第35話:配信アーカイブ#451
「ここが……依頼主達が隠れている場所、かな」
「達……? そうか、そういえばこの階層は三人以上でないと入れないんだったか」
「とはいえ、三人以上残ってるかってのが問題なのよね……」
:案外あっさり来れたな、黄色い葉のとこに
:なるほどこりゃ太い
:ぶっちゃけチチェロちゃん全然戦闘参加してないから、三人組って感じ全然しねぇんだよな
:蘇生できるくらいの損傷だといいんだが
「損傷しすぎていると駄目なのか?」
「う~ん……僕もよくわからないんだけど、頭が吹き飛んだり心臓部分がごっそり無くなってるとしづらいらしい」
「蘇生周りは未だ未知の部分が多いのよねぇ……とはいえ、頭部と心臓を失った死体の蘇生確率は一割程になることは判明しているわ。とはいえ心臓も頭も失った冒険者が普通に生き返ったりもするし、よくわかっていないのよ」
「まあ運だね運」
:体の一部しか戻ってこなかったのに生き返ることができたとかいうのもあったからな
:あったというか、すぐ隣にいるというか……
:体殆ど失った状態からでも生き返ったからな……A……
:割と人によるらしいな、どのくらいなら欠損しても生き返るかっていうの
:五体満足揃ってても蘇生失敗する時は失敗するからなあ…よく冒険者なんて仕事許してるな国は
:ダンジョン産の代物で得られる利益がデカすぎるからな
「まっ、なるようになるさ。っと……あの穴の中かな?」
:なんか……血の跡が続いてるんですが……
:そりゃ負傷した状態だからな血の跡も出るだろう
:というかコメント欄に浮上してこないんだけど依頼したらしき人
「……回復魔法使える人いたっけ?」
「私は攻撃専門よ」
「魔法使えない」
「だよねぇ……じゃっ、申し訳ないけどデスルーラさせるしかないかぁ」
:微塵も申し訳なさを感じないんですがそれは
:まあ無理に生かして苦しめるよりとっとと殺して送った方が無駄な苦しみ与えず済みはするが
:まあ今回の殺しは仕方ないところあるかな
「んじゃ、お邪魔しまーす……っと、これは中々……」
「……大分とキツいわね、これ」
:うわあ、うわあ……
:くりぬいた木の中に五人……生きてるかこれ?
:隅にあるのは駄目だな、完全に食いつくされてる
:顔どころか頭そのものが無い、こりゃ駄目だな
:もう片方のも駄目だな……ドライトマトみてぇになってる
:木の中を炎で焼いて炭化させたのは正しい判断だったが……
:テッポウムシは少なくとも入れない状態にしたのは賢明な判断だったが
:左右の子達は……送ったらギリ蘇生間に合うか?
:真ん中にいる子はさっきまで生きてたっぽいな。スマホ持ってるし、ロングソード膝に置いてるし
「鬼還の腕輪、自分が付けているものを除いて何個ある? 僕は三つだけだけど」
「私は二つね」
「一つ」
:手足吹っ飛ばされた時の予備として一つは携帯しておきたいな
:チチェロちゃんひとつは流石に
:つうかなんで鬼還の腕輪で帰れなかったんだ
:よく見たら全員鬼還の腕輪を付けてない……
:付けてたであろう手足もぎ取られてるな。なるほど……
「……え、A……来て、くれたの……?」
:顔の皮膚上半分はぎ取られてるな
:えぐい真似しやがるわエテ公…
:確か百花リトルフラワーのリーダー、だよな?あんな可愛かった子がえらいことに
「来たよー」
「よかった……もう、駄目かと思ったもの……このまま、みんな助からないんじゃないかって」
「……悪いけど、全員を助けることは不可能よ」
:予備のを全部使えば全員助けられはするんだが、予備を失うってなると…まあ、こうなる可能性あるってことだからなあ
:非情に見えるかもしれんが、二次被害三次被害防ぐためには予備持っておかないとだから
「僕たちが助けられるのは三人までだ。確実に助かる君を除いて二人、誰を助けるかは……君が選択したまえ」
「……ごめんなさいね。私達にも、腕輪の予備は必要なのよ」
「……そう。仕方、ない、か……」
:パーティーメンバーを誰か切り捨てないといけないって、中々酷なことをやらせるもんだ
:まあ余計な恨みを買われない為に、誰を助けるかは選ばせないとな
:全員助けてやりたいんだが……俺らじゃその階層に向かう実力も無いから…
:こっから担ぎ出すのも現実的じゃないからなあ……エベレスト登山中に死んだ人を担いで降りられるかっていうとってくらいの話だから
「言っちゃ悪いけど、奥にいる二人が生き返る確率は……少ないと思うわ」
「……うん、だよね……お願い、この二人を」
:まあ、賢明な判断だな
:送っても生き返らないのを送る訳にもいかないからなあ
:……納品用アイテムポーチ使って死体送っちゃ駄目なの?
:人間の死体を送るのはペナルティを受けるんだよな、どういう理由であれ
:結構馬鹿にならない額持っていかれるからな…それこそ二人も送ったら首が回らなくなるくらい
「……貴女、納品用のアイテムポーチはある? それで奥の二人を送る事できるけど」
「……残念、だけど」
:うわあ、ズタボロだな…
:カミキリムシに噛み切られたか、ずったずただ
:あれじゃもう機能しないぜ
:道理で配信途切れた訳だ
「……送る前に、報酬、渡しておかなきゃね……ごめん、ご飯届けてくれるだけ、って依頼だったのに」
「待っている間に状況が変わるなんて当然の事だよ。気にしないで」
「……やっぱり、Aは優しいね。……あたしの血付いてるけど。受け取って」
「ありがとう。本当助かるよ」
:Bランク相当のロングソード……中々の業物だなこれ
:一応市販品ではあるんだが、購入するのに会員にならないといけない奴だからな……Bランクからは
:百花リトルフラワーって最近勢いを増してきていたパーティーだからな、会員にもなれるってもんだ
:最後のアーカイブのパーティーメンバー見てみたけど、物理アタッカー兼タンク2に魔法アタッカー2,僧侶1とめっちゃバランスのいいパーティーなのに……
:それがこうして簡単に全滅するから恐ろしいところだぜ……
「アイテムポーチは……あたしのお古でごめん、だけど」
:待って外套脱いで渡すの!?
:確かにカナちゃんが装備してる外套はBランク相当だろうけど!!
:Aも迷いなく着るんだな…
:Aがそんなの気にするかよ
:ウルタールさん凄いなにか言いたげな顔してる
「……先にあの二人転送させておくわね」
「うん、よろしくねウルタール」
「……ねえ、A」
「ん、なに?」
「……あたしを殺して、ギルドに鬼還させるのよね?」
「そうだよ。そうしないと助けられないから」
:おっ、なんだなんだ?
:助ける為に殺すって改めて考えても意味わからんな
:生き返らせた人間は生き返らせる前の人間と本当に同じ存在なのか……
:裏でせっせと鬼還の腕輪つけてる……
:ウルタールさん……お疲れ様です
:チチェロちゃん動かねぇな
:あれ警戒してんだよ外を。魔物が襲ってきてもチチェロちゃん一人いれば全部蹴散らせるから
「……死ぬのさ、やっぱ怖い」
「だろうねぇ、僕も怖いもん」
「……嘘」
「嘘じゃないって」
:死ぬの怖いのにあのムーブしてるのA……?
:イカれてらぁ
:まあ、怖いからこそ楽しいとか言ってたからなあ過去配信で
「……キスしながら殺してよ」
:ウルタールさん凄い勢いで二人を見ないで
:目が怖い!怖いよウルタールさん!!
:首ぐぅん動いたなホラー映画かよ
:そういや完全に関係持ってるの臭わせてるからな……その割にはウブだけど
「……気にしてないけど? 本気じゃないキスなんかしてるとこ見たって、私気にしないタイプだけど?」
「早口なってる」
「チチェロうるさい」
:完全ムキになってんじゃん
:嫉妬しつつも邪魔はしないのはイイ女
:とりあえず二人は送れたか……さて
「……なんて、ごめん忘れて。今こんな顔だもん、キスなんてしたく──」
:やったぁーーーー!!!!
:がっつりキスした!!
:カナちゃん…嘘だろ……
:いやあの状態の女にキスできるのは尊敬できるわ。恋仲って訳でもないのに
:度々配信でAに恋してる疑惑臭わせてたからなカナちゃん
:キスしながらナイフで心臓を……
:ロマンチックな死に方ではあるよね
:推しにキスされながら死ぬのか……理想的な最後ではある
:最後(最後って訳でもない)
:生き返るけどね
:あっ転送された
「……まあいいわ。このくらいは」
「さて、んじゃこの二人だけど」
:えっ待ってAマジで?お前マジで!?
:なんで納品用アイテムポーチ取り出したのお前
:マジかよペナルティ怖くないんか!!
「この数だと、今までの稼ぎ全部パーになっちゃうわよ?」
「この装備二つでお釣りがくるんだし、このくらいはね」
:いったぁー!!
:残された二人の死体をアイテムポーチに!!
:もはやここまで潜るのは趣味でって言われてるとはいえ、言われてるとはいえ……!!
:こりゃAがモテるのも納得できるわ
:数億の稼ぎが無くなるのを笑って流せるのは……男気ありすぎる!!




