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『人気アイドル雀士』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『人気アイドル雀士 ―交錯する夢と牌の道―』
3/35

第1話「理恵、ステージに立つ。そして――」




その日、会場の空気は、少しだけいつもと違っていた。


GRT48春のスペシャルイベント――

渋谷の大型ホールには、ファンたちの熱気が渦巻き、照明の下で次々とパフォーマンスが繰り広げられていく。

そのステージに立っていたのは、チームA所属の安川理恵やすかわ・りえ、19歳。

笑顔を絶やさず、ダンスの動きはしなやかで軽やか。センターではないが、ひときわ目を引く存在感を放っていた。


だが――その姿を、最も静かに、そして誇らしげに見つめていた人物がいた。


ステージ裏、マネージャー専用席。

そこに立つのは姉の安川知恵。

GRT48の元3期生にして、現在はプロ雀士。理恵のマネージャーを務めて2年になる。


「……あの子、成長したなぁ」


ポツリと呟いた声に、イベント責任者の男性が振り返った。


「安川さん――いや、知恵さん。ステージ、懐かしいですか?」


「まあ、そりゃあね。…でも、今は妹のほうが主役だから」


そう言いながらも、知恵の視線はどこか遠くを見つめていた。

ステージの上の理恵は、かつての自分を思い出させる。

誰かに憧れられ、誰かのために歌い、そして夢を信じる――そんな時間。


イベント後半、サプライズ企画として、ファン参加型の麻雀ステージが始まった。

卓上にはGRTメンバーの選抜4人が並び、実況と解説を交えてゲームが進行する。

しかし突然、スタッフが慌てたように舞台袖へと走る。


「理恵ちゃんが……指をケガしたって!」


「えっ……」


騒然とする関係者の中で、真っ先に立ち上がったのは知恵だった。


「私が代わる。元アイドルで、プロ雀士って紹介すれば、流れは止められない」


数分後、照明が再び落ち、アナウンスが流れる。


「急遽、スペシャルゲストとして登場していただきます――

 元GRT48のメンバーであり、現在はプロ雀士としても活躍中。

 **“人気アイドル雀士”こと、安川知恵さんです!」」


――歓声とどよめき。

そして、懐かしいような、でも新しいような拍手。


「皆さん、お久しぶりです。今日は、妹の代理という形ですが……一局、真剣勝負させていただきます」


マイクを通して届けられる、澄んだ声。

スポットライトの中、再び卓に向かう彼女の姿は――

かつての“アイドル”でも、“ただのマネージャー”でもなかった。


それは、これから始まる新たな物語の第一歩だった。


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