第32話:配信アーカイブ#449
「ここが十一層目……どうなってんだいこれは」
「私たちの世界にはまず存在しない光景だもの、そうなるわよね」
:出たところが木の上でなんでだ?って思って下見たら見えないんだもんな
:雲が下に見えるくらいの高さにまで成長した樹木を渡っていくとか、パルクールじゃねえんだぞ!!
:不安定な足場に加えて魔物も普通に襲ってくるからなここ……もちろん落ちたら死ゾ
「こうも木々が密集しているとエリアボスまで真っすぐ行く道すらもわからないねぇ……」
「上がっていけばわかるようになってるわよ」
「なるほど……チチェロ、僕の事上まで上げられる? 射出するやり方で」
「枝葉にぶつかって死ぬと思う」
:上から見たら先っぽが赤くなってる木だけを渡っていけばいいってすぐ分かるんだがなあ
:真面目に登っていくしかねぇな枝を乗り継いで
:幸いな事に進む方向に関しちゃ出口から真っすぐだから、それでなんとか
「ふむふむ……オッケー、んじゃ進んでいこうか。ウルタール、飛べる?」
「このくらいは乗り継げないと冒険者やっていけないわよ」
「落ちたら捕まえる」
:チチェロちゃんの尻尾があるって安心感
:何度か捕まえるのと同時に尻尾から刃出して切り刻んじゃったりもしてたけどな
:冷静に考えたら蛇腹剣で捕まえられてるのと変わらないんだよなチチェロちゃんの尻尾って
:死んでも気にしないAと頑張って死ぬのに慣れたウルタールさんだからセーフ
:軽やかに飛んでいくなあ
:Aはともかくウルタールさんも結構動けるな、流石元魔女の一撃所属
:ここの階層はみんな忍者みたいになるから見てて楽しいんだよな
「これ炎系統の魔法使ったら第三次になりそうだよね」
「流石にこんなところでは使わないわよ……まあ生木だし、そもそもが燃えにくい材質だから仮に使っちゃっても問題はないわ」
:異様に燃えにくいんだよな十一層の木材って
:建築材として見たら硬すぎて加工が難しいって職人泣かせなところあるけど、十一層木で作られた建物はマジで燃えない
:オーストラリアかどっかの火災が激しい国で、家は全焼したのにここの木材使った犬小屋は無事だったって話もあるくらいだからな
:加工の難しささえなんとかなればなあ
「とにかく加工が難しいんだ?」
「丈夫で燃えにくいってのから鎧にしたりするのが主流な使い方ね……あとシェルターとか。とにかく職人が嫌がるのよこの木材使うのは」
「ダンジョン産の素材は基本元の世界のものより丈夫になるようになっている」
:趣味でDIYやってるけど十一層木は釘入らなさ過ぎて投げた
:ダンジョン産の素材か武器でダンジョン内で加工すれば多少はやりやすくなるんだが危険性がね…
:釘ももちろん通らないからほぞつぎや入れ子つぎできるよう加工された十一層木材を買わなきゃね……理想の加工をするのは諦めるか冒険者なるかしかないし
「大変だねぇ……ん? 来るね」
「えっ、来るって何が──きゃああああ!!!!」
:虫出て来た!?
:木を食い破るとかどんな顎してんだこいつ
:テッポウムシ……カミキリムシの幼虫ですね。十一層木を食べられるほどの頑丈な顎の持ち主なので要注意です
「……一般的に、テッポウムシって美味しいって言われてるよね。ウルタール、魔力は?」
「充填いらない! 仮に枯渇していてもそれは食べないわよ!?」
「……美味しいのに」
:昆虫食をナチュラルに進めるな
:必要に迫られたから食べたことあるけど実際にウメェんだよなカミキリムシの幼虫……
:まあ、昆虫界のトロとか言われるくらいだからな
:遭難してるニキかニネキこれ食べればいいのに
:要求が酷くないか?
:狩れる程の体力残ってないんだろ
「……まあ、今はちょっとお腹いっぱいだし食べる気にはなれないかな」
「スカイドラゴンでお腹いっぱい」
「……納品もしないわよ」
:駄目か―
:そりゃそうじゃ
:食べたばっかだもんな言うて
:無理やり暴食するのも探索に悪影響を及ぼすからな
:まず虫を当然のように食料としてカウントすな
:って口、牙回転してない?
:体を屈伸させてる?
:弾丸みたいに飛んできたぞ!!
「おおー、流石テッポウムシ」
「そういう意味じゃないと思う」
:テッポウムシの軌道にナイフ置いてたの流石
:真っ二つになって落ちてった。。。。。。
:ちょっと勿体ない気もする。栄養価高いし美味しいし
:あっちから突っ込んでくれたら労力最小限に倒せるから便利よね
:……いやーちょっと不味いぞこれ
「えっ不味いって何が?」
「甘ったるい、珈琲に付いてくる甘い汁みたいな臭い」
「……この臭い、不味いわね」
「もしかして……やっちゃった?」
:あー!テッポウムシの臭い嗅いだことあると思ったらガムシロップのか!!
:確かに似てる…ってか不味いってなに?
:実際ダンジョン産のテッポウムシはかなり甘いからな、できるだけ成虫と一緒に食べたい。あっちは燻製にしたナッツみたいな味だから
「なんかガサガサ聞こえる……というか近付いてきてる?」
「……こいつら、巣を作る訳でもないのに無駄に仲間意識が強いのよね」
「デザートが迫ってくる」
:ダンジョンテッポウムシは同族であれば数百メートル先からでも嗅ぎ取れるくらい体液が濃い臭いになっています。殺した対象にテッポウムシの体液が付着すると大量の成体カミキリムシの群れが襲ってくるようになります
:あたしたちもこれにやられたのよね
:うわああ!!カミキリムシの群れがねり歩いてるッ!!
:実際しつこいですからねこいつら
:でっか…人間サイズじゃん
:いやそれよりこれが群れってのがヤバい
:十匹はいるぞ
「ウルタール! 物理と魔法どっち!?」
「魔法が通じやすいわ!! でもA、あなた使えるの純魔の大剣だけよね……あまり無理しないで!!」
「秘策はあるから大丈夫だよー」
「……秘策?」
「来る」
:秘策ってなんじゃらほい
:顎ガッチガチ鳴らしてる…
:体縮めて……足も使って
:テッポウムシより早いぞ!!
「その動きは見えてるよ!!」
:Aに一度見せた技はあんまり通用しない
:余裕の回避!!
:いやでも次々と突撃してくるぞ!!
:回転して突撃してくるの殺意高~い
「腕に宿るは騎士の魂、我が振るうは騎士の誇り! 純魔の大剣!!」
「吹き荒れるは竜巻! トルネード!!」
:真っ二つ!!
:ウルタールさんの魔法は効果少な目?
:足二本奪えるくらいか・・・いや十分だな
:おおー斬っていく斬っていく
:展開可能時間は十秒程度だが、Aにとっちゃそんだけありゃ十分だよな
:斬って斬って斬っていくぅ!爽快!!
:三匹くらい切り捨てたな
:いやでもお代わり来たぞ!?
:お代わり七匹入りましたー
「これは……あと十五匹は来そうね」
「あははっ、上の階層のよりやる気あるじゃん!!」
「楽しんでいる場合じゃないわよA! 全く……吹き荒れるは竜巻、川流れる葉を鋭く穿て! トルネード!!」
「我が振るうは騎士の誇り! 純魔の大剣!!」
:貫いたぁ!!
:結構装甲硬いんだけどなダンジョンカミキリムシって
:というか素材納品諦めてる倒し方だなー
:チチェロちゃんがチマチマ回収してるから問題ないが……取りこぼしが多い
「A、そろそろあんたの魔力切れるわ……えっ……?」
「切れるんなら……補充するだけ!!」
:あれっ、Aなんで切れた断面掴んで
:食べたぁ!?
:食べやがったぁ!?
:生やぞ!?
「秘策ってそれなの!?」
「消費した分は魔物を食べて回復、理にかなってるが……お腹痛くならないか?」
「そういう問題じゃないわよチチェロ!!」
:まあ、猿食べるのに比べたらまだ理解の範疇だから……
:いやにしてもじゃない?
:確かに魔物食は魔力強化や魔力回復に効果的ではある。あるんだが……
:合理的だけどさあ、、、、、、
「魔法で殺して! 殺した分は食べる!! 永久機関が完成しちゃったねぇ!!」
「完成しちゃったねぇじゃないわよ……あっ、吹き荒れるは竜巻、川流れる葉を鋭く穿て! トルネード!!」
「……良い考えではあると思うんだが」
:確かに良い考えだけどね
:チチェロちゃん、合理と生理的なものを放して考えるのは普通じゃないのよ
:でもこのイカれた攻略方法見たいが為にAの配信見てるところはあるからなあ




