第28話:配信アーカイブ#384
「おおー……ワイバーンタイプのドラゴンだ」
「スカイドラゴン、この階層のエリアボスよ」
「あれの肉美味しい」
「マジで? 倒したらみんなで食べよっか」
:本当サクサク進むよねAの配信
:もうエリアボスかあ
:スカイドラゴン。常に相手の上を取るように動くのが特徴ですね。青い鱗と白い皮膚からなる保護色で空に溶け込み、主に空中から遠距離攻撃してきます。魔物素材研究所¥50,000
:これ遠距離攻撃持ち相手いないと無理だな戦うことすら…高すぎる
:厄介な事に魔法防御が高いのよねこいつ
「んじゃ適当に……っと、けいかーい」
「早速撃ってきたわね!!」
:これ!氷の弾丸!!
:透明度の高い氷を生成して打ち出すから見えないんだよなあ目視だと
:ただでさえ太陽を背に動きやがって見えにくいったらありゃしねぇのがホンマこいつ
:透明度が高いってことはそれだけ密度が高いってことだからな…本当厄介、相手したくねぇ
「十層からは攻撃速度ではなく位置を重視する感じかな?」
「トルネード! トルネード!! トルネード!! ああもういつ暴発するか怖いわね本当!!」
:ああああ怖い怖い怖い!!
:仕方ないとはいえ無詠唱連発とか心臓に悪すぎる
:飛来物避けるには強い風の魔法を使うのが有効……とはいえさあ
:それに比べてAは普通に避けてるな
:なんで目視して避けられてんだあれをほぼ見えない攻撃だぞ
:鷹の目の視点を変えてるんじゃねえかな、太陽の光を見ないように澄む正面側に
:スカイドラゴン相手だと有用なのか鷹の目って
:見にくさは変わらないんだよなあ
:そんな上手く行くわけないわよ、Aがおかしいだけ
「おっ攻撃止んだかなー……大体五分くらいか」
「トルネード!! どうするA、今の私じゃゴリ押しはできないし……チチェロは」
「そもそもあの距離まで尻尾は届かない」
「……どうするA!?」
:元から攻撃に加勢するつもりはなかったから影響ないとはいえ
:そっか届かないかー……そりゃそうだよな
:目算20m先の相手までなら殺せる感じだが、スカイドラゴンは基本30mの高さを維持してくるからな……
:最悪の最悪の場合も使えなくなるとは
「ゲームなら攻撃チャンスのある攻撃してくれるんだけどねー……あーあーまた来たよー。チチェロ、ウルタールを守ってくれる? ウルタールは魔力温存で」
「了解」
「何か手があるの!?」
「無いから考えるんだよ」
:久しぶりに見たなAの考察タイム
:攻撃避けながら魔物への突破口を見つける、ってゲームだと普通にやれるもんなんだけどリアルだと中々ね
:死んでも怖くないゲームと死んだらPTSD残りまくる現実とじゃ全然話違ってくるからな
:なのでゴリ押しが流行る……だって突破口開こうと考えても机上の空論でしか出てこないもん
:やっぱAの並列思考スキルいいなあ、羨ましい。これあるのとないのとじゃ全然違うもん
:並列思考スキル(自前)
:一応ダンジョン産のスキルでもあるにはあるけどあれ意識乖離症状酷くて日常生活に支障が出るんだよな
:やっぱここが一番おかしいんだよなA……
「……トルネード、氷の塊、太陽光……は一端無視して考えて……」
「なんであの雨の中、避けながら考え込むことできるのかしら……?」
「並列思考スキル持ち?」
「チャット欄曰く無いらしいわ」
:所持スキルの情報共有くらいやっとかんかい!!
:なんで不確定な感じなんだよお前等が
:まあ持っているスキルは把握しても持ってないスキルまで意識するのは早々無いといえば無い
:無いものは伝えないよな普通
:あたしぶっちゃけ信じてないけどねAの自己申告スキル
:ぶっちゃけスキル使って回避しまくってまーすの方が全然納得できるからな……いや鷹の目使ってんだけどさ
:スキル使ってないからリキャスト時間無く回避できてんだよなあ
「五分、こっから再装填まで一分……よしOK! 思いついた!!」
「この時間に降りてきてもいいのに……ってA、何を思いついたのよ?」
「ちょっと飛ばそうと思ってね……その前に、チチェロ。君が攻撃に参加しないというのは、あくまで直接的な攻撃という認識で間違いないかい?」
「うん、その認識で問題ない。それ以外の事なら協力する」
「オッケー。なら作戦を簡単に説明するよ」
:おっなんだなんだ?
:やっぱチチェロちゃんの出した修行の条件かなり優しいよな
:あくまで直接攻撃はしない……まあチチェロちゃんが参加したら楽勝な相手ばっかになっちまうもんねえ
:まあスカイドラゴン相手にはそもそも攻撃届かないんだが
:でもなんか突破口閃いたっぽいぞ
「作戦はこう。スカイドラゴンの攻撃が止んだ瞬間に、まず僕がチチェロの尻尾に乗って、勢いよく投げられる。んでウルタールはトルネードで僕の体を押して加速させる。多分これであの高さまで届くはずだよ」
「……はい?」
「何を言ってるんだこいつは」
:チチェロちゃんここまで呆れさせるのは流石だぁ
:人間カタパルト……ってこと!?
:ゴリ押しを超えたゴリ押しじゃねえか!!
:チチェロの尻尾で投げ飛ばされて無事で済むんですかね
:あの勢いだと空気摩擦で死にそう
:というか凄まじいGかなんかがかかって気を失うわ
:つうかトルネードで加速ってできるんかそんなん
:ウルタールさんがすごい信じられないって感じの顔してる…
:大丈夫よね?これ軽装備剣士の標準の倒し方になったりしないわよね!?
:一応理論上はトルネードの揚力を得て物体を加速させることは可能。人間にそれ使っても無事で済むかは……うぅん、マッハの速度出せる戦闘機に乗れるし訓練すれば大丈夫かも
:それってつまり訓練しなかったら大丈夫じゃないってことじゃねえか!!
「ちょっ、A……!? 流石にその作戦は無茶じゃないかしら!?」
「無茶でもあれ殺すのはやるしかないよー? 実際、こうでもしなきゃ届かないんだし」
「そんなの流石に──」
「攻撃、来る」
:ああ了承もしていないのに再開しやがった攻撃!!
:冒険者たちが専用チャットで作戦立てる理由分かった気がする
:すぐ防御態勢に移るの流石
:エリアボス相手だと回避限定だけど安心して見られるんだよなー
:しかし時間管理完璧だな。マジでドンピシャで来たぞ
:避けて避けて、もうAは楽々って感じだな
:動きに迷いが無いし覚えてきたからって感じの楽しんでる表情になってる
:一々終わる度に駆け寄って作戦会議するのシュールだな
「……わかった。やる」
「……チチェロ、本気でやるの!?」
「Aからしたら死んでも失敗しただけ、どうせすぐ生き返って再チャレンジする。ここまで来るのはちょっと面倒だけど、何度も試せるんだし問題はない」
:あー……そっか。Aって生き返るのに全く抵抗無いから命を消費した試行錯誤できんだ
:こまめに納品してっから蘇生費用の方も問題ないしな
:そう考えたら確かにチャレンジしてみる価値はある、か?
:ある程度角度とか修正しないといけないから何回も繰り返さないといけないよな
:常人では無理だわ
「……ああもうわかったわよ! やればいいんでしょ!!」
「うん。その意気だ。んじゃ、やるよ!!」
:チチェロちゃんの尻尾に乗った!!
:果たしてうまくいくか?
:これ上手く行ったら新たな攻略方法見つけたってことになるが
:飛ばしたぁ!!
:うわすっげぇ加速
:スカイドラゴン、迎撃しようとしてるな
:でも魔力チャージはまだ!!
「死んだって恨まないでよA!! 吹き荒れるは竜巻……トルネード!!」
:上手く竜巻の中心に!!
:あそこはノーダメージゾーンだからな、追い風の恩恵だけを受けられる
:さらに加速していく!!
:届くぞ!これは届くぞ!!
:届いたぁー!!!!
:でもこれ結構距離
「あっ」
:あっ
:あーあ
:……スカイドラゴンさんの横、飛んでいっちゃいましたね
:スカイドラゴンさんもぽかーんとしとる
:そりゃそうなるわな




