛びかかってきたが、

リアンはアジヤ侯爵から目を逸らさなかった。


「貴女に何の権利があって…!」

フローネがリアンを揺さぶる。

その薄紫の瞳から涙が盛り上がって今にも零れ落ちそうだ。


「私をここに連れてきたのは貴女よ。真実が知りたいんでしょう!」

フローネの腕が頭の傷に当たって、ズキリとした痛みが走る。

けれども心の方がずっと痛かった。

フローネの悲哀がリアンにも流れ込んでくるようだったのだ。


「…していた」

アジヤ侯爵がようやく重い口を開いた。

「お父様?」

フローネが怯えた表情で、父親を見つめる。

「愛していた、私はリウカを。

 前国王の婚姻命令は、王女には不本意なものでも、私は嬉しかったんだ。

 そしてフローネが生まれて、私は有頂天だった」

「う、嘘よっ!だったらどうしてお義母さまとっ!

 どうして私には同い年の異母弟が、リンネバードがいるのよっ!」

「…弁解はできない。リウカと心通わすことができなくて、辛くて苦しくて

 他の女に手を出したのは事実だ」

「私は…14になるまで、自分の大好きな乳母が、父の愛人で、

 仲の良い乳姉弟が異母弟だなんて知らなかったのよ?皆で私を騙してっ!」

「皆で騙して…それでもお前に幸せになってほしかったのだ」

フローネの顔が真っ赤になった。遅い反抗期だとリアンは思う。

ちらりとワグナ殿下を見やればつまらなそうな顔をしている。

そしてもう役目を果たしたとばかりに、さっさと彼は退室してしまった。


「か、帰るわよ、リアン」

「貴女は泊まってけば?私は帰るけど」

親子が完全に和解するにはまだしばらく時間がかかるだろう。

フローネは残った方が良いとリアンは判断してした。


「何を言っていますの!

 貴女から目を離したら、王妃様のご命令に背くことになりますわ!」

「…ああ、はいはい」

だんだん調子を取り戻してきたフローネにリアンは適当に相槌を打った。

とりあえず、祖父が殺人犯にならなかっただけ良しとして、リアンは

それ以上、アジヤ家の家庭事情とやらに首を突っ込まないと決めた。


暇乞いをする時に見たアジヤ侯爵の顔色はだいぶ明るいものになっていた。

希望があれば、そうそうポックリも逝かないだろう。


リアンたちが車に乗り込もうとした所に、二人の人影があった。

「お義母様…」

「もう行ってしまうの?」

「ここでの用事は済みましたので」

そこでフローネは車に乗ろうとしたが、しばし立ち止って、もう一度継母を見た。

アジヤ侯爵が再婚したのは、娘をフッサール家に嫁がせた後であった。


フローネには実母の記憶がない。彼女にとって“母”とは目の前の女性であった。

父が実母を殺したかもしれないと疑いだしてから、この“母”には

素直になれなくなっていたけれど。


「父のことをよろしく頼みます」

フローネは初めて、頭を下げた。続いて弟に向かって言い放つ。

「リンネバード、

 さっさと叙爵してアジヤ家後継者としての自覚を持ちなさいっ!」

「この家は姉上のものです!姉上がアジヤ家の…」

「私はフッサール伯爵家に嫁いだ人間よ。

 アジヤ侯爵家を継ぐのは貴方しかいないわ、リンネバード」

「でも姉上は伯爵家で…」

「他ならぬこのわたくしが、望んで嫁いだのよ。実家に出戻ってくる予定はありません」

そうしてぎゅううと弟リンネバードの頬を(つね)ったのであった。


「来年の立春祭は家族一緒に祝えるといいわね」

「お義母さま、でもそれは」(お父様の具体が…)

「大丈夫よ、だって…」

その後、継母が囁いた言葉にフローネは真っ赤になった。

恥ずかしさから、ではなく。どうやら酷く腹を立てたようであった。


リアン、フローネ、ヴァンサラン、イェイルと4人が乗り込んだ車が出発する。

独り湯気を立てているフローネに、リアンがのんびり尋ねた。

「お義母さまに何て言われたの?」

「父が具合悪いなんて…嘘だったの。仮病なんですって!」

「あら仮病で良かったじゃない?にしても、アジヤ侯爵はなかなかの策士よね。

 愛娘が釣れて、油断しているトマス州の不正役人も釣れて一石二鳥」

少しばかりリアンの口調が辛辣になるのは致し方ない。

結局のところ、導き出された結論は一つなのだ。


「何ですの?何が言いたいんですの?」

リアンに胡乱な眼を向けられて、フッサール伯爵夫人は怯んだ。


「お父サマもお義母サマも弟サマも、フローネのことが大好きっていうのが

 よっく分かりました。良かったわね~長年のわだかまりが解消されて」

それからふんっとそっぽを向く。


「…何を拗ねていますの?」

「別に拗ねていません!」


自分にはもう父も母もいない…フローネが羨ましくなったのだとは

口が裂けても言えない自治省政務次官であった。


*** *** *** *** *** 


かろうじて日付が変わる前にリアンは軍官舎に戻って来られた。


イロイロ精神的に疲れていた。


ヴァンサランたちと、視察続行の件は明朝相談しようということになって、

リアンはヨロヨロと自分に宛がわれた部屋に辿り着いた。


「お帰り。遅かったですね」

長椅子に座っていた男が、分厚い歴史書から顔を上げると、それは爽やかな笑顔で

リアンを迎えてくれた。まるでそこに居るのが当然とばかりに…しかし。


「長官、何でここに居るんですか?」

「ここがリアンと私の部屋だから」

「長官と私が同室なはずないでしょう?さっさと自分の部屋に戻ってください」


アジヤ家で真相解明に付き合わされた後、常識の通じないキリルと

対峙するのは正直かなり厳しい。体力も気力も限界だ。


「う~ん、でも私の部屋はフローネが使うことになりまして」

白絹の手がリアンの金茶の髪に伸びてくる。


「どういう…ってまさか、交換条件ってソレですか!?」

「もともとは次官と女官が同室だった訳ですが、フローネ曰く

 “次官殿は私の手には余る”だそうで、夜の間は選手(メンバー)交代(チェンジ)しました」

藍色の瞳が間近で楽しそうに揺れている。


「本人の承諾なく、勝手に決めないでください。

 ああもう、長官の頭の中がどうなっているか、私にはサッパリ分かりません!」

「そうですね、私たちは絶対的に意思(コミュニ)疎通(ケーション)が不足していると思いますよ。

 そこで、王都に戻るまで一緒に夜を過ごせば、互いの愛も深まるかと」


まずは頭の傷の様子を診ましょうか、とキリルにがっちり肩を掴まれて

リアンは逃げ場がないことを悟った。


フローネはやはり要注意人物その1だった。

自分の大叔父(キリル)叔父(ベリル)以上に危険な人物だとよもや知らぬはずはない。


かくて自治省次官を待ちうけるは王族出身で公爵サマ、自治省長官にして内務省長官という

大仰な肩書ばかりズラズラ持っている迷惑男に抱き枕にされて眠るという…

もの凄く不本意な展開であった。


フローネの「死ぬまでにやりたい事その1」が完了しました。


しかし、リアンにとっては大、迷、惑の事態です。

何故にキリルと同室?ぎゃぁあの事態です。


第六章、本篇だけでやはり終わりませんでした。お許しを。


次回「第六章 自治省の救助部隊 その6」

(ううっ、その6が出てしまった。これが本当に章の最後です)


青い海・白い砂浜のリゾートで自治省視察団が正義?の鉄槌を下します。

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