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ダンジョン配信に憑りつかれた男の娘~何万回死んでも潜り続ける、そこにダンジョンがあるから~  作者: プラン9


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第52話:スキルチェックは定期的に

 十三階層にまで潜るのに数か月、Aが生き返るのに数日程度。何故生き返ったのか、それはさっぱりわからない。

 ギルド職員が曰く、本来ならば助からない傷とのこと。生き返る見込みは1%にも満たない。


それが生き返った。喜ばしいことである。何十何百と死んだAとしても、いつ生き返ることができない死に方をするか分からない、という恐怖は常に付きまとっていたからだ。


 だが、こうして低いにも程がある確率生き返った。それに対し恐怖や不安を抱かないと言われれば、嘘になる。

 低い成功確率を乗り越えた先に待っているのは、主に成長ではない。何かしらの蓄積、不自由だ。傷が産まれる。綻びが産まれる。それが必然であり自然といえるだろう。


 故にAはこの日、復活し、目下の脅威も取り除いたというのに珍しくダンジョンに潜らず、冒険者面談所に赴いていた。

 ここでは初心者やパーティーを抜けてしまった冒険者のパーティー待ち登録、ギルド職員と相談をしてどのような武器・魔法が向いているかの相談、ダンジョン探索に心折れた冒険者の転職先斡旋等々……冒険者をやっていくにあたっての補助、そして冒険者引退後のサポートまで含めて行われる、砕いて言うならハローワークのような場所である。


 長年ソロで活動し、投資により老後必要な資産も容易を終えている。もはや引退しても末期まで暮らしていけるくらいの総資産を持っているAとしては、また訪れる事は無いと思っていた場所。


 当然今回ここに訪れたのは、引退後の就職先を紹介してもらう為でもなく、他のパーティーに引き抜いてもらう訳でもなく……この職業斡旋所にはもう一つ、役割がある。


 無数のモニターが壁にかけられ、その前には血圧計のようなものが置かれている。


「……余計な呪いとかデメリットスキルとか無いといいんだけどなあ」


 Aはそうぼやき、血圧計のような機械、スキル測定器に腕を通す。

 腕にかかる圧迫感。何やらホイールのような丸い物がAの腕を撫でまわす。


 スキル、というものは半世紀経った今となっても何も判明していない。ダンジョンの魔力に反応して発生する特殊能力。それ以外は不明だ。能力の遺伝も、スキルの類似性も、何もかもが不明。未だにスキル習得の方法は確立されていない(魔法は除く)


 そしてスキルも、決して恩恵ばかりを与えるものではない。スタミナ消費量増加、視力を0.8にといった、ほぼほぼ呪いといっても過言ではないろくでもないスキルを会得してしまう冒険者も少なくはない。


 無論何のきっかけもなくそのようなスキルを得てしまう訳ではない……が、どこで得てしまうかも不明な為、ギルドとしては定期的なスキルチェックを推奨している。


 そして、そういった摩訶不思議で何もわかっていないスキル取得だが、一部界隈ではこう囁かれている。

 高濃度の魔力を浴びて死んだ場合……ハイリスク・ハイリターンなスキルに目覚める確率が高い、と。

 

 Aはリビングアーマーという魔力の存在しない生物ではあるが魔力によって動いていたであろう魔物の高濃度の爆発によって、あやうく本気で死にかけた。

 そして、そのような早々無い死に方をしたのだから、何かスキルが目覚めていないか確認をしなければならないのだ。


 もししなかった場合、いわゆる地雷スキルと呼ばれるものを会得していて、肝心で重要な時に役に立たない、足を引っ張るとなる可能性も高い。それこそ健康保菌:○○(ダンジョン内にのみ存在するウィルス)なんてものを引いてしまった日には世界中が大パニックに陥るというもの。ウィルスを殺す抗体を作るまで監禁されるなんてたまったものではない。


 そうならない為にも、事前に確認が必要なのだ。……ここに来るまでの時間にダンジョンを探索できる、ということでAは滅多に来てなかったが。それこそ数年ぶりレベルだが。


「……数年ぶりに通帳に記入するみたいな感じと似てるなあ、この待ち時間」


 もしかしたら何か別のスキル、純魔の大剣や鷹の目以外のスキルが揃っているかも……? と期待半分、デメリットがあるようなスキルは目覚めててくれるなよという心配半分な心持で結果を待つ。


 ディスプレイに表示されるロボット犬が、先住民である犬相手と喧嘩をしているムービー……待機時間中に見せる映像もっと他に会っただろうとツッコみたくなるところで、映像が終了した。


 Aの検査結果が青い画面のディスプレイに白い文字で表示されていく。青い背景に白い文字、おまけに文字のサイズもかなり小さい為、読みにくいなあと不満に思いながらモニターを睨みつける。


「えーっと……純魔の大剣、魔力爆破、鷹の目……は、もう持ってるスキル、だね」


 モニターに羅列されるスキルの数は少ない。というより、Aの所有しているスキルが新人冒険者を含めても少ない傾向にある。


 生存のために必要な初期魔法や、身体の動きをサポートする補助スキル、武器の性能や修復を行う付与(エンチャント)と……最低限、六つは所有しているものが多いだろう。


 それ以下となるともはや死ぬためにダンジョンに潜ってると揶揄されてしまうものだ。


「……なんだろ、これ」


 やがて時間がかかって表示されたスキルは、Aが覚えた記憶のない──というより、見たこともないスキル名が一つ、ポンと乗っていた。


「……あー、ちょうどいいや。チカちゃーん!!」

「ヒッ……!! いや、大丈夫ここはギルド内殺しに来ない……んだ、何の用だA。あとチカちゃん言うな」


 偶然通りかかった、魔物すら怯える極悪面の大男、通称チカちゃんが怯えた声を出したが、すぐにここが無法地帯であるダンジョンではないということを思い出し、虚勢ながらも無様に怯えることなく対応した。


「いいからいいから」


 こっちに来い、と手招きされ、行きたくはないが……直近で共闘したしなあ、と渋々招かれるチカ。


「このスキルなんだけどさ……チカちゃん、知ってる?」

「あぁん……? いや、始めて見るが。なんだこれ」


 Aに促され、指差された箇所に書いてあるスキルを目にするが……チカにも見覚えがないのか、首を傾げられた。


 ダンジョンは広い。どのようなスキルが眠っているのか、また新たにスキルが産まれるのか判明していない。

 だが、新たに発見されたスキルであろうと、大抵はどのような能力を秘めているかはある程度名前から推察、もしくは考察できるものだ。


 だがAが新たに覚えた、四番目のスキルは……全く見たことのない、どのような効果か名前から把握すらできないものであった。


「『異形の螺旋:奇形黒龍』……名前からどんな能力か想定できる?」

「できる訳ねぇだろ。なんだこりゃ、俺も今まで見たことねぇぞ」


 『異形の螺旋:奇形黒龍』……スキル測定器の測定結果は、どのような能力でどのように作用するかまでは表示してくれない。


「:」が付いているということは何かしらの強化……ということなのは推測できるが、それくらいだ。何を、どのように強化するのか、多くの冒険者をスキル含めて徹底的に使いつぶして来たチカですら、スキル名からでは一切察することすらできない。


「……ダンジョン潜って試してみるしかないかなー」

「おう頑張れ」

「……あれっ、チカちゃんは気にならないの?」


 Aの口からダンジョンという言葉が出た瞬間にチカは立ち上がり、Aに背を向けた。

 心なしか早足で遠ざかろうとしていたチカはぴたっと足を止め、苦虫をかみつぶしたようなしかめっ面で振り替える。


「気になりはするが、オメェとダンジョン探索なんざ死んでも嫌だ」

「えー!? スタンピード一緒に解決した仲じゃーん!!」

「んなもんあれっきりだボケ」

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