第34話:配信アーカイブ#451
「ここらはテッポウムシしか出てこない感じだねぇ」
「中間地点から少しバリエーションが増えるわよ。ほら、ああいうの」
「……酷い臭い」
:うわあ黄ばんだ液体にまみれた猿が出てきた
:単純に汚い
:飴猿ですね。ダンジョンテッポウムシやカミキリムシの体液を常に浴びているので、虫たちの体液が体毛にこびりついて凝固し飴のように固まっている様子からそう名付けられました。……が、これは相当な期間洗っていない様子ですね。腐っています
:お風呂キャンセル飴猿
「ああいう不潔なのは群れから追い出されるから、孤立しちゃってるのよね」
「飴猿界隈でもそういうのあるんだ……」
「自然界では不潔にしているとすぐに病気になる、病気になるリスクのある仲間を置いておくわけにはいかない」
「人間界よりシビアだねぇ」
:臭い臭い言われて舌打ちされたりするけど追い出されることはあんま無いからな人間界は
:なんなら風呂入らないこと正当化してくるからな…キャンセル界隈の連中
:なんなら海外ニキと働いてたら結構臭い……なんてこともまあ
「……とりあえず、ウルタール。撃っとく?」
「そうね。吹き荒れるは竜巻、トルネード」
:飴猿くん雑に吹き飛ばされた!
:こんな雑に魔物殺す事ある!?
:不意打ちだと対応できねぇからな、簡単に木から引きはがせる
:落ちてったねぇ、下に…
:飴猿の体毛は丈夫で価値があるのですが、追い出された個体のものは臭いがきついので……その、下手に納品したらクリーニング代請求されるから損するのよね……
「よし、と……あっ、そうそう。あのひときわ大きな木が丁度中程よ。あの木を超えた先からは飴猿やハニースネークがうようよ出てくるわ」
「ハニースネーク……蜂蜜を塗って焼いたベーコンみたいで美味しいんだよねぇ確か」
「……まあ、ヘビは食料か」
:チチェロちゃん蛇は食べ物じゃないよ
:もう少しで救助できるか、Aのリスナーを
:コメント途絶えて久しいけど生きてるんかな
:まあ死んでてもある程度残ってたら鬼還の腕輪でギルドに戻して生き返らせること出来るから
:……テッポウムシに食われてねぇといいんだが
:というかリスナー死にかけてるのに暢気すぎないかね君達
「焦ってミスする方が助けられないからねぇ……いつも通り行って、いつも通り目的を達成する方が助けられる確率は上がるんだよ」
「下手にいつもと変えるとミスが増えてしまうものね」
「……いや、少しは焦った方がいいんじゃ」
「いつも通りが大事なんだよーチチェロー。死ぬ瞬間でも平常心、これが死に慣れるコツって奴さ」
:なるほどなあ
:Aが生き返った直後にすぐダンジョンアタックできる理由の片鱗が見えた気がする
:言うは易く行うは……なんだよなあ
:とかなんとか言ってる間についたな、でっかい木の影に
「着いたねぇ……で、右手側の方の木に飛び移っていけばいいんだっけ?」
「ええ。黄色い葉っぱの大樹の影に隠れている、って言ってたわね」
「なるほど。チチェロ、ちょっと登って見てきてもらっていい?」
「了解」
:尻尾使ってワイヤーみたいに登るのかっこいいよね
:立体軌道の動きできるのいいなあ、戦いやすそう
:うわすっげぇ数十秒でてっぺんまでついた
:上見て降りてくるまでにかかった時間、30秒
:早すぎんだよなあ
「あっちの方に黄色く紅葉した木が見えた。Aのリスナーがいる場所はあそこだと思う……黄色く紅葉、で使い方合ってる?」
「合ってるよー。オッケーありがとう」
「確か、ちょっと距離があるのよね。生きているかしら」
:黄色く紅葉、確かによく考えたら変な言い回しだよな
:黄色いのか紅いのかよぉ~~~~~……どっちかハッキリやがれ!!ふざけやがってよぉ~~~~ダボがっ!!!!
:原型給ってくれてるといいんだが
:死体から報酬として剣分捕ったら駄目なんだっけか
:コメント欄とはいえ事前に契約交わされてるから積み荷は問われないが、そこだけ切り抜きしてアンチが炎上させる可能性は全然あるからなあ
:Aもアンチがいないって訳じゃないからね
「そうなんだよねぇー、炎上しても別に殺されはしないからいいんだけど、コメント欄管理が面倒で面倒で」
「アンチってなんだ?」
「簡単に言うと、その人やグループ、パーティーの事を嫌っている人の事よ。Aもなんだかんだ活動歴長いし、それなりの規模のチャンネル登録者持ってるし、しょっちゅう配信してるから……どうしても嫌う人が出てきてしまうのよね」
「……嫌いなら見なければいいのでは?」
:スキル至上主義の同業者とか、格安で仕事受けるのに不満を抱く冒険者とか、いつまでも枠取ってんじゃねえ邪魔なんだよってのとかいるからなあ
:確かに実際Aのライブ配信は常にトップページにあることが多いが……
:よく目に付くからって理由だけで殺したいくらい嫌いになるって人いるからねーネットは
「……とりあえず生きててほしいねぇ。死んでたらアイテムポーチから取れないし」
「理由が酷い」
「良くも悪くも合理的なのよ、Aは。行動が善行ってだけで」
:道徳じゃなくて損得で犯罪を犯さないタイプだからなAは
:基本的に法律は守った方がお得。でもメリットが上回ったら破るって公言してるもんなAは……
:まあ善意や道徳心で法律守らせるより犯罪を犯しにくいってのには結構な説得力があったが……
「実際僕は前科無いからねー」
「言い方」
「やってた人の言い方よねぇ」
:絶対表に出てない犯罪やってたわこいつ
:まあ冒険者って割と前科持ち多いっつうか
:荒事だからな冒険者って、そりゃ集まる人間も…
「……まあいいじゃん。とりあえず行くよー」
「はあ……まあ、人助けそのものは嫌いって感じじゃないからいいんだけどもね」
「……良いんだろうか」
:細かいことは良いんだよチチェロちゃん
:最終的に助かるからよかろうなのだー!!
:ただ見てるだけの心からの善人より助けに行く偽善者のがありがたいからな
:この徹底した合理主義の中にダンジョン探索という浪漫に燃えてるギャップがいいんだよなあ




