表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『人気アイドル雀士』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『人気アイドル雀士2 ―ふたりで追いかける夢の続きを―』
20/35

第7話「二つの決戦、交差する運命」



――3月中旬、朝。


安川姉妹は、それぞれの荷物を持って、玄関で立ち止まった。


「京都、行ってくるね。……今回は“マネージャーの姉”は置いてくから」


「私も、決勝行ってくる。……“妹の応援”は、ちょっと遠くでしてて」


目を合わせ、拳を軽く合わせて笑うふたり。

それはいつかの握手会よりも、ずっと強い「約束」だった。


■Scene1:知恵、タイトル戦決勝の舞台へ


全国タイトル戦・決勝会場。

対局は四人打ち、全16局・完全実況付きで全国配信される。


対戦者には、かつて「知恵が憧れた」伝説の女流雀士・藤原麗子の名も。


実況スレッドは開幕前から爆発していた。


「元アイドルVS伝説雀士!?」

「今日で決まる、今年の顔」

「安川知恵、マジでここまで来たか…」


知恵は席に着くと、ゆっくり牌に手を添えた。


(もう誰の影でもない。私は、私として打つ)


■Scene2:理恵、京都の静かな風景


その頃――京都・嵐山。


理恵は白無垢風の衣装を着て、古民家で撮影に臨んでいた。

今回は“和と凛”をテーマにした、初のソロ写真集。


「理恵さん、もう少し肩を落として。目線は…そう、遠くを」


カメラマンの声に、彼女はしっかり応えた。

かつての“人の後ろに立っていた自分”は、もういない。


「今日、知恵ちゃん決勝だね」

「理恵ちゃんも、顔つき変わってきた」

「この姉妹、ほんとに強い」


SNSには、撮影中に公開されたメイキング映像の告知が出回り始め、瞬く間にトレンド入り。


■Scene3:決勝、知恵の読みの極地


南二局。

知恵は、二位をキープしつつも配牌に苦しんでいた。


(無理に攻めれば、相手に流れが渡る。でも……)


ここで彼女は“見”を選ぶ――敢えて勝負を避け、他家に自滅を促す戦略。

結果、場を流し、ラス目の選手が親を飛ばされる。


この瞬間、実況席がざわめく。


「これ……知恵ちゃん、流れを“止めた”んですよ。

勝負を“動かさない”ことで勝つ。……これが、彼女の強さです」


■Scene4:理恵の“強さ”の表現


午後の撮影、舞台は祇園の町並みへ。

淡い桜色の振袖に着替えた理恵が、ゆっくりと路地を歩く。


通りすがりの観光客が彼女に気づき、振り返る。


「……あの子、GRTの……」


理恵は微笑むだけで、真っ直ぐカメラに目線を向けた。


(お姉ちゃんが“目の前の勝負”に向き合ってるなら、

私は“未来の夢”を切り開く表情を見せなきゃ)


■Scene5:勝利、そして同時の到着


対局終了。

結果――安川知恵、全国タイトル初優勝。


拍手が鳴り止まない配信スタジオの中、知恵は深く息を吐き、天井を見上げた。


「……やっと、ここまで来た」


その頃――京都駅。

理恵の写真集撮影が終わり、帰京のため新幹線に乗る。


車内のモニターに偶然、速報が映る。


《安川知恵、全国タイトル優勝。プロ雀士5年目の快挙》


理恵の目に涙が浮かぶ。


「……お姉ちゃん、おめでとう」


■ラストシーン:帰宅、ふたりの勝者


夜、玄関。


先に帰宅していた知恵が、ソファでうたた寝している。

理恵は、そっと写真集の見本をリビングに置く。


知恵のスマホが鳴る。

目を覚ました彼女が見ると、妹からのメッセージ。


「私も、“光”になれたと思う。

次は、ふたりで“同じ舞台”に立ちたいね」


知恵は笑って、返信を打った。


「次の勝負は、どこにする? 卓上? ステージ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ